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False Stage2-03*

GEASS LOG TOP False Stage2-03*
約9,404字 / 約17分

 アリエス宮へと戻ると、元々少ない二人の会話は更に少なくなっていた。必要な用件しか話していないと言っても良いくらいだろう。その理由は先程の書庫での出来事も多少は関係しているのかもしれない。
 食事を終えたルルーシュは風呂から上がると、寝室にスザクを呼んだ。此処ならば他の護衛やメイドは居ないから二人きりで話をすることが出来る。
 スザクに本心を確認しなければ今後の計画にも差し支えがあるのだ。とにかくはっきりとさせなければ後々の問題にもなり得る。
「……お前は、アーニャのことが、好きなのか?」
 入ってきたスザクに向かって単刀直入に訊ねればスザクはぽかんとした本当に帝国最強の騎士の一人だか疑いたくなるような惚けた顔をルルーシュへと向けた。
「え……と、それは……殿下、あなたはそう思ったのです……か?」
 一体何故そのような結論に至ったというのか訊ねられ、ルルーシュは思ったことをそのまま率直に告げた。
「あの時、私がアーニャと一緒に居たから慌てていたのだろう? 心配は要らない。アーニャとはそういった関係ではない。妹のような存在なんだ。昔、彼女はこの離宮で行儀見習いを務めていたから」
「……そう……だったんですね。でも……殿下、自分はアーニャのことは好きですが、そういった意味合いではありません。あくまで同僚として好意を持っているだけです」
 その言葉に安堵するようにルルーシュはそっと瞼を伏せた。
「……そうか。なら無駄な心配だったようだ」
 これからしようとしていることを考えるにそういった恋や愛といった感情を誰かに向けられているとやり辛いと感じるのは否定出来ない。そもそもこういった分野は得意とは言い難い。
「……?」
 スザクは頭に疑問符を浮かべてルルーシュの姿をじっと見詰めていた。ルルーシュはそのままそっと彼の表情を観察し続ける。何故ならば失敗は許されないから。
「枢木、憶えているか? 私が初めてお前に逢った日、お前は言ったな。〝愛していた〟と。それは一体どういう意味だ?」
 彼は何かを知っている。自分の記憶では確かに初対面の筈だったのに彼は以前からの知り合いであるかのように自分に接した。考えられる原因は思い付くが、もしそれが現実なのだとしたら自分はどう道を選択するべきだろうか。
「……それは…………」
 ルルーシュはゆっくりとスザクへと歩み寄っていく。スザクは困ったように口を噤んだ。
「それはこういった意味、か?」
 目を細めてそっと顔を近付ければスザクは驚いたように目を見開いた。そんな反応を気にすることなくルルーシュは更にその距離を縮めた。
「ん…………」
 重なり合う二つの影。柔らかく触れ合う唇。啄むように一度だけ口付けてすぐに離れる。ゆっくりと瞼を持ち上げ、彼の表情を確認するように顔を下から覗き込めば、目を見開いて驚く彼の姿があった。
「……でん……か……?」
 いつもよりも舌足らずな発音で自分のことを呼ぶスザクに満足しながらルルーシュはそのまま耳元に顔を寄せて、そっと囁く。
「厭がらないのか?」
「そ……れは……」
 顔を染めて言葉を詰まらせた彼の頬へと指先を伸ばす。自分よりも濃い肌の色は日に焼けて健康的で、きっと毎日の訓練を欠かさない証なのだろう。そのままゆっくりと指を滑らせ、そうして首筋を爪の先で柔らかくスッと撫でていく。ナイト・オブ・ラウンズ専用の騎士服である黒地に金の縁取りが付いたスタンダードカラーへと触れると、そっとそのファスナーで留まる前合わせを開いていく。それでも彼は抵抗しようはしなかった。
(思ったよりも容易いな……)
 心の中で呟きながらスザクはそのまま胸元までファスナーを引き下ろす。すると鎖骨や胸元のしっかりとした筋肉質な肌が視界へと飛び込んで来た。
「お前はただじっとしていれば良い」
