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False Stage3-07*

GEASS LOG TOP False Stage3-07*
約13,843字 / 約25分

 アリエス宮に留まることは不可能だった。多くの人の血に塗れたあの離宮は既に白羊宮の名からは遠ざかり、ルルーシュは思い出と共にそれらを焼き去った。もう二度と悪夢を見ない為にも。
 三人のラウンズ――とりわけジノの意見だったが、本宮へと身を移すことになり、今は暫定的に用意させた部屋に備えられていたバスルームで躯を汚していた血を洗い流していた。
 この先、どう出る必要があるだろう。皇帝も宰相も死に、そして残る皇族は自分だけ。あの時V.V.は云った。〝自分を皇帝にする〟と。それが今や実現してしまいそうなこの状況にルルーシュはグッと眉を寄せた。
「……何故、俺が…………」
 皇帝になど絶対になれる筈がないと幼い頃から解っていた。皇位継承権は二桁台。実質的に皇位は目指せないということを表している数字だった。それなのにこんな思ってもみなかった事態が訪れてしまった。皇位など必要無い。欲しいのはもっと別のもので、その殆どが既に潰えてしまった。残っているのはスザクだけだ。そのスザクさえ自分は裏切り、そして彼を傷付けた。今更彼に〝ずっと傍にいて欲しい〟などどの口が言えよう。
 それでも彼に抱きしめられて嬉しいと思ってしまった。もっとずっとその温もりを感じたかった。そんな風に願って良いような立場ではないはずなのに彼の言葉を嬉しいと思ってしまった。
 シャワーから流れる湯を止め、湯船に入ったままそっと息を洩らす。コードという力は強大だ。今は良いとしても何れその力は人を不幸にするだろう。そんな重いものを背負ってまで幸せになりたいと願うなどおこがましいものなのかもしれない。それでなくとも自分が多くの命を奪ったのは事実なのだ。
「……スザク…………」
 小さく愛おしい人の名前を口にする。彼は護衛という名目でこの浴室の扉の外に居るだろう。殺しても死ぬことのない自分に護衛など必要ない筈なのに、彼は自分の警護をするといって聞かなかった。
 一度だけ彼と触れ合ったあの時間はとても大切なものだった。譬えその時の自分の記憶が今の自分のものとは異なっていても、そのどちらをも彼は受け入れてくれた。だからこそ自分もあの時の自分を受け入れることが出来るのだ。そうでなければきっともうどうにもならないくらい苦しんでいたに違いない。
「ルルーシュ」
 不意に扉の向こう側からスザクの自分の名を呼ぶ声が聞こえた。ハッとして顔を上げると、曇り硝子の向こう側に彼の影が浮かび上がっていた。
「…………何だ?」
 本当はすごく動揺しているのにそれを悟られないように声を絞り出す。どうしてだろう。独りで居るこの空間は様々なことを思い出させ、そして考えさせ、不安が広がるのだ。
「…………さっき言ったこと、憶えてる?」
「…………何の、ことだ?」
 決して惚けている訳ではない。はっきりといつのことなのか言わないスザクが悪い。ルルーシュは先程のスザクの言葉を思い出す。

