• (NARUTO TOP)
  • Geass Log Top
  • Contacts
Logo
  • (NARUTO TOP)
  • Geass Log Top
  • Contacts
Logo
Logo

False Stage1-06

GEASS LOG TOP False Stage1-06
約9,306字 / 約16分

「い、痛いッ、スザク、離せッ!」
 自身の部屋へルルーシュを連れ込み、そうして彼の口から洩れたその声にハッとして我に返ると、ルルーシュの瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。
「ご、ごめん!」
 慌てて掴んでいた腕を離すと、そこは紅く痕になっており、どれだけ自分が力強く彼の腕を掴んでいたのか示しているようだった。
「ッ、スザク…………」
 ボロボロと零れ落ちる涙。それはルルーシュの気持ちを表していた。やはりルルーシュは故意に従弟のロロを殺したのではないのだ。
「ルルーシュッ」
 スザクは労るようにルルーシュの紅く腫れた手首を撫でながらその細身を抱きしめる。
「僕は信じているよ、君のことを。君は不正なんかしないし、従弟のことは事故だったんでしょう? 否定すれば僕にまで彼らの矛先が向かうからあんな風に言ったんでしょう?」
 そうであって欲しい。ルルーシュは好んで人を殺すような人間などではない。スザクは軍にいるからそういう殺人を好むような人間を何人も見たことがある。でもルルーシュはそうではない。それは目を見れば解ることだ。
「ち……違う、違うんだ。ロロは、ロロは俺にとって大切な従弟なんかじゃなかった。アイツは俺のことを監視する監視役で……。でも、いつの間にかアイツのことを本当の弟みたいに思えてきてしまって……。でも、それが間違いだった。その所為でロロは死んだ。俺が殺したも同然なんだよ!」
 ルルーシュは悲痛な声でそう叫ぶ。ロロを喪いたかった訳ではないのだ、と。
 それにルルーシュの言い方ではルルーシュ自身が直接ロロに手を下したという訳ではないようだった。
「ルルーシュ、君に何があったのかは解らない。でも、僕は何があっても君のことを信じてる! だから忘れないで! 僕はいつでも君の味方だから……!」
「……スザクッ、スザク……ッ。俺は、ロロをッ」
 スザクの身体に纏うようにしてルルーシュは今まで心に溜め込んでいたことを叫び、吐き出す。
 本当は従弟などではなく監視だったという。何故ルルーシュは監視など付けられていた? 一体誰に? 不可解な謎ばかり。それでも、今彼を質問攻めにするべきではない。何もこんな風に彼が心に秘めていたことを知りたかった訳ではないのだ。
「スザクッ、俺は……」
「もう良いんだ。落ち着いて、ルルーシュ……」
 ぎゅっと力を篭めて抱きしめる。そうすればゆっくりと呼吸を落ち着かせるようにルルーシュは息を吐き出した。
 この身体に纏うルルーシュの身をもっともっと力強く抱きしめたら彼はどう思うだろう。その白い肌は蒼白と呼べるくらいに青白く、今にも倒れてしまいそうな程だった。
 ルルーシュを自殺させようと追い詰めていた事実はきっとこの事件の所為なのだと思う。けれどもようやくスザクという親友を得て、立ち直ってくれたと思ったのに。
 そう思うとあの監督生に怒りが込み上げる。どうしてルルーシュのことをそっとしておいてくれないのだろう。成績のことなどで一々突っかかるなんて。
 反面ルルーシュの心はこんなにも弱っていたのに気付くことが出来なかった自分自身にも苛立ちを感じる。
「ごめんねルルーシュ、僕が何も気が付けなくて……」
 そんな風に謝ったところでルルーシュにしてみれば何ら意味もない謝罪なのだ。スザクが勝手にルルーシュに対して謝っているだけで、スザクが自分自身を責めているだけのことなのだから。
「スザク…………」
 小さく、掠れた声でルルーシュはもう一度スザクの名前を呼んだ。そのか弱い声にスザクは心臓が高鳴るのを感じていた。
 どうしてこんな時に。もっとルルーシュに掛けるべき言葉があるだろうに頭が真っ白になり、何の言葉を紡ぐことも出来ない。ドキドキと鼓動だけが早まって、頭ではその感情を必死になって否定する。けれどももう自分自身を騙し続けることも限界に近付いていた。
「ルルーシュ…………」
 そうスザクが洩らせばルルーシュはゆっくりと顔を上げる。その瞳には未だ涙が滲んでおり、その潤んだ瞳がスザクのそれを同じように見詰めてくる。スザクはそっと、顔を彼へと近づけていく。駄目だ、と頭では解っているのに身体はもう止まらなかった。
「スザ…………」
 スザク、と呼ぼうとしたのだろう。しかし彼の言葉は中途半端に途切れた。その代わり、もっと別の、熱い吐息が二人の間から洩れ出る。
「ん…………っ」
 そっと目を開けてルルーシュの表情を確認すれば、彼は抵抗することもなく、スザクの身体に纏い、そうして口付けを受け入れていた。長い睫がその僅かに紅潮した頬に影を落とす。その表情だけでもスザクの身体を興奮に導いていく。
「ふ……っ、ん」
 唇を啄むように幾度となく重ね合わせていけばルルーシュは僅かに眉を顰めて息苦しそうにしていた。それでも嫌がられないことを良いことにスザクは更にそれを深めようと舌を差し出そうと唇を薄く開く。
 その時、室内に電子音が響き渡った。
「ッ!?」
 驚いてルルーシュは目を見開くと、スザクの身体からその腕を離した。
「ご、ごめん!」
「い、いや、俺こそ!」
 何だか良く分からないが二人は互いに謝りながら音のする方へと視線を移す。
 そこには固定電話が置かれており、スザクは慌ててその受話器を取った。
「……はい、枢木です」
 この電話を使う用件は一つだけ。――軍からの呼び出しだ。
『スザクくん、大変よ、急いで特派に来て頂戴!』
 セシルの様子は慌てふためいたもので今何故そんなに慌てているのかスザクは首を傾げる。
『スザクくん、落ち着いて聞いて頂戴ね……』

