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False Stage1-09

GEASS LOG TOP False Stage1-09
約8,473字 / 約15分

 皇宮へと到着すれば、そこには皇帝ではなくナイト・オブ・ワンであるビスマルク・ヴァルトシュタインが待っていた。ナイト・オブ・ワンとはナイト・オブ・ラウンズを取り仕切る存在である。ナンバーによって格差は無いとされるナイト・オブ・ラウンズだがワンだけはそうではない。
 ビスマルクの手配により、ルルーシュはすぐに応急処置が取られ、スザクもようやく安心することが出来た。皇宮専門の医師の処置だ。それはつまりどの病院の医者よりも優秀な医者がルルーシュを治療するということであり、彼らがルルーシュの容態が問題ないと断定したことによりそれは尚いっそのこと確かなものだった。
皇帝に謁見するのは今日ではなく明日であると説明され、翌日にもう一度来るように、と告げられ、そして帰されてしまった。
 そうして今、再びジノとアーニャと共に謁見の間へと向かっている。戻った後のルミエールの混乱は大変なものだった。他のナイト・オブ・ラウンズが監督生たち加害者学生らを拘束しに現れるということはなかったが、それでもいつ皇宮警察が、軍人が、やってくるか怯え、恐怖に震えていた。そんな寄宿寮に留まっている訳にもいかず、スザクは荷物を纏めると、特派に行って事情を説明した。ナイト・オブ・ラウンズに入ったことも。そうすれば彼らはそのことを喜んだ。しかしスザクはルルーシュのことが心配で、彼のことが頭から離れなかった。
「……殿下はもう学院には戻られないだろうな」
 あんなことがあった学院に戻る筈がない。それはスザクでも勿論解る。だからこそスザク自身ももうあの学院に戻らないということを決めたのだ。ナイト・オブ・ラウンズになったことによりスザクはそう簡単に学院へと通うことは出来ない。しかしそれだけではない。ルルーシュが居ない学院など通う意味が無いのだ。
 三人は謁見の間へと入ると。そこには皇帝とビスマルクが待ち構えていた。皇帝の座る玉座、それよりももっと隅にビスマルクは静かに佇んでいた。そして入り口から玉座までを結ぶ空間の両脇には数多くの皇族や貴族達がスザクたちへと視線を向ける。
 以前とは違い多くの人々が謁見の間へと呼ばれていたのだ。てっきり三人だけが呼ばれていたのかと思っていたスザクは一瞬息を呑んだが、それでもすぐに前へと足を運ぶ。
 既に他のナイト・オブ・ラウンズと思しき面子が皇帝の前へと跪いて頭を下げている。スザクたちもすぐにその横へ移動すると同じような体勢を取った。
「顔を、上げよ」
 昨日と同じく、低く威厳のある声が空間に響く。こんなにも大勢の人が集まっているのにも関わらず辺りは静寂に包まれていた。
「本日は重要な発表が二つある――…」
 皇帝はそう続ける。そうしてその紫紺の瞳がスザクへと向かった。
「一つ目は円卓に一人新たな騎士を迎えることとなった。枢木スザク――汝を我が騎士として迎え入れよう……」
「イエス、ユア・マジェスティ」
 再び大きく頭を下げると、ゆっくりと顔を上げる。そうすれば皇帝の満足げな笑みが目に入る。
「もう一つ。第十一皇子であり皇位継承第十七位のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが我が元に戻ってきた……。そこでルルーシュを正式に公務に就かせることにしよう。前へ」
 皇帝は顔を脇へと向けると、コツリ、コツリと足音が聞こえてくる。そうしてスザクは知った。ルルーシュの名前はルルーシュ・ランペルージではなくルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであるということを。そして皇族の象徴でもある豪奢な服を纏ったルルーシュの姿が現れた。
