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Another Way3

GEASS LOG TOP Another Way3
約10,074字 / 約18分

 ユーフェミア・ランペルージ!? ユフィ、君は一体何を考えているんだい!?

転校生は元皇女様でした

「おい、ユフィ、突然君は何を考えているんだ!?」
 ルルーシュも何も知らなかったようで、彼は驚いたように声を上げる。
「ですから、私の新しい姓の話です! 好きな名前を名乗っていいと云われているので、ランペルージにしようかと」
 そう高らかに宣言するユフィにルルーシュは焦ったように反対する。
「な、何を云ってるんだ、ユフィ。俺たちの繋がりがばれたら……」
「だってどうせ新しい名前を名乗るならルルーシュとナナリーと同じ姓を名乗りたくって! 駄目……ですか?」
 眉を下げながらユフィはルルーシュの瞳をじっと見つめた。
「いいじゃないですか、お兄さま。何だか昔に戻ったみたいで」
 ナナリーの優しい微笑みでルルーシュは渋りながらも頷く。

「あの……僕……話が見えないんですけど……」

 一体どういうことなのだろう。ユフィはルルーシュとナナリーが生存していたことを知っていた? それに居場所まで。
 眼の前で繰り広げられているやり取りに全くついていけない。そんな中、ナナリーが僕へ向かって微笑みかける。
「スザクさん、お兄さまがゼロなんですよ」
「へぇ、そうだったんだね。ルルーシュが……って、えええぇっ!?」
 あまりにもさらりと告げられた言葉に僕は更に混乱する。
「ナ、ナナリー、お前……」
 突然大きな秘密を最愛の妹によってバラされるというイレギュラーにルルーシュのいつものポーカーフェイスは完全に崩れ、かなり動揺している。
「お兄さま、スザクさんとちゃんとお話した方が良いと思いますよ」
 そしてナナリーの言葉は正論だった。
 ルルーシュがゼロだった? ナナリーもユフィも知っていたということなのだろうか。僕だけ何も知らされていなかった……確かにクロヴィス殿下殺害の犯人に仕立て上げられ、ゼロに助け出された時、彼の差し伸べた手を振り払ったのは僕だ。でも、そのゼロがルルーシュだったなんて……。
「そうだね、僕も詳しいことを聴きたいな」
 今まで戦ってきた相手があの護りたいと願い続けてきた彼だったなんて……。確かに云われてみれば薄っすらどこかでそうかもしれないと考えてしまったことはあったけれども……でも、それが本当に真実で、ゼロのことを認められない部分が僕の中には確かにあって……それで……僕は君に何と云えば良いのだろう。
「スザク……だが、お前はブリタニアの軍人だ。でも、俺は……ブリタニアを……」
 ルルーシュはブリタニアを恨んでいる。それは知っていた。一体ブリタニアで何があったのか。彼は詳しいことはずっと語ろうとはしなかった。ただ僕が知っているのはルルーシュとナナリーのお母さんがブリタニアで亡くなったということ、そして彼らの父である皇帝陛下が二人を日本へと送ったということだけ。
 あの当時の日本にブリタニア人が行くということは殆どないことだった。ブリタニアとは一触即発、そんな状態の日本に行くなんて自殺行為に等しかった。そんな状況に陥った原因となるブリタニアを彼らが恨むのは理解できる。
「君がブリタニアを憎んでいるのは知っているよ。君は昔僕に云ったよね。《ブリタニアをぶっ壊す》と。僕はそのことを忘れてなんかいないよ。でも、僕はこれ以上無意味な暴力を振るって悲劇を繰り返したくないんだ。外側から壊すようなやり方じゃなくて……」
 それに僕は父を殺した。その償いでもあるから。
 ルルーシュは僕の言葉を聴きながらそっと瞼を伏せた。お互いに目指すところはもしかしたら同じではないかと思う。でもそれぞれが考えていたそこにたどり着くまでの過程が全く違うものだったという、ただそれだけのことだったのかもしれない。
 でも、ユフィのお陰で今はお互いに同じ道を歩んでいるのだと信じたい。今は僕やユフィと共にゼロ、つまりルルーシュも特区を成功させようと奮闘しているのだから。
「全く……スザク、お前もユフィと同じことを云うんだな」
「そうよ。私達はルルーシュ、あなたとナナリーと一緒に居たいの。このままあなたがブリタニアに叛逆すればゆくゆくはナナリーとも離れてしまうことになるでしょう? そんなの私、嫌だわ。私はまたみんなで笑って暮らせる場所を作りたいから」
 ユフィの気持ちは僕と同じだった。みんなで笑って暮らせる場所を作りたい。その為に僕も今までブリタニア軍で過ごしてきたのだから。