――ブリタニアがニッポンに宣戦布告したわ

「…………え?」
 厭な予感が現実となる瞬間とは、その事実を受け入れるのに時間が掛かる。確かにブリタニアと日本は緊状態にあった。しかしまさか本当にこの事態が現実のものとなるなどにわかには受け入れ難いものだった。
「…………解りました。すぐに向かいます」
 こうなればこの要請を拒否することなど出来ないだろう。スザクは迷いながらもそう告げる。そうして受話器を置いた。
「…………何か、あったのか……?」
 恐る恐るといった様子でルルーシュは背後からスザクへと訊ねる。スザクの様子が普通ではないということに気が付いたのだろう。今の内容を聞いて普通にしていろ、という方が無理だ。
「……日本と、ブリタニアの戦争が始まる……」
「……そん、な」
 まさか、そんな筈。スザクもそう思いたかった。しかし現実にブリタニア日本に正式な宣戦布告を行った。もう戦争を回避することなど出来ない。スザクが呼び出されたのは間違いなく日本侵攻への参加の要請なのだろう。だからこそセシルの様子がおかしかったのだ。
 自分の国を自分で攻める。何とおかしなことだろう。確かにスザクは日本から人質として送られ、そうして見棄てられた。けれども日本のことを恨もうとは思わなかった。それによってブリタニアと日本の均衡が保たれるならばそれで良いと思っていたから。

――でも……

 ブリタニアと日本は戦争になる。ブリタニア人は日本人を殺し、日本人はブリタニア人を殺すのだ。

――ではスザクは?