――離さないから

 もう絶対に離れたくない。そう囁いた彼の言葉を真正面から受け止めることが出来なかった。自分は彼のことを不幸にすることしか出来ない。それなのに彼はそんなことはないと言って微笑み掛けてくれる。
 ああ、どうしてこんなにも自分は弱いのだろう。彼の優しさにつけ込んで愛を得て安堵する。それでは駄目だと思う。もう出会った頃には戻れないと解っている筈なのにどうしても願ってしまう。〝もっと彼と学生生活を共にしたかった〟と。
「僕は君のことが好きだよ。だから君と離れたくないんだ」
「……スザク…………駄目、だ」
 それは果たして彼に告げた言葉なのか、それとも自分に言い聞かせた言葉だったのだろうか。
「それは君がコードを受け継いだから?」
「……それだけでは、ない。俺は多くの命を奪った。今更幸せになる資格なんてないんだよ」
 皇帝を殺したあの時、本当に死ぬつもりだった。それは死んで償おうと思ったからではない。ただ楽になりたかっただけ。生きることに疲れてしまったからもう生きている必要がないと思った。そしてスザクを利用した。それなのにこの結果は何だ。死にたいと散々口にしていたのに死ぬことすら叶わなくなった。
「ルルーシュ……」
 パタリと音がした。俯いていた顔を上げると、目の前には泣きそうな顔をしたスザクがいた。
「スザク…………」
「君は頑固だね。それに頭が良いからいつも難しいことばかり考えてる。でもそんなに考える必要なんてないと思うんだ。ただ僕は君が欲しい、それだけだから」
 付け加えられる〝好きだよ〟というその言葉に〝どうしてこんなにも真っ直ぐでいられるのだろう〟と思わずにはいられない。思えば自分とは真逆のような彼に出会った時から焦がれていた。
「資格、なんて必要ないよ。誰だって幸せになる権利は持っているんだから」
「…………スザ……ッん、」
 顔を上げてスザクの顔を覗こうとしたところで唇を塞がれる。突然のことに呼吸が上手くできずに息が苦しい。しかしすぐに解放され、乱れた呼吸を整える。
「ッ、スザク!」
「今は他のことは考えないで、ルルーシュ。ねぇ……僕のことが嫌いになってそれで厭がっているのなら今すぐ僕を追い返して」
 何て卑怯な言い方だろう。そんな風に言われてしまえば受け入れるしかないと解っている筈なのに。
「……良かった…………」
 ただスザクの眸を見詰めるだけで追い返す気配を見せないルルーシュの様子に安堵したようにスザクはそう呟いた。
「……狡いぞ…………スザク……。俺がお前を拒否出来ないと解っているのにそうやって……」
「でも、そうとでも言わないと君はずっと自分を責めるだろう? 責めるなら僕を責めて。これ以上独りで背負わなくて良いんだ」
 