 耳元に顔を埋めたまま、そう囁くと、そのまま首筋へと顔を寄せる。肩と首との境の部分に唇を寄せる。僅かに口を開いて舌を這わせてみれば、スザクの肩がヒクリと軽く戦慄いた。
 きっとギアスに関する素質の高い自分が女として生まれなかったのは皇帝にとって誤算だったのだろう。自分にとっての姉妹は数多く居るが、それは全員母親違いであり、彼女らの素質は不十分だった。
 しかし、それでもこういった行為によって自分が男であったとしても他人からその力を吸収することが出来るということが判明しているのだから、皇帝は迷わずルルーシュに命じたのだ。目的の為ならば手段を選ばない。それは自分達父子に共通する信念だった。
 首筋から顔を離すと、解いた襟を掴んで引き寄せる。そうして口付けを再び贈れば今度はスザクの方から積極的にそれに応じてきた。触れるだけで重ね合わせたそれを深めたのは一体どちらからだっただろうか。
 僅かに開いた唇の隙間から舌を差し込み、口内を詮索する。するとスザクのそれに絡め取られ、吸い上げられる。口付けを交わし合いながらルルーシュは腕をスザクの首の後に回すと、更にそれを深めていく。クチュ、と水音が頭に響くがそれも不快ではない。歯列をなぞられ、そうして彼の両腕が自分の背中に回っていたことには気が付いていた。
「っん……」
 気持ちが良い。触れるだけのキスならば戯れのように交わしたこともあったが、こんなにも深く絡め合わせるような濃厚な口付けは初めてだった。ゾクゾクとした不思議な感覚が背筋を這い上がり、徐々に躯全体を痺れさせるように駈け巡ってゆく。
 ゆっくりとルルーシュが足を引いて後退れば、踵がコツリと寝台の縁に当たる。そのまま膝を折り曲げればベッドの上に上体が倒れ、スザクが自分の上へと乗り上げるような体勢となる。そうして更に彼を自分の方へと引き寄せた。
「んんっ……」
 クチュり、クチュり、と舌が、唾液が、互いの間を行き来し、絡み合う。スザクの手のひらがルルーシュの躯の上を這い、躯がどんどんと熱くなっていく。
 この皇宮に彼が暮らすようになってから彼に今のような熱の籠もった視線を向けられているような気は何となくしていた。しかし、それはただ〝溜まっている〟だけで、最近の多忙さから処理が出来ていないだけだからだと思っていた。もし、そうならば〝処理〟を手伝ってやればいい。そう割り切っていた。
 それなのに今日、アーニャとの関係を誤解されそうになったり、彼がアーニャのことを好きなのかと勘違いしたりしていく中で、彼の目が自分に向いていることに気が付いてしまった。
 そして、こうして彼と口付けしてみれば、その余りの気持ちの良さに驚いてしまう。それはテクニックという話などではない。彼とこうしているという状況自体が自分の感情を高めていく。
 長い口付けを止め、唇を解放すると、ルルーシュはスザクの服を脱がせようと手を掛けた。純白のジャケットはボタンを外すだけで簡単に脱げたのだが、インナーの方は躯にぴったりとしており、少し戸惑ってしまう。しかし、スザク自身が最後に自分で頭からインナーを脱ぎ去った為に思わすその手を止めた。
「殿下…………」
 今度は自分の服を脱ごうと自らの纏っていたローブの前合わせに手を掛けようとしたが、それはスザクによって阻止された。
「……良いんですか…………?」
 熱の籠もった翡翠を向けられ、ルルーシュは思わず息を呑む。この男がこういった状況でこんな風に豹変するとは思ってもみなかった。
「お前はどうなんだ?」
 膝を軽く立ててみればスザクの熱がそこへと当たる。既に充分なくらいに勃ちあがっているそれを撫でるようにして膝を動かせば、スザクはその部分を押しつけるようにして熱い息を吐き出した。
「……殿下が、欲しい……です」
 余裕なさげに眉を寄せて、潤んだ瞳で見つめられ、ルルーシュは何とか声を絞り出す。
「……許可しよう」
 本当は余裕なんて全く無いのに、出来る限りの余裕さを装ってみせる為、口許に笑みを浮かべてそう告げる。
「私もお前が欲しい……」
 しかし、最後でやはりそんな考えなど吹き飛んでしまう。そう、彼が……今すぐに欲しかった。
「イエス、ユア・ハイネス」
