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Another Way1

GEASS LOG TOP Another Way1
約7,250字 / 約13分

「スザク、わたくしは…あなたをわたくしの専任騎士から解任します!」

僕が専任騎士をクビになった日

 ここは神聖ブリタニア帝国の第十一番目の属領――通称エリア11と呼ばれている。嘗ては独立した国家で日本と名乗っていた。しかし、七年前、突如として神聖ブリタニア帝国は日本に宣戦布告をした。それに徹底抗戦を唱えたのは当時日本国の首相であった枢木ゲンブ――僕の父だった。
 父は大国ブリタニアに日本の総力を上げて挑んだ。どう考えても勝てるはずがないことは子供心でも分かってしまっていた。そして、その時人質としてブリタニアから送られた皇子と皇女――ルルーシュとナナリーの殺害を企てた。そう、あろうことか僕の友達を殺そうと――。
 何とかして止めようと思った。けれどもその時思いついた解決法はたった一つ――父を殺すこと。迷っている時間はなかった。すぐにでもやらなければナナリーが死んでしまうところだった。
 それはとてもではないけれど、正しい解決方法とはいえなかった。僕は間違ってしまった。ナナリーを救うことは出来たかもしれない。だけれども、やってはいけないことをしてしまった。
 それから今までの間、僕は罪を償うために生きてきた。
 そしてユフィ――僕の主であるブリタニア帝国の皇女様に出会って……希望が見えてきた。そう、彼女と一緒なら……。
 彼女の勧めで編入したアッシュフォード学園では無事だったルルーシュとナナリーに再会も出来た。彼女と出会って全てが順調と云わざるを得なかった。彼女は女神か何かなのだろうか。そう思わずにはいられなかった。ただ一人《ゼロ》という邪魔者さえいなければ万事解決なのだが、きっとそれは多くを望みすぎというやつなのだろう。
 とにかくユフィの騎士となっておおかた順調だった筈だった、けれども……。

「…………え?」

 思ってもみなかった主の言葉に、僕は思わず惚けた声を出すことしかできなかった。
 ユフィに今何かおかしなことを言われたような気がするのは気のせいだろうか? うまく言葉が理解出来なかったのは僕がブリタニア語のネイティブでないからかもしれない。今では随分慣れたとはいえ、完璧という訳ではないから。でも、今の発言の音が取れなかった訳ではない。言葉は聞こえたが、意味が理解出来なかったというのが正しいかもしれない。
(アナタヲワタクシノセンニンキシカラカイニンシマス!)
 スザクは今、主に何と言われたかもう一度頭の中で反芻した。
「聞こえませんでしたか? あなたを私の騎士という任から解くと言ったのです」
 彼女は何を言っているんだろう。事態を理解するのにしばらく掛かったが、ようやく少しずつ言葉の意味を理解しつつあった。
「ど、どうして……ですか……?」
 何かやらかしてしまっただろうか。全く身に覚えがない……という訳ではないけれども。例えばそもそも僕は名誉ブリタニア人出身だし、彼女の姉であるコーネリア皇女殿下には嫌われてるっぽいし、体力しか取り柄もないし、書類仕事ではまるで役に立たないし、紅茶を淹れるのも苦手だし、それどころかこの前なんてちょっと溢しちゃったし、猫には確実に嫌われて引っかかれるし……結構上げてたらキリがない気がする。
「いえ、それは……今は私からは言えないんです」
「ですが……」
 今は言えないほど重大なミスをやらかしたのか。しかもそのことに覚えがないなんて……。もしかしたらクビだけでは済まない? 僕の焦る気持ちをよそにユフィは言葉を続ける。
「これは決定事項です。理由はあとでわかると思いますから……どうか今日は学校に行ってください。正式な通達は後日行います」
 そう言われてしまうと引き下がるしかない。専任騎士をクビになった僕なんて、ただのいち軍人に過ぎないのだから。
「……イエス、ユア・ハイネス」
 皇族に対する挨拶である最敬礼をし、スザクは踵を返して政庁にある副総督の執務室を後にする。幸い部屋では二人きりで、この不名誉な宣告を他の人に聞かれたという心配はなかったが、何れこのこともすぐに知れ渡ってしまうだろう。ユフィは皇女であり、このエリア11の副総督という重要な任についているのだから。
 でも、何でこんな重要な時に突然解任されることになったのだろう。猫の手がほしいと思うくらいに多忙な時期なのに。僕では猫の手にすらなり得なかったのかもしれないけれど。
 そう、まだ行政特区は始まったばかりだった。
 仮面の男《ゼロ》が行政特区に参加すると言ってきた。最初はブリタニア側もかなり警戒していたけれども、蓋を開ければゼロは協力的だったし、他の黒の騎士団のメンバーだって武装解除にも文句を言わずに応じてみせた。その様子を見ていた日本人たちは次々と特区への参加を決めていた。
 ユフィが何故あの正体不明で異母兄であるクロヴィスを殺した相手と手を組むなんて言い始めたのか今もまだ良くわかっていない。あの仮面といい、衣装といい、どう見ても怪しい奴なのに。
 でも、ユフィの目指す行政特区日本は僕の夢だった日本の独立の足がかりになるだろう。その点ではゼロが居ようが居まいがユフィと共に特区を成功させたいと思う。
 それならば尚更騎士を辞めるわけにはいかないと思うのに、何故ユフィは僕を突然騎士から解任したのだろう。
 とにかくユフィには今日は学校に行くようにと言われてしまった。確かに最近忙しくしていたから学校に行くのは久しぶりだった。