――だから

 スザクはゆっくりとルルーシュの浸かる湯船越しに上体を屈ませ、もう一度口付けを贈る。啄むように優しく何度も。きっと自分を安心させようとしているのだろう。その心遣いが嬉しかった。
「っん、ん……」
 柔らかく押し付けられるそれは甘く、蕩けてしまいそうなものだった。
 素肌を撫でるようにして触れられ、更には湯に浸かっていることもあり、躯は簡単に上気していく。逃げるように背後へと躯を傾ければ、スザクは両腕を使って引き戻すように力を強めた。
「……スザ……っ」
 息継ぎするように彼の名前を呼ぶと、スザクは覗き込むように顔を見詰めてくる。そんな彼の眸の色がどんよりと暗いのはバスタブから上る湯気の所為だろうか。
「……ルルーシュ、君に触れたい……」
 コードを受け継いだ今、ギアスの暴走は有り得ない。それを彼は云いたいのだろう。過度の触れ合いを禁じ、ぎりぎりのところで留めてきた所為で、その想いは募り続けてきた。それはルルーシュも同じ。同じ想いを共有しているからこそ、その先の行為を拒むことが出来ない。
「……ッ、スザク。き、て」
 指先を伸ばし、スザクの襟足へと絡める。くるりとした手触りの良いその髪は柔らかくルルーシュの指を包み込む。スザクは焦がれたようにジャケットだけを脱ぎ棄て、濡れるのも構わずにルルーシュの躯をギュッと抱きしめた。
 もう片方の手はスザクの胸元へと這わせ、その心臓の鼓動を感じ取る。自分と同じようにドキドキと高鳴るそれを感じ、少し嬉しいような気持ちになる。暫くするとその手の甲の上からスザクの手のひらが重ねられ、ニコリと笑みを向けられる。
「好きだよ、ルルーシュ」
 いつの間にかズボンを脱ぎ去ったらしい彼は一瞬だけ抱きしめていた躯を離すと、バスタブの縁を跨いでルルーシュの向かい側へと身を沈めた。広い浴槽は二人で入っても全く狭くなどならないが、スザクはもう一度離れることなくルルーシュの躯を抱きしめ続ける。
「っん…………」
 今度は先程までの柔らかく労るようなものではなく、激しく奪うような口付けをほどこされ、ルルーシュは躯の奥からジンと疼くような熱を感じ始めていた。
 濡れた舌を絡め合わせ深く相手を味わう。スザクの上半身を覆うラウンズの黒いアンダーへと指先を忍ばせ、濡れてひたりと肌に張り付いたそれを脱がせてやる。現れた肉体は軍人らしい筋肉質なものだったが、それでも細身で単純に綺麗だと思った。
「ふ……っ、んあッ」
 気付けばスザクの指先が自分の胸元へと移動しており、平らなその場所を撫で回すように這っていた。思わず声を上げてしまったことに動揺していると、既に弱い刺激でぷっくりと勃ち上がっていた隆起へと更なる愛撫をほどこしていく。
「可愛い、ルルーシュ。まだ胸しか触ってないのに」
「ッ!」
 スザクに触れられるだけで体中のどこかしこもが敏感になってしまうのだから仕方がない。ルルーシュは負けずとされるがままだったのを押しとどめ、スザクの方へと躯を傾けた。そして片手を伸ばし、湯船の栓を外すとゆっくりと円を描いて湯が抜けていく。スザクは突然の行動に驚いたのか、きょとんとした様子でルルーシュの姿を見詰めていた。
「……こんなところでしていたらのぼせてしまいそうだ」
 それは困るだろう? そう続けると、スザクは困ったように苦笑した。
「うん、そうだよね。じゃあベッドに行こう?」
「あっ、おいッ」
 ふわりと躯が軽くなったと思えばスザクによって抱きかかえられていることに気が付いた。慌てたように手足をばたつかせるが、パサリと音を立ててバスタオルを頭から掛けられ、それも封じられる。水気が滴ったままだったが、スザクは寝室へと移動するとそのままベッドの上へルルーシュの躯を下ろした。そうして間を置かずにその上へと乗り上げてくる様子にどきりと胸が高鳴る。
 明かりを点けずにいた為に寝室を照らすのは窓から差し込む月明かりだけ。柔らかく心地の良い明るさは、スザクのことをぼんやりと照らし出す。
 そしてもう一度上から触れるだけのキスを落とし、そのまま彼は鎖骨や胸元、腹部へと辿るように印を残していく。
「っん」
 チクリとした甘い痛みが快感として拾われ、更なる熱として変化していく。既に勃ちあがり掛けているそれをスザクは手のひらで包み込むように掴んだ。
「やぁ……ッ」
 先端を刺激しながら上下に扱かれ、勢いよく反応を示すそれはとろとろと先走りの液体を零し始めていた。
「僕の手で気持ち良くなって、ルルーシュ」
 耳許に顔を寄せられ、囁かれる。甘さを含んだその声はいつもよりも少し低く、ゾクリと背が戦慄いた。
「んぁ……ッ」
 段々と速まる動きにどうすることも出来ずに悶えていると、不意に更なる刺激が訪れる。
「えっ、あっ、ああ……ッ、そん、なとこッ」
「ん、君も……以前してくれた、だろ?」
 僅かに躯を起こせばルルーシュ自身へと舌を這わせる彼の上目使いと視線が交わる。性器を口に含まれ、体験したことのないくらいの快感にギュッと目を閉じて耐える。
「あっ、ん、んん、ンッ、ふぁ……ッ」
 裏筋をなぞるように舌が這い、袋を揉み込まれるようにして愛撫される。内股が痙攣し、早く解放したいと躯が切望しているのを何とか押し止める。せめて出すのは彼が口を離してからだ。
「スザッ、出ちゃうから……」
「良いよ。出して」
「ダメだッ……汚い……っ」
 そう言って拒絶してもスザクは〝そんなことない〟と言い張り離そうとはしない。もう限界に近かった。チュ、と音を立てて吸い上げられ、絞り出されるように限界を迎えた。
「あ、あっ……あああッ……!」
 断続的に放出されるそれをスザクは全て口内で受け止め、そして吐き出すことなくどうやら飲み込んでしまったようだった。
「あ……おま、え……そんな……」
「君のものならば汚くなんかないし、こういうことが出来るのもすごく嬉しい」
 こんなにも自分のことを受け入れてくれるスザク。どれだけ大事な存在だろう。思えば助けられてばかりだった。出会った時だって彼が受け止めてくれなければ自分はとっくに死んでいた。

