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Lost memory01

GEASS LOG TOP Lost memory01
約8,907字 / 約16分

「……どうしたものかな?」
 神聖ブリタニア帝国第二皇子であり宰相でもあるシュナイゼル・エル・ブリタニアはアヴァロン内の自室でひとり静かに眉を顰めた。
 視線の先のモニター上にはユーロ・ブリタニアから送られてくる報告書が映し出されていた。それを目で追いかけていくと、気になる記述を見つける。
「枢木卿が負傷……?」
 そこには一足先にユーロ・ブリタニアに派遣されたナイトオブセブン枢木スザクがユーロピア連合との戦いにおいて負傷したことと、彼と共にユーロ・ブリタニアに渡ったとされるジュリアス・キングスレイという軍師が死亡したということが記されていた。
「ジュリアス・キングスレイ……ね」
 ジュリアス・キングスレイ――彼について公式に記録されていることは少ない。末端貴族の家の出だが軍師としての知略を認められ、今回の抜擢に至ったとされる。
 しかし、自分は彼には会ったことはないし、その存在を知ったのもつい最近のことだ。そして彼については不審に思われる点がややあると感じていた。
 まずは無名の軍師であるジュリアス・キングスレイに皇帝がインペリアルセプターを預けたということが引っかかる。インペリアルセプターを持つということはそれこそ皇帝の名代として皇帝と同等の権限を持つことを指す。
 そもそもそれを持ち出した例はそう多くない。元々は緊急時に使用されることを想定した物である。例えば皇帝や皇族たちがが何らかの事情で動けない際に第三者にその権限を一時的に委託したことを証明することが主に想定された使用方法だろう。
 それが皇帝も皇族たちも動くことが可能であるこの状態で持ち出されたということは何かしらの裏があるということははっきりとしている。
 そして何故、軍師ひとりにナイトオブセブンを共にさせたのか。そして、どうしてその二人を皇族専用列車に乗せたのか。疑問は多い。
 皇族専用列車とは文字通り皇族が公務での移動や外遊する際に使用する移動手段でありそれ以上でもそれ以下でもない。そういった意味で今回の使用の状態は異例だった。それでも父である皇帝によって間違いなく許可が下りていた。鍵を握るのはジュリアスと同行しているナイトオブセブンだろう。
 そのナイトオブセブン――枢木スザクは最近叛逆者《ゼロ》を捕らえたことによりナイトオブラウンズに入ったばかりである。名誉ブリタニア人がナイトオブラウンズに入るのは異例のことだ。もちろん彼の能力は卓越しており、他のナイトオブラウンズに引けをとらないことも認められる。それでも、ブリタニアにおいてブリタニア人と名誉ブリタニア人の差は絶対的なものである。
 そんな彼がジュリアスの供としてユーロ・ブリタニアへと派遣されることとなったことも何か意味があることなのかもしれない。
 ジュリアス・キングスレイとは一体何者か。考えられる可能性は数通りある。しかし、それを断定出来るほどの情報は揃っていなかった。
 皇帝からは特に詳しい説明が為されたわけではない。そして、ユーロ・ブリタニアから状況の報告も為されない。
 ユーロ・ブリタニアから毎月本国へとユーロ・ブリタニアの状況を報告する通信または書状が送られてくるのが通例だが、そのことに関してユーロ・ブリタニアからの報告はなかった。
 近頃の報告内容といえば聖ミカエル騎士団総帥であったミケーレ・マンフレディが自殺し、遺言としてその後任にシン・ヒュウガ・シャイングという人物を抜擢したということくらいだろう。
 総帥の自殺の原因は定かではないが、後任については遺書にしっかりと記されていたのだという。そして大公はそれを受け入れ、シン・ヒュウガ・シャイングなるものを聖ミカエル騎士団に総帥として任命したとされる。
 ミカエル騎士団とはユーロ・ブリタニアの四大騎士団の一つでその総帥たちの実力はナイトオブラウンズに匹敵するとも云われている。
 その騎士団は皇帝ではなくヴェランス大公オーガスタ・ヘンリ・ハイランドに任命を任されている。それは物理的な距離が理由な訳ではなく、ユーロ・ブリタニアにある程度の自治権が任されているということを表している。
 それでも実質的には前任の総帥が後任を定め、大公がそれを信任する形でその任命が為されることが大半だ。皇帝でなく大公に任命権があるのはユーロ・ブリタニアにおいて大公が実質的な支配者であるからだ。