 スルリとローブの前合わせに手を差し込まれ、直接肌を撫でられる。そうしている間にもキスを落とされ、身体は更に密着していく。
「ん……っ」
 胸を撫でられ、微かに声が洩れ出てしまう。爪先で嬲るように敏感に勃ち上がったその部分を愛撫されるとゾクリと肌が粟立った。
「っ、そこは、もう……いいっ!」
 執拗な胸への愛撫に焦らされている感じがして早くしろ、と促せばスザクは腰骨の張り出す辺りに手を這わせた。もう片方は脇腹、肋骨の上辺りに置かれる。こちらも皮膚が薄く敏感な場所だ。
 胸元に顔を埋め、肌に舌を這わせながらそれらの敏感な部分を愛撫され、ルルーシュは身を捩る。
「っはぁ……ッ」
 指の腹を使って優しく、そして時々爪を立てて刺激を与えられる。その緩急に熱が高まっていくのを感じていた。下半身は互いの太腿部分に擦れ合い、気が付けば腰が揺れていた。
「厭らしい……ですね、殿下」
「っお前、こそ……早く挿れれば良いだろうッ」
 もう一度膝を持ち上げ、スザクの熱を強く刺激する。そうすれば彼は小さく口許に笑みを浮かべてルルーシュの瞳をじっと見つめた。
「まだ、駄目ですよ。もっとその可愛らしい姿を見たい」
 そんな言葉を返され、ルルーシュは思わず目を瞠った。明らかに男に対して使う言葉ではないだろう、と脳内で彼反論するが、その声が実際に言葉となることはなかった。
「ッ、誰が……んっ!」
 可愛いなど、そう言い切る前に再び口を塞がれ、彼の手は既に解けきったローブの内側……下着へと触れてきた。薄い布越しに触れられ、ゾクリと躯が震える。それでもすぐ直接そこに触れることはなく内股の辺りをなぞってみたり、様々な触れ方でルルーシュを翻弄する。
「それにしても凄い下着、ですね」
「普通だッ!」
 何が凄いのか意味が分からない、別段変わったものでもない筈だ。そう、至って普通の黒い下着だ。しかし少々ぴったりしたデザインのものだからこういった時にじっと見られるのはその、恥ずかしい。それなのにスザクはじっとこちらを凝視したままだった。
「っ!」
 反論の意を籠めてルルーシュはグッとスザクの身体を押し返し、身体を起こした。
「えっ!?」
 ルルーシュが突然上体を起こした為、スザクも慌てて躯を起こした。一体何のつもりだ、とでも思っているのだろう。
「俺ばかりやられるのは癪だ。お前はそこに座れ」
 さすがに命令されたら逆らえないのだろう。大人しくベッドの端に座るスザクの両脚を無理矢理押し開いて、その間にルルーシュは躯を滑り込ませる。
 スザクは上半身だけは脱いでいたが、純白のズボンはそのままになっていた。そのベルトに手を掛け、カチャリと音を立てて外してしまう。それから目をぱちぱちと瞬くスザクを他所にファスナーを下げた。
 そうすれば下着の中で窮屈そうにしているそれが布越しにはっきりと主張していた。ルルーシュはそこへそっと顔を寄せると、布地の上から舌を這わせた。
「ッ、殿下!」
 まさかそこまでするとは思っていなかったのだろう。スザクは慌てて腰を引こうとしたが、ルルーシュはそれを許さなかった。腰をぐっと押さえ、その部分を今度は口に含む。すると唾液と先走りの液体でじわりと下着を濡が濡れていく。
「っん、そこ…ッ…」
 スザクが息を詰めたのを確認して今度は下着の中からそれを取り出す。既に硬く勃起しているそれは先端からとろとろと液体を滴らせていた。
 掴んでいたそれを上下に扱けばコポリと先走りが零れていく。それを舐め取るように再び舌を這わせれば、自分の肩にスザクの手が添えられた。
「気持ちが、良いか?」
 愛撫される側からする側に回ったことにより若干の余裕を取り戻したルルーシュは手を動かすのは止めないまま唇だけ離して目線を上げた。
「気持ち……良い……です」
 その言葉に満足し、更に性器に愛撫を重ねていく。舌を這わせ、ゆっくりと口に含んでいく。頬の内側や歯の表面を擦らせながらスザクの快感を引き出していく。段々と更に膨張していくそれに苦しくなりながらも奉仕を続けた。
「っ、ルルーシュ……ッ」
 高ぶる熱に余裕が失われてきたスザクに名前を呼ばれ、ルルーシュは背筋が戦慄のを感じていた。自分が触れている方で触れられている訳ではないのに、何故?