 しかし上から下まで全て黒で覆い尽くしたその衣装はこの皇宮で異質なものだった。皇族や貴族といえば派手な色や飾りで装飾された衣服を纏うのが習慣化されている。しかしルルーシュの着ている服はシャツとタイの白さとマントの裏打ちの緋色以外は黒色で派手な装飾は一切無く、銀色の刺繍で襟元と袖口を飾っているくらいだった。
 それでも皇子としての品位が消えないのはルルーシュ自身から発せられるその気高さ故なのだろう。昨日の不安定な表情は消え、しっかりとした面持ちで前を見据える。それに足取りはふらつくこともなく真っ直ぐに皇帝の前へ歩くと、自分たちと同じように膝を折った。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアよ。汝をブリタニア軍の総司令官に任じよう」
「イエス、ユア・マジェスティ」
 スザクは一連の遣り取りを固唾を呑んで見守っていた。昨日はあんなにも弱っていたのに一日でこんなにも回復出来るものなのだろうか。
 どこかで違和感を覚えながらスザクはじっとその光景を見詰めていた。後でルルーシュと話す機会くらいはあるだろう。そこで直接聞いてみればいい。そんな風に思いながら。
 しかしそれにしてもいきなり軍の総司令官? 今までは宰相であるシュナイゼルが兼任していた仕事だ。ずっと学院に閉じこもっていた皇子が皇宮に戻ってきてすぐにそんな重要なポストに就いて問題はないのだろうか。
(確かにルルーシュは頭が良いけれど……)
 少々危険ではないだろうか。
 スザクが考え込んでいる間に皇族や貴族達は謁見の間から出るように指示される。そしてナイト・オブ・ラウンズとルルーシュ、そしてシュナイゼルだけがこの場所へと残った。
「……殿下が軍の総指揮を?」
「それにナンバーズがナイト・オブ・ラウンズだと?」
 そう洩らしたのはそれぞれドロテアとルキアーノだ。やはり今回の皇帝の決定は異例のことらしい。
「……これは皇帝陛下の決定でね。私も異存はないよ」
 シュナイゼルは笑みを浮かべる。そうして無表情のままこちらを見ていたルルーシュの横へと近付く。
「ルルーシュ、久しいね。元気にしていたかい?」
 指先を伸ばし、その白い頬をそっとなぞる。それだけでもスザクは二人を引きはがしに行きたくなってしまう。兄弟の戯れであるだけの筈なのに。そんなことにすら嫉妬の感情を覚えるなど。
「……お久しぶりです。シュナイゼル兄上」
 無表情に返されたそれは何とも心の籠もらない挨拶だったが、シュナイゼルは気にしていないようだった。
「君になら軍を安心して任せられるからね。とはいえ実際君が小隊の一つ一つを指揮するというよりかはそれを纏めるナイト・オブ・ラウンズを動かす方が多いのだろうけれどもね」
「……はい」
 それはそうだろう。総司令官が一々細かな一つ一つの部隊まで指揮権を持つ訳ではない。そんなに多くのことを把握することは難しいし、ピラミッド型になった頂点に存在する者はそのすぐ下の者に命令を下すだけなのが普通だ。とはいえ全体の戦況は常に把握してなければならないし、戦略的思考というものは欠かせないだろう。
「それに君には特別な任務があると陛下から聞いているよ。私には教えて貰えなかったけれどもね」
「それも問題ありません。兄上の手を煩わせるようなことは一切」
 学校で見る彼とは随分と異なるその雰囲気にスザクは僅かな違和感を持つ。
 ルルーシュは兄弟と仲が悪いのだろうか。確かにずっと学院に一人で生活していたのならば疎遠ではあったのかもしれない。学院に皇族が堂々と身分を隠している筈のルルーシュに会いに行けるわけなど無いし、ルルーシュはロロの件があって学院を出られなかった。
 なら何故今皇帝はルルーシュを再び皇宮へと呼び寄せたのだろう? 一体何の理由で?