――そう、何も知らずに

 生きていたからこそ多くのことを知った。父や母の真実やスザクの愛。生きなければ知ることはなかった真実を。
「スザク……好きだ。お前のことを……愛してる」
 恥ずかしい台詞だな、と頭のどこかで自分が批評しているが、そんなことなどもうどうでも良い。こんなにも真っ直ぐに想いを伝えてくれる彼に他にどう伝えれば良いというのか。嘘偽りなく真っ直ぐに本当の気持ちを伝えなければ彼に対する裏切りのように思えて、今この瞬間だけは正直に気持ちを口にしようと思う。
「僕もだよ、ルルーシュ」
 再び下半身へと彼が顔を埋めたと思うと、今度は先程までよりも更に奥まった部分へと温かさを感じる。硬く閉じた蕾へとスザクが舌を這わせていることに気が付き、ルルーシュはパッと目を見開いた。
「そんなところ!」
「潤滑剤が無いからね。君に負担が無いように」
 唾液を落とし、指で塗り込めていく。過去に一度しか繋がったことのないその場所はやはり硬くその侵入を拒もうと跳ね返す。それでも根気よくゆっくりと指先を沈めていくと、柔らかくその場所を締め付ける。
 入り込んでくる指先に嘗ての行為を思い出し、ルルーシュは頬が熱くなるのを感じていた。
 どの部分が良くて、頭がおかしくなりそうになるのかこの身体はしっかりと記憶していた。そしてそれは恐らくスザクも。
「確かこの辺りだったよね」
 いつの間にか指一本を根本まで差し入れたらしい彼は、記憶を頼りにルルーシュの良い部分を探し出す。浅すぎず、深すぎないその場所を指の腹が撫でた時、思わずビクリと腰が跳ねてしまった。
「――あッ」
「此処、だね。ルルーシュ」
 集中的にその場所を攻められ、脚を閉じかけるが、スザクの腕によってそれは阻止され、更なる愛撫が続く。いつの間にか指の本数も増えており、一本が二本へ、二本が三本へと内壁を解していく。
 感じる部分をなぞられる度にキュウ、と強くスザクの指を締め付けてしまい、その所為かスザクは熱い息を吐き出した。
「……早く君の中に入りたい」
 早く繋がって一つになりたい。それはスザクだけの願いではなかった。
「ッん、俺だって……早く」

――お前が欲しい

 掠れた声でそう告げた次の瞬間、入り口に熱を感じ、息を呑む。
「そんなに、煽らないでよ」
 そう苦しげに言われても煽られているのはこちらの方だと思う。熱く脈打つそれをゆっくりと押し込まれ、その圧迫感に息を詰める。
「ッ…………!」
 段々と内壁を押し広げ、入り込んでくるスザク自身にルルーシュは息を吐き出しながら力を抜き、それを助ける。
 図らずともキュウ、と締め付けてしまい彼が更に膨張していく。
「……ッ、入ったよ」
 汗を垂らしながら全てが収まったことを告げるスザクにルルーシュは腕を回して抱きつく。
 それに応えるようにスザクもルルーシュの背へと腕を回した。
 密着する躯の間に障害は何もない。触れ合う肌と肌はお互いの熱を伝え合い、その絆を一層のものとする。
「ん…………ッ」
 暫く慣らすようにして動かず、口付けを交わし合い、その甘い心地の良い時間を堪能する。激しいだけではなく、労りの時間があるからこそ、相手の思いやりをより良く感じることが出来るのだろう。
 徐々に解れてきたところで、スザクはルルーシュの耳に熱い吐息で囁き掛ける。
「動いて、良い?」
 少し余裕が無くなった彼の声はそれだけで高みに導かれそうなものだった。口を開ければあられもない嬌声が洩れてしまいそうで、ルルーシュは頷いてそれを肯定する。
「うん、動くね……」
 スザクはゆっくりと腰を動かし始める。押さえられ、高く持ち上げられた脚はスザクの腰へと絡められていた。
「ふぁ、……ん、あぁ、アアッ!」
 グチュリ、と内部を蹂躙しながら往復するそれはルルーシュの奥や先程指で弄られた良いところを余すことなく擦り上げる。
「ひっ……やぁ……ッ、んンッ、アッ、スザクッ!」
 スザクの名前を無意識のうちに口にしていた。何度も、何度も繰り返し。
「ルルーシュッ、ルルーシュ!」
 同じようにスザクに何度も名前を呼ばれて、激しさが一層増す。ベッドの天蓋がふわりと揺れ、この行為の激しさを物語る。それでも抑えることなど出来なかった。
(もうすぐ最後かもしれないから……)
 本宮に移ることを決めた時、既に次の計画は頭を過ぎっていた。ジノはルルーシュに本宮に移ることを進め、スザクも渋々ながら同意した。本当ならば二人で何処かに消えてしまいたかった。しかしそれをジノが懸念する理由は解る。この国には現在指導者が一人も存在しないからだ。
 ニッポンと呼ばれる異国からやってきた少年スザク。彼はニッポンやブリタニアという国に振り回され、こうして生きてきた。とても危険な立場だったと思う。下手をすれば命を危険に晒し、それでも彼の味方はきっといなかったのだろう。そんな振り回される人生をこれ以上彼に送らせたくはなかった。安心して生活出来る本当の意味での故郷を彼に取り戻してほしかった。
「んっ、あ、スザクッ……」
 だからこそこれできっともうすぐ最後になるだろう。全ては上手くいく。だから少しの間だけで良い。ほんのもう少しだけその温もりを感じていたい。
 もうすぐお前を運命という呪縛から解き放つ。そうすればきっと自由になれるから。
「あっ、あっん……あああアァ!」
 再び限界を迎えたその身体はビクビクと痙攣すると、その熱を吐き出す。スザクもその直後、ルルーシュの中へと解き放った。