* * *

 久しぶりに教室に足を踏み入れると、ホームルームの時間の筈なのに教室はいつもよりざわついていた。
「みんなどうかしたの?」
「あ、スザクくん! おはよう」
 そう挨拶してきたのはクラスメイトで同じ生徒会のメンバーでもあるシャーリーだった。
「おはよう、シャーリー。今日の授業はどうしたの? 先生休み?」
 僕はこの教室の様子がいつもとは異なる理由をシャーリーに尋ねた。
「これから緊急の全校集会、皇帝陛下から何か重要な発表があるって」
「皇帝陛下から?」
「スザクくん何も聞いてないの? そういうのはスザクくんの方が詳しいと思ってたけれど」
「特にそういう訳じゃないんだ。僕は何も……」
 そう言いかけた時、後ろから声がした。
「おはよう、スザク、シャーリー」
 ルルーシュだ。僕の幼馴染であり、本来なら皇子として過ごしている筈だった人。閃光のマリアンヌと称された母をテロにより亡くし、妹のナナリーも脚の自由と光を喪った。そして彼ら兄妹は父である皇帝陛下に開戦前の日本に人質として送られた。
 僕たちはその先で出会った。
 この七年間、離れ離れだったけれど、テロ現場で再会。そこから再び離れてしまったけれど、ユフィのお陰で無事にまた再会することが出来た。
「おはよう、ルルーシュ」
「おはよう、ルルーシュくん……じゃなくて……ルル」
「今日は朝から学校なんて久しぶりだな」
 ルルーシュの言葉に僕は頷く。
「うん、今日は学校に行くようにってユフィが」
「……そうか」
 ルルーシュは何やら考え込むような仕草をして、それから僕の方へともう一度視線を向ける。
「集会があるんだろう? 早く行かないと先生に怒られる」
 ルルーシュに言われると、確かに周りにいたクラスメイト達は既に教室を出ていた。
「あ、そうだね、行こう。シャーリーもいつの間にかいなくなってるし。他人ごっこだって? いつまでやっているのさ」
「ああ……ちょっと怒らせてしまって……って、スザク……ッ!」
 一体ルルーシュはシャーリーに何をしたんだか。そんな風に思いながら僕はルルーシュの手を引いて体育館へと急ぐ。久しぶりに会えたのだ。手くらい繋いでも良いかな、なんて思ったりしながら。本当は僕が抱えて行った方が早いけれどそんなことしたら怒るよね?
「はぁ……はぁ、お前……ッ、早っ…」
 これくらいで息切れてて本当に体力ないなぁ。でも、それが可愛いところなんだけれどね。
 生徒たちは既にスクリーンの前に整列していた。スクリーンにはブリタニア国旗が映し出されている。僕たちは列の後ろの方にこっそりと隣同士で並んだ。
「間に合ったみたいだね」
「まぁな。別に俺は出席しなくても良かったのだが……」
 ルルーシュがそう言いかけた時、スクリーンが切り替わり、皇帝陛下の姿が映し出される。月に一度ブリタニアでは国内と属領に向けて皇帝の言葉が発信される。そこで新たな発表があることが多い。ペンドラゴンにいる貴族達はこの時、謁見の間に集められ、直接皇帝陛下のお言葉を賜わることが出来るらしい。
 隣にいるルルーシュを見ると、射殺さんばかりの表情で皇帝の顔を見つめている。
 そんなルルーシュのことを知ってか知らずか、シャルル皇帝は演説を始める。
『世界は、嘘に満ちておる。多くの者が人間は皆平等だと信じている。だが、それは嘘である。人は平等ではない! 生まれながらにして違う。人種も、生まれも性別も、能力も……皆平等ではないのだ。平等でないが故に我が娘、第三皇女ユーフェミアは……儂に願いを申し出た』
 ユフィが皇帝に? 一体何を?
『皇位継承権と《リ・ブリタニア》の名を返上する代わりに《ゼロ》に恩赦を与えよと……。そして行政特区日本を、ゼロと共に推進すると……!』