「そうです。お兄さま。私はお兄さまと離れたくなんてありません。お母さまを亡くし、更にお兄さままでいなくなってしまったら……ナナリーは一人ぼっちになってしまします。幾ら優しい世界になったとしても……お兄さまのいない世界なんていりません!」
 ナナリーも必死で兄に語りかける。
「お兄さま、ユフィ姉さま。私、行政特区に参加しても、皇族に復帰したって良いと思うんです。もちろん今すぐにとはいかないですけれど……あの頃とは違うんです。私とお兄さまで、いえ、ユフィ姉さまやスザクさんだっているから、みんなで力を合わせれば……何だって出来ると思います!」
「……ナナリー……」
 ナナリーの覚悟にルルーシュは言葉を喪ってしまったようだった。彼にとってナナリーは護られるだけの存在だったかもしれないけれど、ナナリーにだって意思はある。
「ねぇ、ルルーシュ……聴かせてほしい。君がどうしてゼロになったのか。これからどうしていきたいのか」
 僕は訊かずにはいられなかった。ルルーシュがこれから何を目指そうとしているのか。それは本当に僕やユフィの目指していた世界と同じかどうか。
「……わかった」
 ルルーシュはついに頷いた。ルルーシュが本当は何を考えていたのか。どうしてゼロになったのか。知りたかった。だって僕は……。
「では私達はナナリーの部屋に行っていますね。ルルーシュはスザクと良く話し合ったほうが良いと思うので」
「ごゆっくりしていってくださいね、スザクさん」
 ユフィとナナリーはそう云って部屋を出ていってしまう。二人が僕らに気を遣ってくれてありがたかった。きっと彼女らの前では話しづらいこともあるだろうから。
「それで……君が本当に……ゼロなの?」
 僕はもう一度確かめるように彼に訊ねる。直接彼の口から真実を聴きたかったから。
「……そうだ。俺がゼロだ。……黙っていたのは悪かった。だが、お前のあのランスロットとかいうナイトメアのパイロットだということを黙っていただろう!? ……軍にいること……心配してたんだ。技術部だから大丈夫と云っていたが、お前、最前線で戦ってたじゃないか!」
 ルルーシュの云うことも尤もだった。お互いに秘密を持っていた。そして知らずの内に敵同士として戦っていた。お互いそれぞれ護りたいと願っていた相手だったのに。
「そう……だよね……。君とナナリーに心配を掛けたくなかったんだ。でも、敵だと思って戦っていた相手が――ゼロが……君だったなんて。あの時……僕がクロヴィス殿下殺害の容疑者になった時、君は僕を助けてくれたんだよね?」
 そう、ゼロはそこで僕を仲間にならないか、と勧誘した。だけれども断ってしまった。もしかしたら君は僕をゼロの華々しいデビューを演出する為に利用しようとした訳ではなくて、本当に助けたいと思っていてくれたのかな? ルルーシュがゼロだと知る前まではずっと利用されそうになっていたのだと思っていたけれども。
「ああ、俺がしたことが原因でお前が捕まってしまった訳だし、折角生きているとわかったお前が処刑されるなんて絶対に許せなかった。お前は……俺の大切な友達だから……」
 ルルーシュは俯きながらそう告白する。僕はようやくあの時のゼロの意図を知ることが出来た。ルルーシュは心から僕のことを心配し、助けてくれたのだ。顔を出さずに僕のことを助け出す方法が《ゼロ》だった――。
 そしてルルーシュも僕もお互いのことを護りたいと思っていた。しかし、それが逆に対立する原因になっていたことには気が付かなかった。
「ルルーシュ……僕は……君を護りたい。君のことが大切なんだ。新宿で君が殺されそうになった時、絶対にそれだけはさせないって思ったんだ」
「俺だってスザクが撃たれたあの時、そうなった原因であるクロヴィスを許さないと思った。それで俺はクロヴィスを殺したんだ。お前がクロヴィスの親衛隊に殺されたと思って……」
 ああ、僕たちは互いのことを想いすぎて、逆にすれ違ってしまっていたのだ。
「お前が無事だとわかって、一緒にアッシュフォード学園にも通えるようになって。俺はお前にナナリーの騎士になってほしいと云おうと思っていた。でも、お前はユフィの騎士になってしまって……」
「……僕が、ナナリーの騎士に?」
「ああ……」
 ルルーシュの言葉に違和感を覚えてしまう。ナナリーの騎士になろうと考えたことはなかったから。だってナナリーはいつも君が護っていたし、ナナリーの騎士(ナイト)は絶対ルルーシュだと信じて疑っていなかった。
 だから僕が護りたいのは……。
「ねぇ、ルルーシュ。君は特区に参加するの? 皇族に復帰する? それとも今まで通りゼロを続けるつもりなの……?」