* * *

「……陛下、ご準備は?」
 顔を上げればそこには我が騎士枢木スザクの姿が。そして少し離れたところには同じく皇帝の騎士であるジノとアーニャがこちらへと視線を向けていた。
 謁見の間には多くの人々が集まっている。今日は皇帝が月に一度、定例の挨拶をする日である。既にアリエス宮でテロが起きたという事実は民衆に広がっている。厳重な警備をかいくぐり、テロリストたちが銃撃したと。しかしその場で死亡した貴族以外――皇族の誰が被害に遭ったのかは未だ現時点では発表されていなかった。そう、第九十八代ブリタニア皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの死すら今はまだ伏せられているのだ。
「ああ、新たなブリタニアの幕開け、だな」
「ええ、新時代が始まります」
 スザクはルルーシュの言葉に頷き、同意する。シャルル皇帝の時代は終わった。今までは侵略に侵略を重ねる強者だけが勝ち残る世界だった。しかしこれからは違う。
「さぁ、行こうか」
 黒の皇子と呼ばれた所以、漆黒の皇族服を脱ぎ、ルルーシュは純白の皇帝服を纏う。幾重にも布地を重ねられた重厚なそれは金糸と共に二色の宝石によって飾られ、煌びやかな印象すら与えていた。
 玉座へと向けて、一歩ずつその足を進めていく。人々の眼前へとその姿が映し出された時、彼らは息を呑んだ。
 そして玉座の前で立ち止まると、ルルーシュは僅かに口角を上げる。そうして澄んだ声色でこの状況を端的に言い表した。
「私が第九十九代皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです」
 紡がれた言葉に辺りは整然となった。しかし皇族に楯突く愚か者など一人もいない。それは先代の統治が余りに良く行き渡っていたということが証明された結果だろう。
「我が父にして第九十八代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアは我が兄である帝国宰相シュナイゼル・エル・ブリタニア、そしてその他の皇族達と共に先日のテロにより命を奪われた。そこで急ではあるが体制を立て直す為、唯一生き残ったブリタニアの血を引き継ぐ私が皇帝として即位することとなった」
 堂々と演説をするが、内心は吐き気で一杯だった。これでは父シャルルやV.V.の計画通りではないか。死んでも尚、父は自分を操るつもりなのか、と。これ以上決められた道の上を歩くなど誰が許容出来るだろう。コードを持った皇帝とは則ち倒れることのない皇帝。今は良いとしても何れは不老不死であることは明らかになってしまうだろう。
 もしかしたらシャルルはそれを狙っていたのかもしれない。そして自分を更なる絶望へと追い込み、ラグナレクの接続を実行させる。何という筋書き通りのストーリーだろう。もし、そんな未来を辿るのならば……。
 聴衆達のざわめきが一層広がる。この国のトップ二人が相次いでテロの標的となり命を落としたのだから。君主制であるこの国は誰かを王として据えなければ成り立たない。
 今までならば新たな王を決めるのに大きな内戦が起こってきた。だが今回は違う。ルルーシュ以外に皇位に就ける者がいないのだ。
「ナイト・オブ・ラウンズも先代を護る為、命を落とした者が多い。何れは新たに再編する必要があるだろうが先に紹介しよう、我が騎士枢木スザクを」
 脇から現れたのは今までの白い衣装を脱ぎ捨て、黒色に染まったスザクの姿。
「彼にはラウンズを超えるラウンズとしてナイト・オブ・ゼロの称号を与えよう」
 それはつまり皇帝の最も近しい騎士。それをラウンズとはいえ外国人から選んだルルーシュに人々は驚きはしたものの次第に盛大な拍手へと取って代わる。
「尚ナイト・オブ・スリーにはジノ・ヴァインベルグ、ナイト・オブ・シックスにはアーニャ・アールストレイムをそれぞれこの私も引き続き円卓の騎士として迎え入れよう」
「イエス、ユア・マジェスティ。オール・ハイル・ルルーシュ」
「オール・ハイル・ルルーシュ!」
 繰り返し新皇帝を讃える言葉にルルーシュはそっと瞼を伏せた。