「…………スザクっ」
 気が付けばいつもはファミリーネームで呼んでいる筈の彼のことを名前を呼んでいた。そうして床に押し倒されていることに気が付いたのはその後だった。
 スルリと下着を取り払われ、片足首に引っかかる。それを気にすることもなく、スザクはルルーシュの性器に触れながら、その更に奥まった部分へと指を伸ばす。
 既に先走りの液体が滴り、硬く閉ざされている筈の蕾はしとしとと濡れていた。それをそのまま利用して指先に絡めると、スザクは内部への侵入を試みた。
 若干の圧迫感を感じるものの、充分に濡れている所為か痛みは感じない。内部をゆっくりと押し開くようにして指は進んでいく。ルルーシュに負担を掛けないようにする為なのだろう、無理に押し込むこともなくあくまで慎重な動きだった。
「ん……っあ!」
 陰茎への愛撫の相まって徐々に快感が引き出されていく。ゆっくりとした動きで内壁を探る。じんじんと滲むような感覚が躯を駆ける。そうして内部の指が下腹部に向かう辺りを撫で上げた時、思わぬ刺激に自然と声が洩れた。
「はっ、ん……ひぁ……!」
 何とか声を出さないように唇を嚙み締めるが、激しい刺激にそれも困難だった。
 そして狙ったかのようにその場所をスザクは集中的に擦り上げられる。いつの間にか指の数が増えたようだったけれどもそんなことすら気にしている余裕など無かった。ゾクリとする強い快感に耐えるようにルルーシュはギュッと目を閉じた。
「……っ、は、ぁ……ッ」
 もうすぐにでも射精してしまいそうなくらい限界まで膨らんだそれをスザクは更に扱く。くびれた部分や先端を強く擦ると遂にルルーシュは白濁した液体を吐き出した。ビクビクと腰や脚が戦慄く。今まで感じたことのないくらいの快感に目が眩む。
「ああっ、あああッ、んッ……!」
 精を吐き出し荒い息づかいのままスザクへと目を向ければそっと口付けを落とされる。そうして内部のスザクの指先が再び蠢いた。しかし今度は奥へと向かう訳ではなく、ゆっくりと引き抜かれる。そして今度はもっと熱く、そして硬いものが入り口となる蕾へと押し当てられた。
「っん、スザ…………」
 彼の名前が咄嗟に口から出た。その直後熱が内部へと入り込んでくる。指とは比べものにならないくらいの質量が狭い内部を押し広げていく。痛みと、熱さに顔を顰めれば、スザクも締め付けられて苦しいのか、眉を寄せながら微笑を零す。
「少し、我慢してください……すぐに好くなると思いますから」
 根拠が無いのにそう断言され、少しおかしく思えてきてつられて笑みを零してしまう。それが良かったのか、痛みに引き攣っていた躯の力がフッと抜けた気がした。
「あっ!」
 その隙を狙ってか、グッと置くまで入り込んできたスザクに驚いて声を上げてしまう。両足を掴むその力が僅かに強まり、引き寄せられる。床の上に横になっている所為で若干後頭部と背中が痛いが、それよりも引き寄せられたことにより奥まで入り込んだ熱の方が衝撃的だった。
「くっ……、殿……下」
「ッ、ルルーシュ、と呼べ……っ」
 こんな時まで皇子扱いされては堪らない、とばかりにルルーシュは声を絞り上げた。そうすればスザクは柔らかく微笑む。
「……は、い……ルルーシュ……ッ、君の中、すごく狭いけれども……」

――気持ちが良い

 囁かれ、ゾクゾクと這い上がるような快感が押し寄せる。スザクが律動を開始し、更にそれが高まっていく。秘部からはぐちゅり、と卑猥な音が響く。それすらも自らの快楽を高める為のスパイスへとなっていく。
「お前の、ものも……気持ちが……良い……ッ」