「ふむ。では私は宰相府に戻るとしよう。あとはビスマルクに任せるよ」
「イエス、ユア・ハイネス」
 ビスマルクがいつの間にか皇帝の元から戻ってきていたらしい。シュナイゼルは端に立つビスマルクへ向けてそう告げると、踵を返した。
「殿下、ナイト・オブ・ラウンズからあなたの護衛を三人選ばせていただきました」
「三人?」
 ルルーシュは目を顰める。一人の皇族に付き三人とは些か多すぎるのではないだろうか。そんな風に。
「いえ、しかし殿下の御身がどれほど大切か。あなたならおわかりになるでしょう?」
「……大切なのは私の身体や命などではなく、それに付随する能力の方だろう?」
 能力。それが何を意味しているのか。ただ単純にルルーシュの思考力の高さのことを言っているようにはどうしても思えなかった。
「……否定は出来ません」
 ビスマルクの言葉にナイト・オブ・ラウンズの面々も絶句する。しかしルルーシュは「そうか」と当然のようにその言葉を受け入れ、そしてそっと瞼を伏せた。
「皇帝陛下の命令は絶対だ。仕方が無いさ」
「……申し訳ございません」
 頭を下げるビスマルクを一瞥すると、ルルーシュはそこで話題を元に戻した。
「……それで? 護衛とは?」
「そこに居りますナイト・オブ・スリーのヴァインベルグ、ナイト・オブ・シックスのアールストレイム、それから先ほど円卓に名を連ねましたナイト・オブ・セブンの枢木スザクを殿下の護衛に」
 ビスマルクは護衛として皇帝から任命された三人の名前を挙げた。そのことに対して差ほど驚くこともなくルルーシュは頷く。
「……そうか。では早速だが、先日の対日本戦の際、片瀬と呼ばれるニッポンの将校がキュウシュウ地区へと身を潜めたらしい。そうして再びブリタニアに反旗を翻す機会を窺っているという。そこで皇帝陛下よりナイト・オブ・ラウンズを率い、片瀬を捕らえる命が下された」
 先日の戦いからまだ数日しか経過していないにも関わらずもうそこまで情報が伝達されているらしい。しかしそれならばスザクたちがまだ日本付近に居る時点で捕らえてしまった方が良かったのではないのだろうか。
「なら何故シュナイゼル殿下の指揮下で捕らえなかったのですか?」
 ノネット・エニアグラムが訊ねる。
「中華連邦との繋がりがどこまで進んでいるのか追うためだ。よって我々がキュウシュウへ向かうのは今すぐにではない」
 ルルーシュはそこで一度言葉を切る。
「それと今回のキュウシュウ潜入には部隊は率いらない。私と私の護衛として当てられた三人が居れば充分だ」
「えっ!?」
 誰もが驚きに目を剥いた。ナイト・オブ・ラウンズは確かに一人でも一部隊以上の役割をこなすだろう。しかそれでも四人で敵国へ向かうのは無謀ではないだろうか。幾ら一度はブリタニアが勝利していたとしてもまだ戦後の統率は出来ておらず、混乱状態が続いているといってもいい。
「とにかく、一週間後に我が護衛として選ばれし三人を連れ、キュウシュウへ攻める。奴らの潜伏先が変わることは無いだろう。キュウシュウはニッポンから中華連邦へと最も近く、助けを求めやすい位置であることは間違いないのだからな」
 他の意見など必要ないとばかりにルルーシュはそう告げると回廊へと繋がる扉へ向かって歩いて行ってしまう。スザクやジノ、アーニャも慌てて後を追った。
「ルルーシュ殿下、その、お体の方はもう問題ないのでしょうか?」
 昨日の今日だ。かなりの負担があった筈なのにもうこんなにも自由に歩くことが出来るのか。それはスザクも彼が皇帝の前へ姿を表した時からずっと疑問に思っていたことだった。
「……何のことだ、ヴァインベルグ。何か問題があるように見えるか?」
 まさかそんな風に切り返されるとは思わなかったのだろう。そう、問題があるようには見えないのだから尋ねた筈なのだ。ルルーシュの言葉にジノは言葉を詰まらせた。
「……いえ」
「おかしな奴だ。それと護衛といえども此処は皇宮内だ。付き添いは一人で良い。……枢木、私を部屋まで送れ」
 紫玉の瞳がスザクを一瞥する。それは見慣れたものの筈だったのに何故だかいつもとは異なるように思えた。
「イエス、ユア・ハイネス」
 暫く歩けば廊下には人の姿が無くなっていく。皇族の私室が近い証だろう。むやみやたらに世話係以外の人間がその場所に立ち入ることを許されている筈がない。
「ルルーシュ……?」