 僕は君と……。
「俺は……」
「ねぇ、ルルーシュ。僕は前に父親を殺したって云ったのを憶えているよね?」
「……ああ」
 マオという男によって暴かれた僕の真実。ルルーシュには知られたくなかったことだったけれど、でも、ルルーシュが自らの秘密を僕に話してくれた今、僕も隠し事なんて出来なかった。
「僕はずっとそのことに対して罰を受けたいと思ってきた。だから軍務で死んだとしてもそれはそれでいいと思ってたんだ」
「……スザク、……だがそれは俺たちを助ける為……だったんだろう?」
 確かにそうかもしれないけれど、僕は自分の犯した罪をルルーシュやナナリーのせいにはしたくなかった。
「……僕がそうしたかったんだ。だから罪を償いたいと思ってきた。でもね、今は違う。君を、ナナリーを、守りたい。君だってクロヴィス殿下を殺したことを後悔しているんでしょ?」
 同じだからわかる。血縁者を殺すということがどれほど苦しくて、辛いことで、可能であればそうならないようにやり直したいと何度も思ってきたけれど。
「俺が幾ら懺悔したとしてもクロヴィスを殺したのは事実だ。それに他の大勢も」
 後悔して、罪を償いたいと願って、その為に全てを犠牲にする。確かにそういう道を辿ることは出来るけれど。
「そうだよ。だから、君が犠牲にした人たちの為にも君には住む人に優しい世界を創る義務があると思うんだ」
 過去ばかりに捕らわれずに償えるような希望の持てる未来を創りたい。そう願うことは赦されないことだろうか。
「俺……が?」
 ルルーシュはキョトンとした風に首を傾げてみせる。
「君と僕とでなら、出来るよね?」
 僕らが力を合わせれば出来ないことなんてきっとない。
「……スザク、お前が隣にいてくれれば……」
「僕だけじゃない、ユフィやナナリーだって」
「ああ」
 みんなで協力すればきっとうまくいくから。
「だからゼロじゃなくて……ルルーシュ、君に特区日本に参加してほしい」
 ルルーシュは少し考えるような仕草をしてから自身に言い聞かせるように軽く頷く。
「わかったよ。ではこうしよう。俺は皇族に戻るつもりは無い。だが、特区には参加する」
「本当に!?」
 ルルーシュが特区を本当に認めてくれたような気がして嬉しかった。僕とユフィはルルーシュとナナリーに参加してほしいからこそ、行政特区を作ったといっても過言ではないくらいだったから。
 日本の独立の足がかりとなるかもしれない行政特区にルルーシュとナナリーが参加してくれればブリタニアの手が及びづらくなるだろう。そうすれば彼らの身の安全が保たれるはずだ。
「ああ、だが学園は辞めないからな。卒業するまでは名前だけの参加にする。それで良いか?」
 アッシュフォードと行政特区は物理的な距離が離れているからルルーシュが云っていることはもちろん理解できる。
「うん、充分だよ。ありがとう」
「ナナリーも一緒に。せめて中等部は卒業させてやりたいし」
 ゆくゆくは行政特区内にも学校やその他必要な施設は充実させたいけれども、それには少し時間がかかるだろう。それに別の学校に通うとなると転入手続きが必要になるし、ナナリーの卒業を待つのがベストな選択であるのはもちろんだった。ルルーシュは彼女のことがいちばん大切だからそう云うのも頷ける。でも…‥。
「ねぇユフィは?」
 ユフィのことが気がかりだった。だって彼女だって学校に通いたがっていることは知っていた。決して口には出さないけれど、まだもっと学校に通いたかったのだろうと思う。
「ああ、お前が思っていることは大体分かる。ユーフェミアは一般人になるには顔を知られすぎている。だが、ユーフェミアもそれは重々承知だろう。変装なり何なりする必要があるだろうな」
「ユフィ……ずっと学校を辞めたことを後悔しているみたいなんだ……。決して僕には云わないけれど」
 だから、もし可能なら、彼女はもう皇族ではないし…‥。
「何だ?」
「うん……ねえ、ルルーシュ。ユフィがアッシュフォードに通うことは出来ないかな?」
 きっとこれは難しい願いだろう。でも、訊かずにはいられなかった。彼女は僕の願いを叶えてくれた人だから。
「はぁ? な、何を云っているんだ、スザク」
 まぁ思ったとおりの反応ではあるのだけれど。みんなで同じ学校に通うのは難しいよね?
「だからといってアッシュフォードは無いだろう! 俺たちの素性がばれる!」
「まあ事態が落ち着いたら他の学校になら通うことが出来るかもしれないが、きっちりとした警備体制のあるアッシュフォードとは別の名門校でないと」
「……だよね……でも、ありがとう」