 定例の挨拶を終えると、ルルーシュは皇帝の執務室へと移る。そこに三人の騎士たちも集まっていた。スザクは執務室の事務用の机を間に挟み、反対側に座るルルーシュへと目を向ける。
「これで満足か? ジノ」
 その声色は冷たいものでスザクは思わずルルーシュの顔をジノの顔を見比べてしまう。
「ええ、これで暫くはこの国も持ちこたえるでしょう。あなたが皇帝になることを望んでいないことは知っています。それでも誰かが上に立たねばこの国は潰えます」
 確かにそうかもしれない。支配されることに慣れすぎた臣民達に民主化を訴えてもきっとすぐには実現しないだろう。
「……そうかもしれないな」
「お願いします、ルルーシュ様。中華連邦が遂にニッポンと組み、侵略に躍り出ようという情報が入ってきています。大宦官は何とか追い出したようですが、天子をまつり上げる者達の中には強行派が少なくないのも事実です」
 そうなれば遂にブリタニアと中華――世界を大きく巻き込んだ戦いになる可能性も否めない。いやきっとそうなるのだろう。ジノはそれを危惧している。此処で指導者がいなくなれば中華連邦にとってはまさに好機。ブリタニアという国を丸ごと支配化に置き、EUを差し置いて世界のトップとして君臨することになるだろう。
「宣戦布告は為されたのか?」
「いいえ、今は未だ。しかしもうすぐ正式な声明が発表されることでしょう。天子を再び実質的な最高君主とさせた武官、黎星刻は確かに頭の切れる男でしょう。しかし彼一人で大宦官を落とすのは不可能。恐らく他の誰かと手を組んだとしか思えません」
「それが強行派だと……?」
 ルルーシュはジノの言葉に対し、訝しげに眉を顰めた。
「ええ、私はそう思っています」
 ジノは慎重にそう意見を述べる。ルルーシュは優秀だが、ジノだって馬鹿ではない。中華連邦の動向に詳しい彼がそう言うのだから信憑性は高い。
「……ふむ、それならば中華がブリタニアを攻めるのは今が狙い目か。統制の整わないブリタニアは烏合の衆に過ぎなくなると奴らは読むか?」
「それはあなたが政権を放棄した場合。このまま陛下の力を揮っていただければそれは杞憂となるかと」
 高い統率力を持つルルーシュが本気を出せばきっと中華連邦を返り討ちにすることも出来るだろう。これは彼を愛する余りの盲目ではなくナイト・オブ・ラウンズとして彼の手腕を見てきたところによるものだ。
「ふ、お前は俺のことを買いかぶり過ぎだな」
 ルルーシュは呆れたように惚けてみせる。しかしスザク自身もルルーシュの軍事的采配能力は非常に優れていることを知っているし、ジノの言葉は決して買いかぶりではないと思う。
「僕も……君しか今のブリタニアを統率出来る人はいないと思う。出来ることならば僕はやりたくないと言っている君に無理をさせたくない。けれども状況がそれを許さないことも知っているから……」
「スザク…………」
「……もう動き出してしまったものは仕方が無いな。ジノ、中華連邦武官――黎星刻といったか? 明日、その者に連絡を繋げ。二人きりで話をしたいと、な」
 ルルーシュがようやく前向きな検討をみせたことにより、ジノの表情はパッと明るくなる。
「イエス・ユア・マジェスティ!」
 自分とルルーシュ、二人がいればきっと出来ないことなど何もない。そう信じていた。そしてこれからもそう信じている。だからルルーシュ、君も信じてほしい。自分自身の可能性と力を。
 ジノとアーニャが退室し、一人残されたスザクはルルーシュを真っ直ぐに見詰める。この数日間今日という日の為に準備に追われていたこともあり、そろそろ疲労もピークを迎えているのだろう。中華連邦の動きは注視する必要がある、V.V.も未だに見つかっていない。それでもルルーシュには休息が必要に思われた。
「ルルーシュ、大丈夫?」
 少し俯き加減で眉間を指で押さえるルルーシュのことを心配そうに覗き込む。スザクの憂慮の視線に気が付いたルルーシュは顔を上げ、眉を下げて微笑した。その笑顔もやはり疲れが拭えずに、少し苦しげにすら思えてきてスザクは目の前の机を回り込み、そして彼のすぐ傍まで接近した。
「……ああ、少し疲れただけだ。問題はない」