 しかし、その大公という地位を与えるのはブリタニア皇帝であり、皇帝の下に大公という存在があるという図式として成り立っている。
 これは古くからの慣わしであり、ユーロ・ブリタニアが実際に神聖ブリタニア帝国の支配下にあるということを深く認識させる為に必要なことだった。
 しかし、そのある程度自治権が許されたユーロ・ブリタニアへの本国ブリタニアの介入。彼らがそれをよく思うことはないだろう。ブリタニアであって、ブリタニアでない。それが彼らの意識の奥底にあるのは間違いない。
 更に最近のユーロ・ブリタニアの行動はこちらから見ても厄介なものであることに変わりがなかった。
 特にブリタニア本国がエリア11のテロリスト《ゼロ》に目を捕らわれている隙にユーロ・ブリタニアは随分と勝手なことをしたように思えた。
 ユーロピア連合はユーロ・ブリタニアに対して独自のナイトメアフレームを使用し、奇襲作戦を展開していた。その状況に対してユーロ・ブリタニアは少々苦戦を強いられてきたということは本国にも報告が上がってきている。
「果たしてどこまで本当かな……?」
 自分達の不利とな状況を本国に連絡する筈がない。全てユーロ・ブリタニア内で収めてしまおうという意見が大半だったのだろう。しかし、そのことすらこちらにはしっかりと伝わっていた。
 ユーロ・ブリタニアに本国に忠実な人間をおけばユーロ・ブリタニアの思惑など、取るに足らなかった。
だが、ここに来て状況が変わったのだ。
 ユーロ・ブリタニアからの報告が送られてくるのは変わりがないが、シン・ヒュウガ・シャイングからの一方的な報告は本国からの意見を受け入れているとはとても思えなかった。
 それどころかこちらが配置していた本国に忠実な使者からの連絡さえ途絶えた。
 その為このナイトオブセブンと謎の軍師ジュリアス・キングスレイとされる人物が現在どのような状況に置かれているのかもはっきりとしない。ジュリアスが死亡した理由すら明らかにはされていなかった。
 ジュリアスが仮にも本国からの遣わされた軍師であるというのにも関わらず……。
 そしてもちろん彼ら自身からも連絡はない。
 本当にこの報告の通りなのか少々疑問を感じるし、通信をしようにも答えは一辺倒だ。
 そしてそこに今回の辞令、シュナイゼルが対ユーロピア戦線の指揮官を任せられることになった。
 最初からそうすれば良いものを。そう思わずにはいられなかった。
 しかし、これで、EUももう二度と立ち上がることが出来ないくらいに、反抗しようと思うことすら無駄だということを、理解させることが出来るだろう。
「面白くなりそうだね……」
 ユーロピア連合とユーロ・ブリタニア、どちらもを本国に併合するチャンスとなるだろう。
 これで世界の最大勢力はブリタニアとなる――。

* * *

「アシュレイが寝返った?」
 つい今しがた起こった一連の出来事にシン・ヒュウガ・シャイングは眉を顰めた。
 自分の指揮する聖ミカエル騎士団の一員であるアシュレイ・アシュラが敵であるユーロピアの連中と共にレイラ・マルカルを逃したのだ。
「……ふっ……く……はは……。まぁ良い……」
 シンは声を出して嗤う。アシュレイという裏切り者があの異母弟の仲間になったのかと思うと嗤いが自然と零れてしまう。
 元々箱舟――ガリア・グランデで敵を撃つのはドロイドと数体の捨て駒である筈だった。しかし、アシュラ隊の隊長であるアシュレイ・アシュラが自ら敵を討つと言い出したのだ。それも単独で。
 もちろん足止めという意味ではオートで動くドロイドよりはるかに腕が立つアシュレイがいたほうが都合は良かった。この際彼の生死はどうだって良いのだ。どちらにしてもガリア・グランデは爆破され、イレヴンもろとも消し去るのだから。
(まぁ、寝返りも予想の範囲内だな……)
 アシュレイが寝返ったことくらいでこの聖ミカエル騎士団は揺るがない。アシュレイ隊は使えなくなるだろうが、他の駒は幾らでもいるのだ。
 聖ミカエル騎士団の中で特に利用出来る手駒を数えながらシンは考える。
 それにしてもアキトの仲間達は随分と甘いものだ。敵であった筈の者を生かし、そして仲間に引き入れるなど。
 そして彼の仲間であり、E.U.の中核を担う少女――レイラ・マルカルはやはり気に食わない相手である。
 しかし、先ほど彼女と対峙した際のあれは一体何だったというのか。
(ギアスなのか……? いや、しかし……)
 だが、ギアスであるとしたら厄介な問題だ。このユーロ・ブリタニアに自分を含めギアスユーザーが三人は揃っているということになる。
(計画を更に早める必要があるか……?)