「ええええええッ!?」

「おい、スザク、落ち着け。静かにしろ」
 ルルーシュに口許を抑えられ、呼吸を落ち着かせる。
 ユフィが皇位継承権を、リ・ブリタニアの名前を返上したって? どういうこと!?
 はっとして周りを見ると僕は自分が注目されていることに気付いた。ユフィの騎士として知られている僕がこの発表に驚いていることに周りは驚いたのだ。騎士なのに、何も聞かされていなかったのか?……と。アイツ、ユーフェミア様の騎士なのに知らなかったのかよ! という声もちらほら聞こえる。が、弁明のしようはない。本当に知らなかったのだから。

『ユーフェミアはいちブリタニア人として新たな戸籍と名を得ることとなる。平等でないからこそ持つその権利、シャルル・ジ・ブリタニアの下に……認めよう……オールハイルブリタニア!』
『オールハイルブリタニア!』
 皆の掛け声が響き渡った。

 隣に居るルルーシュをちらと見たが驚いている様子はまるで無い。自分の異母妹が皇位継承権を放棄して自分と同じ立場になることに何も感じないのだろうか。それともまさか……事前に知っていた?

「大丈夫か? スザク」
 集会が終わるとルルーシュは僕に声を掛けてきた。
「お前……ユフィの騎士なのに知らされていなかったのか?」
 ルルーシュの言葉に僕は苦笑するしかない。
「実は今朝……ユフィに専任騎士、解任されちゃって」
「そうだったのか……。だが、ちゃんと理由を聞いていないなら彼女と話した方が良いだろう」
 ルルーシュは心配そうに眉を下げる。ルルーシュは僕に優しい。はっきりと表に出すわけではないが、いつでも心配してくれていることは知っていた。だからこそ、僕はルルーシュにこれ以上心配をかけたくないと思う。
「やっぱりそうだよね……?」
 ルルーシュの言葉に頷く。
「僕、もう一度政庁に行ってくるよ! ちゃんとユフィと話してくる!」
「ああ。俺は皇帝あいつの顔を見て気分が悪くなったからクラブハウスに戻るよ」
「うん、じゃあ」
 もう足はユフィのいるであろう政庁へと向かっていた。
「もし時間があればあとでうちに来い、話くらいは聞いてやる」
 後ろからルルーシュがそう言って声をかけてくれる。
「ありがとう、ルルーシュ」
 僕はルルーシュの言葉を嬉しく思いながら政庁へと再び向かった。

* * *

「おや〜スザクくんじゃないですか」
 振り向くとそこには見覚えのある長身が立っていた。スラリとした身体で白衣を纏い、眼鏡を掛けている。黙っていれば真面目な科学者に見えるのに、といつもこっそり思ってしまう。でも、天才な人ってどこか変わっているのかもしれないけれど。
「ロイドさん、こんなところでどうしたんですか?」
 いつもならだいたいアッシュフォード学園大学部を間借りして置いているトレーラーで作業していることが多いロイドさんが政庁にいるのは珍しいなと思う。
「ん~! コーネリア皇女殿下にちょっと呼ばれてねぇ。君こそユーフェミア様の騎士、解任されたんだって?」
「はぁ。そういうことみたいですけど……」
 正直まだ納得がいっていないということもあって、主体的ではない答えが出てしまう。ロイドさんはそんな僕を面白がるようににやにやと見てくるけれど、それは特にいつも通りな気もする。
「ユーフェミア様ももう、皇族じゃなくなっちゃったしねぇ」
 そう、皇族でないということは専任騎士は必要ないということで、つまりはそうなる前に僕のことをユフィは解任したということになる。でも、これからはゼロと行政特区日本を取り仕切るとか言ってたし、それは幾らなんでもユフィのことが心配だった。
「…………」
「ははぁ。その顔……君、知らされてなかったんだね~?」
 笑顔で図星をついてくるロイドさんの言葉を認めるしかなかった。僕は何も知らされていなかった。知り合いに出会う度に何で知らないの? と疑問を投げかけられるが、僕も何でこんなことになったのか知りたいと思う。
「……そうですけど……」
「ユーフェミア様なら今は政庁には居ないよ。僕はどこに居るか知らないけどね」
「いらっしゃらないんですか!?」
 ユフィは絶対ここにいると思ったのに。あてが外れてしまった。
「そうですか……」
 ロイドさんの言葉にがっかりしてしまう。
「うん、コーネリア皇女殿下がさっきそう仰っていたから確かだと思うけど?」
 でも、ユフィの行き先なんて検討がつかなかった。彼女の行動は突発的で、突拍子もなく、予測するのが難しい。
「あ、言っとくけど、君がユーフェミア様の騎士を解任されたからってランスロットのデヴァイサーであることは変わらないからね〜」
 忘れないでよ、と念を押すロイドさんに僕は頷く。
「はい……」
 僕はどうしたら良いのかわからず政庁を出た後、とぼとぼと歩き出す。そして別れ際にロイドが言っていたことを思い出す。