 ブリタニア人でも無い。しかし日本人というには日本という国を離れすぎた。国籍だって今はもう日本には存在していない。名誉ブリタニア人となるということはそういうことだ。日本人であるということを棄てたスザクはブリタニアに従うしかない。譬えそれが祖国に対する侵略だったとしても。
「……早く軍に向かった方が良い。事実確認をきっちり取るべきだ」
「でも……ルルーシュは?」
「俺は、もう、大丈夫だから。……取り乱して済まなかった。もう部屋に戻るよ。外も落ち着いたようだから」
 ルルーシュは微笑して立ち上がる。確かに窓の外を見れば先ほどまで居たルミエールの学生達の姿は見えなかった。
「……ルルーシュ。さっきも言ったけれど……憶えていて。僕は何があっても君の味方だ」
「…………有り難う、スザク」
 本当は傍を離れたくなんか無かった。まだ少し震えている彼の肩を抱きしめて、そうして口付けたかった。けれども何故このタイミングなのだろう。状況はそれを許してはくれない。
 スザクは急いで特派へと向かう。もしかしたらこのまま暫く寮には戻れないかもしれない。ルルーシュのことが心配で心配で堪らなかった。それでも行かなければならない。
 学院を飛び出て足を速める。日本とブリタニアが戦争だなんて、今でも実感がわかない。このブリタニアも戦場となるのだろうか。それとも日本が焦土と化してしまうのだろうか。
 ブリタニアは間違いなくランスロットを始めとするナイトメアフレームを使用するのだろう。先日EUの一部と戦闘になった時も迷わずブリタニアはKMFを投入し、そうして戦闘の早期終決を図った。それを考えれば今回の対日本戦でKMFを使用しない筈がない。
 ルルーシュの言った通りしっかりこの目で、耳で、状況を確認するべきだ。そうして自分が次にどのような行動を取れば良いか考えなくてはならない。
「スザクくん……」
 特派に到着するとセシルはいつもの明るい表情を消し、神妙な面持ちでスザクを迎えた。対してロイドの方はいつもと変わる様子もなく、普段通りに出迎える。
「ロイドさん、セシルさん、さっきの話は本当に……」
「ええ、今そこのテレビで皇帝陛下の演説が」
 言われたようにモニターへと目を向ければ、ブリタニア帝国皇帝であるシャルル・ジ・ブリタニアの姿が映し出されていた。
 決起集会とばかりに集まった帝国臣民達の歓声が響く。サクラダイトを今度こそ全て奪い尽くすつもりなのだろうか。それともスザクの知らないような水面下での交渉が決裂したか。理由は解らないがとにかくこれからブリタニアと日本が全面戦争に突入することは確かなようだった。
『我々ブリタニア帝国は日本へ正式に宣戦布告する。日本が降伏宣言を出すまではその戦いを止める必要は無い。今こそ立ち上がり、そうして奪い尽くすのだ。ブリタニアを脅かすテロリストの巣窟を潰すのだ! そうすればこの国は更なる強者となり得よう! オール・ハイル・ブリタニア!』
『オール・ハイル・ブリタニア!』
 その言葉が繰り返し、繰り返しスピーカーから流れ続ける。ブリタニアに栄光あれ! オール・ハイル・ブリタニア!
「スザクくん? 大丈夫かなぁ? 君、名誉ブリタニア人だけれどあの国出身だよね。祖国を滅ぼす為に戦争に行くこと出来るかな?」
 ロイドは相変わらずの態度でスザクへと視線を向けた。しかし口調とは裏腹に眼鏡の奥の表情は真剣そのものだった。
「僕は…………」
 迷う訳にはいかなかった。スザクには護りたい人が居る。それは日本に暮らす父親でも従妹の神楽耶でも無い。ブリタニアに暮らすスザクの親友だった。譬えそのことが祖国を喪う原因となったとしてもそれでもスザクの決意は変わりない。
「…――戦います! 日本が譬え滅びるとしてもそれでも僕は」