 スザクはルルーシュの背を追いかけながら戸惑ったようにルルーシュの名前を呼んだ。一体ルルーシュに何があったのか。皇宮へ連れてきた時の弱々しい彼は一切消え、凛とした皇子としての動作や言動に変わっていた。しかしそれが余りに突然で、スザクには違和感だけが付きまとう。
「……誰が呼び捨てを許可した? 枢木」
 不敬だぞ。続けられた言葉はまさに愕然とするものだった。スザクのことを〝枢木〟と呼び、そうして自らの名前を呼び捨てにすることは〝不敬〟だという。今まで学院で過ごしてきた時間すら否定されたような気がして、スザクは息を潜めた。
「も、申し訳ございません」
「まだナイト・オブ・ラウンズに入って日が浅いようだがな、戦いに勝つだけではラウンズの名を名乗ることは出来ないぞ? 皇帝陛下に忠誠を誓い、この国の為に尽くし、そうしてそれを心から望まねば……務まるまい」
 一体どうしてしまったのだろう。ルルーシュがルルーシュでなくなってしまったようなそんな感覚。皇宮に戻ってくるのが久しぶりだから緊張している、などといった生温い理由などではない。きっともっと別の……。
「殿下、少々お聞きしたいことがございます。殿下は今まで何処に?」
「……それは此処数日のことか? それとも私が皇宮を出ていた七年間のことか?」
「……どちらも、です」
 そう、スザクの知りたいことはそのどちらもだった。昨日ルルーシュはルミエールの学生たちに襲われた。それなのに今日は何事もなかったかのように平然とスザク達の前へと姿を見せた。そしてもう一つ……空白の七年間、スザクが彼と出会う前に一体何があったのか。それをまだ本人の口から聞いたことが無かった。だからこそ、その両方の時間についての説明を求めてしまった。
「私は皇子であるが、それ以上の役目も賜っている。その為に必要なことをする為に皇宮を出る必要があった。力が必要だったからな。戻ってきたのは昨夜。皇帝陛下からの勅命でな、私の得た力を生かし、総司令官へと任命されたという訳だ」
「……力……ですか?」
 それは一体どういう意味なのだろうか。学院に居た時、彼は運動や体力仕事は苦手だった。つまりはそういった意味の力ではないのだろう。では政治的な? それとも軍事的手腕という意味での力? 確かにそれならば彼の言葉の筋は通る。けれどもそうだとすれば第二皇子シュナイゼルのままであっても一向に問題無かった筈だ。ルルーシュに任せるということはシュナイゼルには無い何かをルルーシュならば果たせるということになる。
「何れ、解る」
 たったそれだけの言葉で片付けられたしまった。それが何だか哀しくて、スザクは、ムキになって追求する。
「……では貴方は学校に通ったことは?」
「無いな。そんなものは不要だろう? 皇宮を出た時点で必要な知識が頭に入れていたからな」
 学校になど通ったことはない、そんな筈がない。スザクはほんの数日前までルルーシュと学院で過ごしていたのだ。それをそんな風に否定されるなど……。
(そんなにも学院でのことを無かったことにしたい?)
 スザクとの友人関係も、強姦された事実も、全て忘れたふりをすれば帳消しに出来ると思っているのだろうか。それともこれも皇帝に命じられたことなのだろうか。ルルーシュが何を考えているのか本当に解らなかった。これからルルーシュの護衛として身近なところで過ごしていくことが出来る、ルルーシュを護りたいという願いが叶ったと思ったのに……。
 肝心のルルーシュがスザクのことを忘れたふりをしているのでは意味が無い。それもスザクにすらよそよそしい態度を取るのだ。何故こんなことになってしまったのだろう。
 スザクは足を止めると、瞼をぎゅっと伏せた。そうすれば突然足を止めたスザクに気が付いたのか、ルルーシュはそっと振り向いた。
「どうした、枢木」
 相変わらず冷たい感情の籠もらない言葉。それはスザクに心をぎゅっと鷲摑まれるような苦しさを与える。
「……殿下は、忘れてしまわれたのですか? ……僕のことを」
「……何を云っている? お前とは初対面の筈だが?」
 返ってきた言葉は冷たいものだった。今までの学院生活のことすら全て否定するような……そんなものだった。初対面だと言い張るルルーシュにスザクは絶句する。
「……本気で、そう仰られているのですか? 自分たちのことを無かったことにしたいだけでしょう?」
「……意味が解らない」
 意味が解らないのはこちらの方だ。本当に、一体何故こんなことに?