――バァン
 そこまで考えたところで、突如鳴り響いた音とともに空を見上げれば、高高度観測気球に繋がれていたガリア・グランデの残骸は粉々に砕け散る。
(命令通りやったようだな)
 聖ミカエル騎士団の三剣豪と呼ばれる者達は確かに剣の腕は立つが、頭で考えることに長けている訳ではない。死んだマンフレディにいつまでも忠誠を誓っている愚かしい連中だ。
 しかし、それでも彼らは何とかこちらの命に従い、ガリア・グランデの残骸を撃ち落とした。あそこには確実にユーロピアの一騎以上の主要戦力が存在していた筈だ。
(アキト……お前の仲間を全員殺してやろう……)
 クスリ、と笑みを零しながらヴェルキンゲトリクスのコクピットハッチを開く。そしてまだ青く光る上空を見上げる。
 バラバラと破片が落ち、ゆっくりと炎を上げながらガリア・グランデは撃墜される。それを暫くの間じっと眺めている。炎を散らしながらゆっくりと落ちていく様子は美しいものだった。
 目線を空中から地上に戻せば、そこには自分の部下であるジャン・ロウが近づいて来るところだった。
「ジャン……」
「ヒュウガ様……先ほど仰ったことは本当ですか?」
 ジャンは声を落として訊ねた。その表情には緊張が浮かんでいる。不安げに揺れる視線にシンは動じることなどなかった。
「本国を落とす、ということか? ああ本当だ。シュナイゼル殿下もこちらに向かっているということだし、あちらは今手薄な状態。ヴァイスボルフ城を奪うのはその為だ」
 シンはニヤリと笑みを零しながら告げる。口に出せばその決意が更に強固なものになるような気がした。
「やはり……アポロンの馬車を使うのですね……」
 彼はやはり頭の回転が早い。自分が何を意図しているのかしっかりと把握し、そのことに関する意見や感想を臆することなく口に出す。側近として使える数少ない人材である。
 大気圏離脱式超長距離輸送機――通称《アポロンの馬車》こそがユーロピアの切り札だった。世界中どこであれ高速で移動することが可能なそれは、敵に降下の寸前までほぼ気が付かれることなく相手の領地に侵入することが可能である。
「そうだ」
 彼の質問へ手短に答えると、ジャンは不安そうな表情を隠し切れず、怯えた瞳をシンから反らせた。
 ゆっくりとコクピットから降りると、ジャンの傍へと近寄る。俯く彼の顔を覗き込むようにしてその瞳を見詰めた。
「怖いか? ジャン」
 その言葉に彼は整った柳眉を僅かに寄せる。そして彼は静かに口を開いた。
「……私には、恐ろしく感じられます」
 声が少し震えているようにも思える。確かにブリタニアという超大国の帝都を落とすのは簡単なことではないだろう。失敗すれば待つのは死のみ。
 それでも、その誘惑に勝てないのは自分が狂っているからだろう。家族を一族をギアスと呼ばれる悪魔の力で惨殺し、平気な顔をして生きているのだから狂っているとしか表現しようがない。
 彼は顔を上げ、シンの腕を掴む。そしてぎゅっと引き寄せた。
「ですが、私はあなたに着いて行きたい……」
 ジャンの声は確かに震えていた。けれどもそれは強く芯の通った決意が感じられるものだった。
「譬え世界を敵にすることになったとしても、私は……」
 シンはジャンの身体をギュッと抱きしめた。
「……ジャン、お前の忠誠には感謝している」
 シンはジャンの頬へと左手を当てる。優しく撫でるようにして指先を滑らせれば、男性とも女性とも付かない柔らかい感触が伝わってくる。
「……ヒュウガ様……」
「確かに私が為そうとしていることは恐ろしく感じられることかもしれない。だが、必要なんだ。……私には……。その為にならどんな犠牲も厭わない……」
 静かに告げれば、ジャンは薄っすらと涙を浮かべた瞳でこちらを真っ直ぐに見詰めてくる。
「私はあなたに……あなたに付いていきます。この命がある限り……」
 迷うことなくはっきりと、彼は告げる。自分は彼を地獄へと道連れにすることになるだろう。それでもこの狂気は止められないのだ。
「では一つ、命を下そう」
 シンはジャンのことを抱き締めながら、耳許で囁きかける。
「これよりヴァイスボルフ城を落とす」
 その言葉にビクリと彼の身体が震えたことには気が付いていた。しかし、シンはそれに構うことなく話を続ける。