――大切な人を護りたい……

 願いはたったそれだけだ。その為になら何だってする…………してみせる!
「良い返事だね、スザクくん。ランスロットはもう準備出来ているからね。シュナイゼル殿下のアヴァロンに!」
「……アヴァロン?」
 耳慣れない言葉にスザクはそのまま聞き返す。アヴァロンとは一体何だ、と。
「前に言っていたシュナイゼル殿下専用の航空艦だよ。要塞の役割まで果たせるくらいの強度も誇る、ランスロットと同じくらいのボクの自信作!」
 つまりそのアヴァロンに乗り、太平洋を進んで日本へと向かうということのようだ。そうなれば自ずと指揮官はシュナイゼルということになるのだろう。帝国宰相が自ら指揮を執るのだ。日本にとってはかなり不利な戦いを強いられることになるのだろう。
「すぐに向かうことになるけれども大丈夫かしら?」
「……ええ」
 本当は不安でいっぱいだった。それでももう行くしかない。スザクは大きく頷いた。
「ならばアヴァロンへ向かいましょう。それまでは少し休んでね。スザクくん」
 これから行うのは戦争なのだ。今までのテロの後処理や人命救助とは違う。人を殺しに行くのが戦争である。監督生たちはルルーシュのことを人殺しだと言ったが、スザクは彼らが言うよりももっと大勢の人間をこれから殺すことになる。
「イエス、マイ・ロード」
 このトレーラーは十分程度でアヴァロンの格納されている施設へ到着するという。それまで少しの間休むように促され、スザクは置かれていた椅子へ腰掛ける。
「アヴァロンに乗ってから二時間程度は太平洋の上を横断するわ。その後日本近海に近付き次第シュナイゼル殿下が直接指揮を執ることになっているようなの。大丈夫……ってそんな言い方はおかしいと思うけれどシュナイゼルの指揮下にいればあなたは安全よ。殿下は負けなしだから」
 南ブリタニア地区を制圧したのもシュナイゼルだった。彼は味方の戦力を殆ど失うことなく彼らに圧勝した。EUの一部と戦闘を繰り広げた時も同様に。
 若くして宰相になる程の人物だ。油断も隙も存在しない。それは戦場でも戦場でなくとも同じなのだろう。先日初めて直接会った時もシュナイゼルのその隙のなさに驚いたものだった。身分のある人物はもっと着飾ることだけに重点をおいたような存在だと思っていたから。
「選ぶなら本当に今が最後だよ。殿下のところへ行けばもう戻ることなんて出来ない――ニッポンという国が無くなるまでね。でも今ならばニッポンに戻って君の祖国の人間と共に戦うことも出来るよ?」
 そんなことを言い出した上司にスザクは逆に慌ててしまう。
「僕はもう覚悟を決めていますよ。ロイドさん!」
「ふうん。戦場でやっぱり同胞を殺せません! なんて間違っても言わないでよ?」
まるでそういう風な状況に居合わせたことがあるようなその口調にスザクは一瞬口を閉ざす。きっとロイドは見てきたのだろう。名誉ブリタニア人達の悲惨な戦いを。
「僕はもう、迷いません」
 自分に言い聞かせるようにはっきりと断言する。迷いなど断ち切ってしまえば良い。日本に対する未練など。
「すごい決意だねぇ。ブリタニア人の恋人でも居るのかなぁ!?」
 ニヤと笑みを浮かべながら顔を覗き込まれ、スザクは背後へと背を退ける。
「まぁ、ロイドさん! そんな風にスザクくんをからかって!」
「ご、ごめんなさいー!」
 指の節をポキリ、ポキリと鳴らしながらロイドの後ろに立つセシルの表情にロイドもスザクも表情を凍り付かせた。