 男を受け入れるなんて初めての筈なのに躯は敏感に快感を拾い上げていく。それはきっと自分達二人の相性が良いということなのだろう。
「はぁ、あっ……あっ!」
 内部に突き立てられたそれは先程ルルーシュが敏感に反応した部分を擦るように動く。指で刺激されるよりももっと大きな快楽に身を震わせる。
「ひぁ……ッ、ンンッ……!」
 腰を動かしたまま口付けられ、ルルーシュは彼の首へと両手を回す。それから同じように両足を彼の腰へと回し、角度を変え、更に深くスザクを促す。
 今度は直接触っていないそれが後への刺激だけでもう力を持ち、屹立していた。何度も腰を打ち付けられると、その屹立したものが二人の間で擦れ合い、再び限界が迫ってくる。
「い……あ……ッ……イクッ……!」
「良いよ……一緒に……ッ」
 熱い息を吐き出しながらグイ、と最奥を突かれ、ルルーシュは全身を震わせながら再び精を吐き出した。その締め付けにスザクも限界を迎えたのだろう。ズルリと内部から陰茎を引き抜くと、ルルーシュの腹の上へと射精した。
「ッ、はぁ……はぁ……っ、お前……外に……」
 暫く経ってから内部ではなく、外に吐き出されたことに気が付き、ルルーシュはぼんやりしていた頭を途端にクリアにした。
「中に出すのは、その……あなたに負担が……」
 こんな時に気を遣われても嬉しくない。何のために辛い思いと羞恥心をかなぐり捨ててまでこの男を誘ったと思うのか。――勿論そんなことをスザクが知る由も無いのだが。
 内心舌打ちしつつ、その苛立ちがそのことに対してなのか、それとも予想以上に感じ入ってしまった自分に対してのことなのかは解らなかった。

* * *

 スザクは自室として充てられた部屋へと戻ると、閉まる扉のその前でクタリとへたり込んだ。
「ルルーシュを……」
 抱いてしまった。それも記憶の無い彼を。記憶のある彼と最後に逢った時、彼は監督生たちに強姦され、そして弱っていた。それなのに自分も彼を抱いてしまった。
 ルルーシュとのセックスは今まで経験してきたものとは比べものにならないくらい気持ちが良かった。全てを搾り取られてしまうのではないかという程に締め付けられ、奥まで誘われていってしまう。
 しかし達する瞬間、記憶の無い彼を抱くのは記憶のあった時の彼に対する裏切りのように思えて、思わず咄嗟に彼の躯から自身を引き抜き、外に出してしまった。
 それでも記憶の無い彼は、何故か中に全てを注いで欲しかったとでも言いたげな視線をスザクへと向けてきた。一体それがどうしてなのかは解らない。中に出せば当然後処理が必要となってくるし、受け入れる負担は大きい筈なのに。
 それならば初めから彼を抱かなければ良かったのだろう。それは勿論頭では理解していた。しかしそれでも彼の誘いを断ることなど出来なかった。
 今まで学院で共に友人として過ごしたルルーシュはもう消えてしまって、今のルルーシュは全く別の人間になってしまったのだ、と彼の記憶がおかしくなってしまってから何度も自分に言い聞かせてきた。しかし、気が付いてしまったのだ。持つ記憶は違ったとしてもやはり彼は彼なのだ、と。
 そう、ルルーシュがルルーシュであることは確かなのだ。全くの別人になってしまったということなど有り得ない。譬え持っていた記憶を全て失ったとしてもきっとルルーシュはルルーシュなのだ。スザクが好きになった彼の部分も勿論同じように彼にも残っているということに気が付いてしまった。
「ルルーシュ…………」