* * *

 出会った時も皇女だって名乗った時も、僕を騎士に決めた時も、特区を決めた時も……僕を騎士から解任したときも、いつも。いつも。いつも。
 君はいつもいきなりだった。
 そして、この状態は一体何なのだろうか。
 僕はただ、呆然とするばかりだった。

――三日後

 チャイムの音が鳴り、担任教師が教室に入ってくる。ユフィの騎士ではなくなってからも引き続き特区には関わらせてもらっていたからしばらく忙しさが続いていた。その為、学校に来るのは数日ぶりといったところだ。
「今日は転校生を紹介する」
 僕自身も最近転校してきたばかりだけれども、そんなにすぐに転校生が入ってくるものなのだろうか。日本の学校ではそう頻繁に転校生なんてこないけれど、ブリタニアの学校ではそうでもないのだろうかと思いながら、新しくこのクラスに入るという転校生が教室に入ってくるのを待つ。
 教室はざわめいている。どんな子が来るのだろうとかかっこいい男の子だったらいいな、だとかそんな声が周囲から聞こえてくる。新たにクラスに加わるメンバーに興味津々といった様子だった。確かにそんな風にわくわくする気持ちもわかる。新しい友だちが出来るのはきっと楽しいことだから。
「ほら、静かに。では紹介しよう」
 様々な憶測が教室内で飛び交うが、それも担任の教師の言葉と共にすぐに静まり返る。コツリと鳴った靴音と共に転校生と思しき少女が入ってきた瞬間、教室の時間が止まったように思えた。
 優しい桃色のふわりとした髪、少し下がり気味の眉に柔らかく微笑む藤色の瞳。

 え、っ何で?
 僕の頭には疑問しか浮かばなかった。だってそこにいたのは……。

「はじめまして、私の名前はユーフェミア……、ユーフェミア・ランペルージです。今日からよろしくお願いします!」
 そこには黒板の前で自己紹介をする元・主の姿があった。
 僕は慌ててルルーシュの方を見たが、彼はどうやら寝ているようだ。上手く隠してはいるが、何度も見慣れていた僕にはわかった。

 ちょっ……ルルーシュ!!!!! 寝てる場合じゃないって!!! ユフィが教室に居るんですけど……!?
 え、もしかして知らないの僕だけだったりとかしないよね!?