「研究員達は使えるから殺すな。他は歯向かうようであれば殺して構わない。レイラ・マルカルも、アキトも例外ではない」
 どうせ何れ死ぬことになる連中だ。それが喩え異母弟であったとしても迷いなどない。そんなものは遠に捨ててしまっている。そう、ずっと昔に。
「私はシュナイゼル殿下をお出迎えする為にカエサル大宮殿に戻る」
 彼の身体をゆっくりと離し、両腕だけを掴むようにしてシンはそう宣言する。
 シュナイゼルがこのタイミングでやって来ることは実に都合が良かった。まさに最高のタイミングだろう。帝国のナンバーツーである彼をこのユーロ・ブリタニアに留めておけば本国は手薄にならざるを得ない筈だ。
 ジャンに視線をじっと向けると、彼は静かに頷く。
「イエス、マイ・ロード」

* * *

 アヴァロンでサンクトペテルブルクへと到着すると、シュナイゼルをユーロ・ブリタニアの人間達が出迎えに現れた。その中で筆頭としてシュナイゼルに挨拶したのは聖ミカエル騎士団総帥シン・ヒュウガ・シャイングである。貴族や大貴族達がシュナイゼルに取り入ろうと挨拶を交わそうとしてくる中で彼はシュナイゼルに対し臣下の礼を取りながらはっきりと挨拶を述べる。
「ようこそ、おいでくださいました。シュナイゼル宰相閣下」
 シン・ヒュウガ・シャイング――彼はブリタニア人ではなく東洋人の容貌をしていた。長く青い長髪は後ろで束ねられており、ミカエル騎士団の白い騎士服を身にまとっている。
 彼のミドルネームの《ヒュウガ》という名は確か今はエリア11となった嘗ての日本人が持つファミリーネームの一つだったと思う。そこから彼が日系のブリタニア人であると推測するのは容易だった。
「顔を上げてくれたまえ、シャイング卿。出迎えの挨拶ご苦労だね」
 労いの言葉をかけると、彼は顔を上げ、謙遜するように言葉を紡ぐ。
「いえ、是非殿下をお出迎えしたいと私が申したのです。他の総帥達は謀反を企てていたとして処刑されましたし、大公閣下もお出になられる状態ではない……。わざわざお越しいただいたというのに随分と見苦しい有様で、申し訳ございません」
 その言葉にシュナイゼルは一瞬目を細めた。背後に控えているカノンも表情を変える。
「総帥達が謀反? それは聞いていなかったね」
 この会話がとんだ茶番であるということは、シンをひと目見た時から気が付いていた。
「ユーロ・ブリタニアは混乱状態にあります。報告が行き届かなかった件に関してはわたくしに責任が」
 彼は白々しくそう告げる。それでもシュナイゼルはまだそのペースに合わせることを止めなかった。
「ではカエサル大宮殿に入ったら責任もって説明をしてもらえるかな?」
「イエス、ユア・ハイネス。どうぞご案内致します」
 アヴァロンが降り立ったのはカエサル大宮殿の敷地内であったから大公の間まで向かうのは大した距離ではないだろう。
 とはいえ、カエサル大宮殿も本国のペンドラゴン皇宮までとはいかなくともそれなりの敷地を誇る。最短ルートで行けばそこそこの時間で到着するのだろうが、何も知らない者が無闇に歩けば辿り着くまでに膨大な時間を要するだろう。
 シュナイゼルは背後から付いて来るカノンを一瞥する。彼は少し不安そうな表情を浮かべていたが、それも仕方のないことだろう。此処はブリタニアであってブリタニアではない。いつ彼らがその鋭い牙を向けてくるか分からないのだから。
 今回この場に一緒にいるのはカノンと数名の護衛官のみ。通例であれば宰相であるシュナイゼルを守る騎士たちを一緒にこの場所へと連れてくるのだが、グラストンナイツは遅れてこちらに到着することになっている。しかしそれはそれで都合が良かった。周囲にいる人数が少ない方が彼らの思惑を掴み易い。
 石畳の道の上をゆっくりと進む。でこぼことしていて歩き辛いが、数百年前の道がそのまま利用されているようだった。高い針葉樹からカラスが飛び立ち、少しの不気味さを感じさせるくらい薄暗い。
 西ユーロピア大陸独特の乾燥した空気と周囲を囲む針葉樹林帯は実際の気温よりもずっと肌寒く感じさせる。
 ペンドラゴン皇宮にも劣らない大きな門と高い天井の回廊を突き進み、そして階段を数段上がる。そこから広いエレベーターに乗り込み、上階を目指す。