――ユーフェミア様はあの、ゼロの罪を帳消しにするために皇女の地位を退いたらしいよー。

 ユフィがそこまでして守りたかった……ゼロ……。彼は一体何者なのだろうか……。結局何も聞けないまま、もう会えないのだろうか……?
 そんなことを考えながら僕は目的もなく足を進める。答えなど幾ら考えても出てこない。そもそも考えることは苦手なんだ。
 そうして気が付けば僕はアッシュフォード学園に戻っていた。
 校門の前から校舎を見渡す。校舎の方では授業が行われているようだったが、ふとクラブハウスの方に目を遣ると、ルルーシュやナナリーの暮らす部屋に明かりがついている見えた。そういえば今朝、集会の後でルルーシュはクラブハウスに戻ると言っていた。

 うん、ルルーシュのところに行こう……。

 ルルーシュはいつも僕の話を聴いてくれる。学校での他愛もない話だけじゃない。僕が父さんを殺したことを知られた時も彼は黙って話を聴いてくれた。彼は僕にとって一番の親友で、初めての本当の友達だった。そして別れ別れになって七年経って再会した後も僕がそう思っていたことを変わらず受け入れてくれてた。
 でも……僕は、ルルーシュのことをただの親友とは思えなくなっていたことも認めざるを得なかった。僕は彼のことが好きだ。友達としてだけじゃない。ユフィに抱く敬愛という気持ちともまた違う。そう、同性同士でおかしいかもしれないが、彼に対して僕は《そういう気持ち》を抱いていた。
 自覚がしたのはいつだったか……。七年ぶりに再会してすぐのことだったかもしれない。

 とにかく僕はルルーシュに会いたかった。会って話を聴いてもらいたかった。ルルーシュがどんな反応をするか予想はできなかったけれど。もし、ユフィの騎士を続けられないのなら、僕が守りたいと願うのは……。
 クラブハウスに向かって走る。ルルーシュたちが住む居住区の玄関に着くとベルを鳴らす。咲世子さんに応対され、ルルーシュがいるか確認していると、咲世子さんが呼ぶよりも先にルルーシュが現れた。
「ああ、スザク。早かったな」
 ユフィのところに行くと言って学校を出てからそんなに時間は経っていない。そのことをルルーシュは言っているのだろう。
「うん……ユフィは政庁にはいなくて……」
「知ってる」
 ルルーシュは僕の言葉にそう応える。何故ルルーシュがそのことを知っているというのか。皆目検討つかなくて、僕は首を傾げてしまう。
「何で……?」
 そう思わず口に出してしまった疑問にルルーシュは眉を下げる。
「ユフィは今ここにいるからだ」
 そうして返ってきた返事にスザクは驚かざるを得なかった。
「ええええええっ!?」
 此処にユフィが? ユフィはルルーシュとナナリーが生きていることを知っていた?
 様々な疑問が僕の中で渦巻き始める。そうして考え込んでいる僕に、ルルーシュに「とにかく部屋にあがれ」と言い、それに従って居住区の部屋に入った。
 リビングまで来ると、テーブルでお茶を愉しむナナリーともうひとりの見覚えのある姿が。
「あら、スザク」
 ユフィだ。ルルーシュの云うように本当に此処に彼女がいた。
 スザクは元主に何と声を掛ければ良いのか分からなかった。
「ユフィ、何で……」
 そして振り絞って出てきた言葉はただの疑問で、完全に現実について行けてなかった。
 それなのに、ユフィは更に僕を混乱させるのだ。
「私、決めました。今日から私は……私は、ユーフェミア・ランペルージになります!」
 そこには微笑む元皇女が居た。

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