 そんな風に勘ぐりたくもなってしまう。だって、こんなの聞いていないのだから。

「……あれ? あの子どこかで見たことある気がしない?」
 クラスメイトの一人が首を傾げる。それに同意するように数人の生徒たちが頷いている。それはそうだ。彼女はこのエリアの元副総督であり、行政特区日本の責任者でもある。それ以前に元皇族で、有名人だ。
「えっとどこだっけ?」
「何か名前も聴いたことがあるような……」
「そんなの、どうでもいいじゃん? それよりめちゃくちゃ可愛いよな、転校生」
「でもさ、今ランペルージって言ったよね?」
「まさかルルーシュくんと関係ある?」
 一瞬の静寂の後、クラスメイト達は口々に転校生について口にする。そして彼女は教室を更にざわつかせる一言を発した。

「私はそこにいるルルーシュ・ランペルージの妹です」

 えっ!?、それって……!
 良いの!?
 大丈夫なの!?
 ちょっと……ルルーシュ!!

 僕の頭の中は完全に混乱していた。

「ん……、何だ? ユ、ユーフェミア……!?」

 眠たそうに目を擦りながらぼんやりとしていたルルーシュは目の前の存在に気がつくと、彼にしては珍しく動揺した声を上げる。
 ルルーシュもやっぱり知らなかったんだよね……?
 でも、何でみんなユフィが元皇女って気が付かないの?
 様々な疑問が頭に浮かぶが、ユフィは何一つ気にしていないようだった。

「……何で……?」
 それは彼らしからぬ惚けたような発言だったが、この場合仕方がないと思う。ユフィは何もかもが僕たちの想像の斜め上の行動を仕掛けてくるのだから。
「転入してきたんですよ、ルルーシュお兄さま」
 ニコリ、と微笑んでみせる彼女にクラスメイトたちが騒ぎ出す。
「おい。ルルーシュ! お前ってナナリーちゃん以外にも妹がいたのかよ!?」
「しかもあんなに可愛い!」
「さすがルルーシュくんよね〜」
 クラスメイトたちの声が教室内に飛び交う。皇族は皆顔が整っており、要するにその地位ではなく、見た目だけでも人目を惹くような存在だ。そんな人達がこの学校に三人もいれば、クラスメイトたちが騒ぐのも無理はないけれど。
「え、あ……ああ」
 クラスメイトたちの声に圧倒されたように彼は中途半端に同意する。
「お父さまに頼んじゃいました! 学校に通いたいって!」
 頼んだって、あのシャルル皇帝に!?
「は……?」
 ルルーシュも予想外の人物が関わっていることを知り、首を傾げている。
「だから通えるようにしてくださったんです。ルルーシュお兄さまが学校をお休みしている間に」
「ま、まさかあいつは俺たちのこと……」
 皇帝陛下はルルーシュとナナリーの生存を知っている? だとしたらとてもそれは危険なことかもしれない。
「いえお父様には内緒です」
 てへ、と笑って云うユフィ。そんなことって出来るのだろうか? と僕は疑問に感じてしまうが、ルルーシュとナナリーが今のところ無事な様子だから彼女の云う通りなのだろうか。
「だ、だがユフィ、君は俺より一歳年下の筈だろう? 何故俺と同じクラスなんだ!?」
 そういえばそうだ。ルルーシュに指摘されて僕も気が付いた。突拍子もない展開だったから云われなければ気が付かないところだった。
「それもお父様に頼んだら理事長を説得してくれたみたい!」
 説得って……来たんですか!? 皇帝陛下が此処に……?
 だ、駄目だ……僕にはユフィが何を考えているか解らない……。思えば初めて会ったときは猫と喋りだしたし……。

 僕は初めて出会った時のことを頭に浮かべた。空から降ってきた少女。あの不思議な彼女は本物のお姫様だった。そしてそんな彼女に自分は騎士に任命された。
 ついこの間あっさり解任されたが……。

「あの、そろそろ良いか? 授業を始めるぞ!」
 騒がしい教室の中、担任の声で授業は再開された。

* * *

 授業が終わるとユフィの周りには女子も男子も関係なく集まっていった。

「ユーフェミアさん、どこから転校してきたの?」
 一人のクラスメイトがユフィに話しかける。それにニコリと笑って応じるユフィ。彼女は久しぶりの学校生活を楽しんでいるようだった。
「ユフィでいいわ。少し前に本国から来たんです!」
「へーそうなんだぁ~! ルルーシュくんとは本当に兄妹なの!?」
「ええ! 母親違いですがルルーシュは私のお兄さまよ。ずっと離れ離れで暮らしていたんですけれど、このまえ七年ぶりに再会したんです!」
 ここまで話しているのに誰一人ユフィが元皇女だということに気付きもしない。そのことはルルーシュも疑問に思っているようだが、気が付かないのなら都合が良いのかもしれない。ユフィもこの学校を気に入っているみたいだし。
「ユフィ、ちょっと良いか?」
 ルルーシュは後ろからユフィに声を掛ける。
「ええ、何ですか? ルルーシュお兄さま!」
「スザクもちょっと……」