 だが、ルルーシュの疲労の原因はこの皇帝即位を発表式の準備だけではない筈だ。誕生会の時、自らをスザクに殺させようと考えるくらいに彼は病んでいた。そしてまだあの時から二ヶ月しか経過していないのだ。本当にルルーシュが大丈夫なのか心配だった。心配だったからこそ出来ればルルーシュにこんな無理をさせたくはなかった。
「……せめて今日だけはゆっくり休んで」
 スザクは椅子に腰掛けるルルーシュへと視線を合わせるように屈むと、下から彼を覗き込むように見上げた。すると紫紺の眸が細められ、柔らかな表情を描く。
「ありがとう、スザク」
 その細い指先がスザクの頬を撫でる。繊細な仕草にスザクはぞわりと背が戦慄くようなそんな気がした。
「…………だが、俺は……今、お前に触れたい」
「……ルルーシュ…………?」
 ルルーシュの言葉の意図を探ろうとスザクはその至高の紫玉をじっと凝視する。するとゆっくりとルルーシュの顔が迫り、気が付けば唇同士が重なり、触れ合っていた。
 深くも激しくもないただただ重なるだけの触れ合いだというのにスザクはドキドキと急激に鼓動が速くなるのを感じていた。暫くして余裕を取り戻すと、薄らと目を開け、至近距離の白皙の美貌を堪能する。彼の頬へと手のひらを重ね、こちらへと引き寄せる。
「……んぅ…………」
 ルルーシュは椅子に座ったまま前のめりになるようにスザクに引き寄せられ、少しだけ苦しげに呻いたが、それもいつの間にか深くなっていたキスに吸い込まれる。
「ん……ふ…………っ」
 唇を割られ、その隙間から舌を挿し入れる。ルルーシュは眉を寄せながら眸を閉じ、スザクとのキスを味わっていた。長い艶のある睫が頬へと影を落とし、その頬は薄らと桃色に染まっている。キスだけでこの艶やかさをみせるのだからこの先はどれだけ耐えるか、という我慢の話になるのは当然のことだろう。
「…………っ」
 唇をゆっくりと解放すると、お互いのどちらともつかない唾液で濡れた唇を指先で拭う。そんな彼の仕草に誘われて、スザクは彼の躯を軽々と抱きかかえた。
「あ……っ、スザク?」
 ふわりと羽根のような軽さで持ち上がる彼の躯にちゃんと食事を取っているのかと少々心配になる。ここのところ数々の準備に追われていたからルルーシュに付きっきりでいる訳にもいかなかった。彼は元々食が細い上に仕事に集中し過ぎる節があるからそういった面はしっかりと誰かがきっちりと管理していないと無理しすぎてしまう。
「…………良いの?」
 ルルーシュを執務室の大きな机の上に座らせる。そして確認するように目配せすると、ルルーシュはほんの僅かに頬を更に紅潮させた。
「…………察しろよ」
「うん、ごめんね」
 ルルーシュの言葉にスザクはきっちりと着込んだ白色の皇帝服のマントを手早く外し、椅子へと掛ける。そして首をしっかりと覆い隠すスタンドカラーの前を寛げ、彼の上体を押し倒した。その上に乗り掛かるような体勢で、首元に口付けを落とす。
「ん…………ッ」
 くぐもった声で応えてくれるルルーシュは本当に身体中が敏感だった。僅かな刺激でも大きく反応してくれるのを見るのが楽しかった。自分の愛撫でこんなにも感じ入ってくれるのか、とそう確認出来るのが嬉しかった。
「この服、着るのも大変だけれど脱がせるのも大変だね」
「俺のデザインにケチを付ける気か?」
 柳眉を寄せたルルーシュにスザクは笑顔で耳許に顔を寄せ、少しだけ常より低い声で囁く。
「いいえ、陛下。焦らされてますますあなたの魅力が引き出されるという話です」
「ッ、スザク」
 そんな恥ずかしいことを、とルルーシュは聞き取れないくらい小さな声で洩らすが、スザクの耳にはしっかりと届いていた。恥ずかしがる彼は何とも表現し難い程に可愛らしくて、愛らしい。
「可愛い」
 思ったことをそのままに告げれば更にそれは助長される。そんな悪戯のような言葉を仕掛けながらスザクは手早くルルーシュの身体を覆う白布を脱がしていく。
 露わになった肌は玉のような艶やかさで透き通るような繊細さをも併せ持っており、何度見ても、何度触れても慣れることのない妖艶さを醸し出している。
「男に可愛いとか言うな!」
 その高い矜恃すらもスザクを煽る。これらが全て無意識だということが怖いくらいだ。
「んっ、ン!」