「もうすぐ着きますよ」
 その言葉の通り、正面の巨大モニターには大きく周辺の様子が映し出されており、アヴァロンの姿もそこにはっきりと存在していた。
 既にアヴァロンにはランスロットが積まれているのだという。日本侵攻がどういった意味を持っているのかスザクにはまだはっきりとは解らない。しかし日本出身であるスザクをわざわざランスロットに乗せて日本へと送り込むのだから勘ぐってしまうことも多々ある。
 スザクに父親殺しでもさせるつもりなのだろうか。そうして日本人に枢木スザクという日本国最後の首相の嫡子の名を知らしめる。そしてそのスザクはブリタニアに従っているのだと広めればもう誰もブリタニアに反抗を示さないだろうということなのだろうか。
 そんな単純なものではないのだろう。自分よりも何十倍も頭の良いこの国の宰相が考えることなのだ。もっと何か深い意味があるのかもしれない。勿論そのどちらもスザクの憶測に過ぎないのだから実際のところ何とも言うことは出来ないが。
「さあ、アヴァロンへ入りましょう」
 トレーラーごと後部の搭乗口から入り込んでいく。この戦艦は意外という訳ではないがかなりの大きさを誇っていた。これが空を飛ぶだなどと誰が信じられるか。しかしスザクの考えを他所にアヴァロンは軽々とその地面から機体を浮かせ、大空へと舞い上がった。
 しかし浮遊感を感じるということもなく自分が今、宙に浮いた物質の上に乗っていることがにわかには信じられなかった。それでも窓の外を覗けばやはり地上は遙か下にあり、この場所が空中であるということを知る。
「良かった。間に合ったのね」
 奥からこちらへと向かって近付いてきたのは先日シュナイゼルの副官だと紹介されたカノン・マルディーニだった。
「お陰さまでねぇ。殿下は奥なのかな?」
 ロイドはカノンの背後へと目を向ける。そうすればその先の薄暗い場所の向こう側にひらけた空間が目に入る。硝子張りで明るく照らされているのは指揮官の座する艦橋なのだろう。
 カノンに案内されるが侭に皆奥へと進んでいく。そうすればそこには指揮官用の座席が設けられ、シュナイゼルがそこに腰掛けていた。
「ロイド、セシルさん、枢木くん、陛下はニッポン侵攻を命じられた。そこで指揮官として選ばれたのが私だ。ニッポンが枢木くんの故郷だということは勿論理解しているが、それでも彼らニッポン人と戦わねばならないのは解るかな?」
「ええ、勿論理解しております。そして理解した上で納得してこの場所へ参りました」
 スザクははっきりとそう告げる。そうしなければこの場所に来た意味すら失ってしまうから。
「ならば安心だね。最近我々の住まうブリタニアにテロを仕掛けていたのがニッポン人だと判明したんだ。勿論彼ら独自の犯行ではなく、裏には大きな別の何かが存在していことは容易に想像出来るが……そうでなければニッポン人がブリタニアにそこまで反抗する理由も無いからね」
「……では一体誰が日本人に…………」
「中華連邦だよ。ニッポンにそうやって武器や物資を提供してブリタニアと戦わせる。今やニッポンは中華連邦の傀儡政権と化していることは否めないだろう」
 ニッポンは遂に隣国中華連邦と手を結んだのだという。
「澤崎という男が怪しい動きを見せていてね。中華連邦の大宦官と繋がっているようなんだよ。しかしこちらも直接に中華連邦とやり合うにはまだ早すぎるからね。先ずはニッポンだけでも中華連邦から切り離す必要が出てきたということなんだ」
 ブリタニアとニッポンとの戦いに中華連邦が手を出すことはない。テロと違いこれは戦争なのだ。表だって中華連邦が日本へ協力すればブリタニアの攻撃対象は中華連邦まで拡大する。しかしそれはブリタニア側も、中華連邦側も避けたいと思っていることだった。
「つまり日本という国はブリタニアと中華連邦との戦いに巻き込まれていると?」
「簡単に言えばそうだね。しかし中華連邦の手を借りようとニッポンがブリタニアでテロを起こしているのは変わりがないからね。どちらにしてもそれを止めさせるにはこうするしかないんだよ」
 中華連邦が関係するにしろしないにしろブリタニアはどちらにしても日本という場所を欲しがっていた。それが中華連邦がこうして日本を自らの策謀に巻き込んだことによりブリタニアは日本を侵略する為の大義名分を得た。
 そのことに日本政府が気付いているのかどうかは定かではないが、澤崎という男はそれを理解した上で中華連邦と協力しているのだろう。恐らく中華連邦での地位を約束されているに違いない。
「……解りました。しかし准尉でしかない自分にわざわざ殿下自ら今回の戦いの理由を説明して頂けるなど……」
 普通はそんなことなど無いだろう。帝国の宰相が准尉などに戦争の理由を態々直接説明することなど。譬えそれがスザクの祖国の戦争だとしても宰相が説明する義務などどこにもないのだから。
「私は君のことを気に入っているからね」
 ニコリと微笑まれ、スザクは目をぱちぱちと瞬いた。
「君のような存在は何れ重要視されることになるだろう」
 そんな意味深な言葉まで残して。シュナイゼルが何を考えているのか解らなかったが、スザクはロイドやセシルと待機しているようにと命じられ、その場を後にした。
「ふーふーふーふふふン! そーいうことね」
 ロイドは鼻歌を交えながら納得したように大きく頷く。そんな上司にスザクは彼が何について納得しているのか理解出来ず、きょとんと首を傾げた。
「一体何が〝そういうこと〟なんですか? ロイドさん」
 セシルもロイドの言葉の意味を図りかねたらしい。ロイドはそのセシルの質問にアイスブルーの瞳を細めた。
「殿下は使えるものはとことん使う主義だからねぇ」