「僕は……愛していました」
 零れた言葉はそんなものだった。直接告げるタイミングを見失っていたがきっと二人とも同じ気持ちだと思っていたのに。
「……何を莫迦なことを。私はずっと嚮団に管理されていたのだぞ? お前と知り合う機会がどこにあると……」
 知り合う機会なら幾らでもあった筈だ。同じ学院に通っていたのだから。
「もう良いです。これ以上聴きたくない……ッ」
「勝手なことを! 貴様のその訳の解らない妄想は慎んでおくことだなッ!」
 スザクは眉をぐっと顰め、再び前へと歩んで行ってしまったルルーシュの後ろ姿を見詰めた。そうして気が付いてしまった。
(……ルルーシュの、記憶がおかしい?)
 そう、スザクの知っているルルーシュならばきっと此処まで非情になれたとは思えない。スザクとの友人関係やそれ以上の想いさえも無かったことにして、そうしてその上で事実をスザクの妄想として片付ける。そんなことが出来る筈がない。少なくともそう思いたかった。ルルーシュはそんな人間ではない、と。
 それに彼は管理されていたと云っていた。嚮団などという訳の解らない団体に。それも何か関係しているのだろうか。
 しかし人の記憶が一日という短い期間で入れ替わってしまうなどということがあり得るのだろうか。病気によって徐々に記憶の断片を喪っていくアルツハイマーなどといったものとは訳が違う。忘れたという訳ではなく根本的に別の記憶へと入れ替わってしまっているのだから。
「申し訳ございませんでした。自分の勘違いだったようです。殿下は昨日七年ぶりに皇宮へと戻られた。たったそれだけのことなのですよね」
 やはりルルーシュがスザクとの関係を否定したいが為に演技を行っているとは思えなかった。そう考えれば先ほどまでの苛立ちは消えた。
「……ああ」
 スザクとは逆に先ほどまでより尚一層不機嫌になったらしいルルーシュの返答はとても短いもので、スザクは今にも涙が溢れてしまいそうになるその心をぎゅっと抑え込むようにして足を速めた。
 スザクの前をどんどんと歩んでいく彼の背をスザクは感情をこれ以上洩らさないようにして追いかける。一体自分達ナイト・オブ・ラウンズがルルーシュを皇宮に連れて戻った後、何があったのか。ルルーシュはどうしてしまったのか。もう元のルルーシュには戻らないのだろうか。
(君は、どうして……)
 皇帝は、ナイト・オブ・ワンのビスマルクは、何か知っているのだろうか。ルルーシュの様子が急激におかしくなった理由を。それとも本来の彼がこうであったとでもいうのだろうか。
 踊り場の階段を下りる途中、ルルーシュは突然に立ち止まった。スザクは突然どうしたのだろう、と彼の様子を伺おうと彼の隣まで近付き、横目で表情を確かめる。
「……殿下?」
 スザクの目に映った光景は先程までのルルーシュとは違い、学院で良く見ることのあった憂いを帯びたような表情だった。
「……お前達は私の力を知らない。呪われた力だ。先にお前には忠告しておこう。私の目を……無闇に見ない方が良いだろう。死にたくなければ、な」
「え…………?」
 思ってもみなかった言葉にスザクは息を呑む。

――死にたくなければ目を見るな?

 それは一体どういう意味なのだろうか。どういった意図を以ての発言なのだろう。ルルーシュの言葉は難しい。何かを隠喩しているのだろうか。それともまさか実際に目を見たら死んでしまう? それならば既に自分は死んでいるだろう。ギリシア神話に出てくるメデューサでもあるまいし。しかし確か彼女の目を見た者は死ぬのではなく石に変えられてしまうというのだからまた別のものか。
「それは一体……どういうことなのですか?」
「私はこの力を使って生き残ってきた。そしてそれはこれからも変わらないだろう。その為に私は皇帝陛下の元へ戻ったのだから」

――それは当然のことだろう?

「人は、この力を悪魔の力だと呼ぶ。しかし私はこの力を使う為に皇宮へと戻ってきた。本当ならば護衛など必要ないのだが……ビスマルクが煩いからな。仕方なくナイト・オブ・ラウンズを同行させることにした――だが枢木、余計な詮索は不要だ。ナイト・オブ・ラウンズに入ったばかりだというのに早急にその地位を辞したいのならば話は別だが。そうでなければ私の命に従うだけにしておくのだな」
 ルルーシュはそう吐き捨てて、再び足を踏み出した。階下へと向かう漆黒にスザクは一歩遅れて付いていく。彼の言葉が一体どんな意味を含んでいたのか。それは未だ解らないままだった。

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