 大公の間まで続く回廊には貴族の貴婦人達がシュナイゼルの姿をひと目見たいと集まっていた。本国から賓客が来ることは少なく、珍しいものとして見られているのだろう。
 カエサル大宮殿を訪れるのは数年ぶりのことだった。
 ヴェランス大公や、死んだとされる総帥たちとはもちろん面識はあったが、この若い総帥は先ほど初めて対面したばかり。彼は今までの総帥たちとは随分と雰囲気が異なっているように思えた。
 それは彼が異国の血を引いているからだろうか。
 純血を大事にするブリタニアではハーフであろうがブリタニアの姓を使用し、他の国の姓は決して表に出さないことが通例であるのに、彼は堂々とミドルネームにヒュウガという日本の名を入れている。
 それだけではない。彼の放つ雰囲気自体が異質だった。様々なものの破壊を望んでいるような冷酷さを持っているようにも思えた。
 立場上、度々そのような者を見かけることもあるが、それは犯罪者であったり、下級の軍人であったりすることが殆どだった。彼のように騎士団を率いる総帥からそのような気配を感じることは自分の知る中では異例だった。
「それで、ヴェランス大公は……?」
 先ほど彼はヴェランス大公は表に出られる状態ではないと云った。しかし、具体的にどうなったのかは聞いていない。
 シュナイゼルはシンに詳細を話すようにと促した。
 シンは一瞬黙りこむが、すぐに口を開いた。
「大公閣下は本国からの使者であったキングスレイ卿によって叛逆罪に問われ幽閉されておりました。そこでご体調を崩され、今は療養なされております」
「叛逆罪?」
 シュナイゼルは僅かに眉を顰めた。
 ジュリアス・キングスレイという軍師はこのユーロ・ブリタニアを治める最高責任者を本国に報告せずに幽閉したらしい。
 このユーロピア大陸の国々では過去にそうしたことが度々行われてきた。その流れはブリタニアも例外ではない。ブリタニア公がブリタニア帝国を築く前――まだイングランドがテューダー朝の支配下にあった頃、幾度もなく高貴な身分の者が幽閉されたり、処刑されたりしたこともあった。
 イングランドだけではない。フランスやイタリア、その他の国々であっても王族が身内で殺し合うことも珍しくなかった。
 そんな中世の時代を彷彿とさせる行いを未だに行うなど、とは思うが自分の父であるシャルル・ジ・ブリタニアもまた、彼の兄弟らを殺して皇帝となっていることも彼らとそう大差ないと結論付ける。
 専制国家は昔からそう変わらないのかもしれない。そう、いつの時代も王位を狙う者は存在する。
 もし、自分が皇位を継承したとしてもそういった危惧はついてまわる。だからこそ、父シャルルは兄弟を全て切り棄てたのだろう。
 皇位だけでなく、《ヴェランス大公》という爵位はこの広いユーロ・ブリタニアを全て支配することが出来る程強大な地位に値する。そしてそれを狙う者も間違いなく存在するだろう。
「皇帝陛下の名代としての言葉に逆らったのです」
 ジュリアス・キングスレイの言葉は皇帝の言葉と同等だと主張したのだろう。インペリアルセプターにはそれ程までに効力がある。
 しかし、それでも大公を幽閉するとはジュリアス・キングスレイはなかなか大胆な人物であるようだ。
「命に別状は?」
 念の為に確認をする。仮に命に関わる状態であったとしてもこの場の特に状況は変わらないだろうが、ユーロ・ブリタニアに住まう臣民にとっては宗主が殺害されたと思われかねない。
「命の心配はございませんが、酷く衰弱しておられました。罪がどうであれ、逃げ出す心配はないと判断し、今は休んでおられます」
 シンは表情を変えることなく淡々と状況を報告する。
 ヴェランス大公を解放するつもりもないようだ。その方が彼に都合が良いのだろう。しかしそういった意味ではこちらも同じ。ヴェランス大公――オーガスタ・ヘンリ・ハイランドは権力を持ち過ぎている。
「それは彼が回復したらはっきりとさせよう」
 彼が失脚したのは都合が良かった。ユーロピアとの決着をつけ、このユーロ・ブリタニアを本国へと再び従属させてみせよう。

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