 胸元を指先でなぞり、ぷっくりとした尖りへと辿り付く。薄く色付いたその場所は既にスザクに触られることを求めるように膨らんでおり、その期待通りスザクはそれへと指先を絡めた。
「あっ」
 動作一つずつに敏感に反応してくる彼の躯は愛し甲斐があるというものだ。顔を覗き込めば眉をグッと寄せ、ぎゅっと目を閉じ快感に耐えようとする彼の表情が目に入り、余計にこちらが煽られてしまう。
「だって可愛いと思うんだから仕方がないよ」
 そう洩らしながらも指先で撫でるように素肌の上を這いながら臍の窪みを経由し、下腹へと伝っていく。肝心な部分には触れず、服が汚れないようにとズボンだけを先に脱がせてしまう。脚を上げるとベッド代わりにしていた木製のデスクがキシリと鳴った。
「スザクッ」
 少し怒ったような様子すら可愛らしかったけれども、それを口にしたらまた怒られそうだったので、その辺りは黙っておく。
 ズボンを脱がせ下着だけを残し、スザクはその白い肌へと指を伸ばす。
「ん…………ッ!」
 内股の、柔らかい部分を撫でながら、太股を擦るように手のひらを這わせる。そしてその部分に顔を寄せて、唇を落とす。
 グイと両足を広げるように手で押さえ込みながら下肢へと口付けを落としていると、触れていないのにその部分がやんわりと隆起する。期待してくれているのだろうか。嬉しく思いながらそれでも直接にその場所へはまだ触れない。
「…………スザク……?」
 全く直接には触れてこようとしないスザクにどうしたのか、とばかりにルルーシュは首を捻る。
「……どうしてほしい?」
 そう訊いてやれば彼は頬を染めて黙り込んでしまう。恥ずかしいのだろう。太股がピクリと震えながら擦り合わせるように両足を寄せようとするが、スザクはそれを許さない。
「……ッ、そんなこと……ッ」
 口に出来るか、と言いたげだったが、スザクは惚け続ける。
「言わないと、解らないよ?」
「……云わなくても、解るだろッ!」
 彼の云う通りだった。それでも、スザクはわざと臍や脚の付け根だけを愛撫し、ルルーシュを焦らし続ける。
「くッ、……さ……触って」
 ようやく観念したのか、ルルーシュは泣き出しそうな表情でスザクを見上げた。
「何処に?」
「……………………俺の、ここに」
 ルルーシュはスザクの手を掴むと、やんわりと勃ち上がりかけた自身へと導く。顔を真っ赤に染めながらなされたその行動にスザクは満足すると、導かれたその場所を揉むように手のひらで下着の布地ごと包み込む。
「はっ、あ…………ッ」
 布地越しとはいえ、その場所を今度こそ直接に愛撫されたルルーシュはすぐにスザクの手によって高められていく。
 苦しげに押し込まれていた下着からそれを取り出し、手で扱きながらスザクはその更に奥まった場所へと指を伸ばす。
「い……あッ、んンッ!」
 グチュグチュと前から垂れる先走りが後ろへと伝い、それを絡めながら更に内部を蹂躙していく。
 暫く慣らすようにしていると、スザクは突然グイと腰を引き寄せられた。見ればルルーシュが脚でスザクの腰を挟み、躯を密着させていることに気が付く。
「……はや、く。お前が欲しい」
 掠れた声でそう告げられ、スザクは既に張り詰めていたそれを取り出した。
「僕も、はやく君の中に入りたい」
 熱い息を吐き出しながらそう告げれば、彼は口許だけ穏やかに緩ませた。
 そして導かれるようにして口付けを施しながらゆっくりと侵入していく。
「…………はぁ……あッ」
「く…………ッ」
 包み込まれる熱に、この幸せがいつまでも続けば良いと心から思った。
 そしてこの優しくて熱い、蕩けるような時間がいつまでも欲しいと、そう願った。

――でも、僕は気が付かないふりをしていたんだ

君が何かを隠していることには
僕だって本当は気が付いてた。
それでも何も訊かなかったのは、
君のことを信じていたからなのに。
ルルーシュ、どうして君はいつもそんなにも、
独りで全てを背負ってしまうの……?

僕は君のことを護り続けたいと願っているのに。

To be continued…

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