 そして僕らはクラブハウスへと向かった。
「これはどういうことだ!? ユフィ!!」
 いつもは感情を表に出すことが少ないルルーシュもさすがに少し怒っているのだろう。クラブハウスに到着するとルルーシュはユフィに訊ねた。
「何ですか?ルルーシュ」
 ルルーシュは恐らくユフィの真意を確かめようとしているのだろうが肝心のユフィには全く通じていないようだ。
 きょとんとして首を傾ける彼女に僕には不安しかなかった。

「皇帝は俺たちのことを本当に知らないのか!?」
「ええ、私話していませんもの。好きな人がこの学校に居るからここへ入りたいって言ったんです!」
 ユフィの思わぬ言葉にルルーシュは目を見開く。
「……好きな人?」
「ええ! 勿論ルルーシュのことですが……お父様はスザクのことだと思ったみたい」
 笑顔で言うユフィ。僕、皇帝陛下に何か勘違いされてる……?

「お、おい……それは……」
 ルルーシュがユフィに何かを訊ねようとした時だった。リビングの扉が開く。
「……あら? お兄さまたち帰ってらしたのですか?」
 ナナリーだ。彼女は咲世子さんに車椅子を押されて部屋へと入って来た。すぐに咲世子さんは軽く会釈すると部屋を去っていく。
「ああ、ナナリー……今帰ったところだよ」
 ルルーシュはナナリーにニコリと微笑んでただいま、と告げる。
「おかえりなさい、ユフィお姉様も。それにスザクさん、いらっしゃい」
 にっこりと微笑むナナリー。
「ユフィお姉様、学校はどうでしたか?」
 ナナリーはユフィに学園のことを訊ねる。
 ナナリー……君、ユフィが学校に入ること……知ってたの!?
 ルルーシュも僕も知らなかったのに!
「楽しかったわ。良い学校ね!」
 まるでそれが当たり前かのようにユフィはナナリーに学園の感想を述べる。
「な、ナナリー知ってたのか!? ユフィがアッシュフォードに入ったこと……!?」
 ルルーシュは驚いてナナリーに確認する。
「ええ。私が勧めたんです! ユフィお姉様がお兄様と一緒に居たいって言うから……! むしろ私も中等部ではなくお兄様と同じ教室に居たいくらいです!」
 まさかの回答にルルーシュは沈黙してしまった。
「…………」
 ルルーシュをそんな風に黙らせるなんて、さすがナナリー。でも、実の妹である二人ともルルーシュのことを……?

 ぼ、僕も負けてられない……! よし、今日こそ僕もルルーシュに……!
「ルルーシュ……あの……」
 僕はどさくさにまぎれて思いを伝えようとルルーシュに向けて話しかける。

 言うんだ! 枢木スザク! 僕も君と一緒のクラスで嬉しいよ……って!

「何だ?」
 ルルーシュは僕の方をじっと見つめる。やっぱりいつ見ても彼は綺麗で、抱きしめたくなってしまうくらい僕は君のことが好きになってしまっていた。

 僕は覚悟を決めて口を開いた。同性同士だし、親友だし、なかなか云いづらいことではあるが、ルルーシュ、君なら受け入れてくれるかな……?
「あのっ、」
「あ、スザク、お茶入れてきてくれませんか?」
 その時、ユフィが僕の言葉を遮った。
「え……はい……」
 未だに主従であった時の名残か敬語で答えてしまう。
「今はスザクと話を……」
 突然言葉を遮られたことにルルーシュも戸惑っているようだ。
「良いじゃないですか。お兄さま。まずはお茶を飲んでゆっくりお話しましょう?」
 ナナリーも何故かユフィに同意するので、僕はとりあえずお茶を準備することにした。

 何か今二人に邪魔された気がするんだけれど……?
 でも、僕……何か謀られてる?

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