 行為中、名前を呼ぶことを許してくれた。久しぶりに本人に向かって呼んだその名前に心がほんわりと温かくなるのをあの時、感じていた。
「ルルーシュ…………」
 もう一度繰り返す。そうすれば先程までの彼との交わりを思い出し、顔が熱くなった。元々学院での彼もそういった性的なものに疎そうだったが、皇子として再び目の前に登場した彼は一瞬の隙も見せず、それまでよりも更にそういった言動や行為からかけ離れているように思えた。しかし実際は彼の方からスザクを誘い、そして何とベッドの上ではなく床の上で抱き合ってしまった――寝室であったのにも関わらず、だ。
 よく良く考えてみればかなり大胆で拙いこともしでかしたような気もしないでもないが、あの時は必死だったのだ。一々何をどうしようかなどと考えてはいられなかった。
 余りに妖艶に、スザクを誘うものだからその欲望は留まることを知らなかった。それでも一度だけの行為で済んだのは、先程思ったように記憶の無い時の彼を裏切ったような感じがしたからだ。
 しかしこうして彼との交わりの気持ちの良さを思い出してしまうと、じわじわとその欲望が再燃してくる。スザクは首を左右に振ってその考えを蹴散らすと、立ち上がり、バスルームへと向かう。
「シャワーでも、浴びよう」
 少し冷たいシャワーでも浴びればこの邪な気持ちは消えるだろう。そんな風に考えながら。
 脱衣所に到着すると、少し皺になってしまった騎士服と汚れてしまった下着を脱ぎ、下着だけ洗濯かごの中へと放り込む。きっとその内女中がやってきて全てきちんと処理されるだろう。メイドが何でも身の周りの世話を焼くような生活には未だに慣れないが、慣れろというのだから仕方が無い。
 このアリエス宮は白が基調のデザインになっており、バスルームまで真っ白だった。しかし現在主としてこの宮に住まうルルーシュはいつも黒色の服装をしており、この間尋ねて来た貴族が彼の居ないところで彼のことを〝黒の皇子〟と呼んでいるのが耳に入った。
 あの目立つ黒髪に全身を包む漆黒の布地。それは確かにこの華やかな皇宮において異質だった。殊更この白に包まれた空間では良く目立つ。まるで暗殺者に自分の居所を教えているようにすら思えてくるくらいだ。
 彼が黒い服を着るのには何か理由があるのだろうか。戦場での彼は武器を手に持つことすらせず、物怖じすることなく敵の目の前まで赴く。
 そして敵が襲い掛かって来たところをスザクやジノが殺すのだ。そうすると彼らの返り血がルルーシュまで跳ね飛んでしまう。だが、彼の着ている服は黒色だから血は目立たない。そういった意味では黒い服も有用性はある。
 ……まさか返り血が目立たないから、とでもいうのだろうか。腐敗臭の漂う血肉の中に平然と立ち、部下に命令を下しているにも関わらず、返り血を浴びることを拒んでいるとでもいうのだろうか。
 そんな仮定が果たして正しいとは限らない。ただ単に彼がカラフルな色合いを好まないだけなのかもしれない。それでもいつも漆黒に身を包む彼の趣向には何らかの意味があるような気がしてならないのだ。
 シャワーのコックを捻り、殆ど水と言っても良いくらいのぬるま湯を頭から浴びる。向かい側の壁に掛けられた大きな鏡はスザクの姿を丸ごと映し出す。それを覗けばクルリとした髪は水に濡れるとくたりとへたってしまい、そのボリュームを無くしていた。
 髪の間に手を差し込み、指先でガシガシと頭皮を擦れば何だかもやもやと溜まっていたものがスッと外へ抜けていくような気がした。

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