――殿下は君の存在を利用するおつもりのようだよ

 スザクは名誉ブリタニア人になる前は日本人だった。今でも日本という国が故郷であると思っている。父親は日本国の首相。長らく続いた枢木政権は最早腐敗しきっており、その内閣で官房長官として枢木首相を支える存在であった筈の澤崎は隣国中華連邦と繋がりを持つようになった。
 徹底した情報規制、それから無能な政府。それらが重なり合い、そうして日本という国はこのままでは中華連邦またはブリタニアに呑み込まれてしまう。
 果たしてどちらが日本にとって良いのだろう。
「僕を利用することによって早く戦争が終わるのなら、それで構いません」
 早く戦争を終えて、ブリタニア本国に被害が出なければそれで良い。ルルーシュが安心して暮らせる世界であってほしい。それがスザクにとっての幸せだった。
「へぇ、もしかしたら殿下は君の大切な人を君に処刑させるかもしれないよ? ……なんてね。そろそろニッポンの領海に入るみたいだから準備してね!」
 果たして今の言葉は本気か、それとも。セシルの方へと目を向ければ彼女はオペレーティングの準備をしているようで今の話は聞いていなかったようだ。そうしてスザクが彼女のことを見ていることに気が付くと、彼女は眉を下げて微笑を浮かべた。
 自分を見棄てた親よりも知り合って短期間ながらも心を開くことが出来た親友の方が大切だなんておかしいと思われるだろうか。それでもそれがスザクにとっての真実なのだから仕方のないことだった。
 既にパイロットスーツを着用していたスザクはランスロットの格納された場所へと向かう。外は段々と騒がしくなってゆく。既にニッポンに程近いブリタニア領地から軍が派遣されていたのだろう。東北地域は火の海に包まれていた。それ程人口の多い場所ではないといってもあれ程大規模に攻め入れば被害は免れない。
『枢木准尉、準備は整ったかしら』
「イエス、マイ・ロード」
『先に入った部隊の連絡によるとニッポン軍は独自のナイトメアフレームを開発していたらしいの。それがこの前線付近でも利用されているわ。でもブリタニアのものを真似て作っていることには変わりないから基本的な動作は同じようなものだという報告が上がっているようだけれど……でも油断は禁物よ』
「解っています、セシルさん」
 日本が独自のナイトメアフレームを開発していたとしても驚きはしない。背後には中華連邦が付いているのだから。
『では前線に合流し次第シュナイゼル殿下の指揮下に入ります』
「イエス、マイ・ロード!」

Novels
  • Suzaku*Lelouch50
    • Novels42
      • Another Way4
      • False Stage110
      • False Stage28
      • False Stage37
      • False Stage41
      • Lost memory2
      • 水月鏡花3
      • 背徳の花7
    • Short Story8

⚠ サイト内の画像、文章の無断転載は許可しておりません。
⚠ Do NOT repost any images and texts on this website.

Logo
Logo
  • (NARUTO TOP)
  • Geass Log Top
  • Contacts