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False Stage2-05

GEASS LOG TOP False Stage2-05
約9,127字 / 約16分

「ルルーシュ殿下、こちらの旧日本人兵士は全て拘束致しました」
 瓦礫となったビルの一角、そこはコンクリートの壁が崩れた所為で砂埃が激しく舞っている。割れた硝子は周囲に散らばり、穴の開いた壁面から差し込む外の光が埃に反射してきらきらと輝いていた。ジノは五人の旧日本兵をこのビルの東側通路で発見し、拘束した。他にも様々な死角に身を潜め、出方を窺って潜んでいた者、影から襲い掛かってきた者たち拘束し、一つの空間に纏めていた。その場所がこの空間であり、ルルーシュは彼らを冷たい目線で見下ろしていた。ざっと数えても旧日本兵の数は合計で五十を超えるだろう。恐らくこの周囲のビル街にも点々と彼らは潜んでおり、そして中華連邦の持つ〝客船〟を目指しているのだろう。その中に澤崎の支援者である旧日本国首相枢木ゲンブや片瀬帯刀少将も含まれているのはほぼ確かな情報だった。
 今回このキュウシュウに派遣されたのはルルーシュ皇子とその護衛を任された三人のナイト・オブ・ラウンズだけだった。千人近くの日本兵が相手である筈なのに対するブリタニアはたったの四人だけという何とも異例な事態だった。そしてそれはそのルルーシュ皇子が決めたことで、それでも多いくらいだ、という彼の言葉は信じがたいものだった。
 それにも関わらず、このキュウシュウに来てみれば本当にこの四人だけで充分なものだった。逆に人数を多くすれば統率し辛く、そしてこのように隠密に行動を取ることは難しかっただろう。
「ああ、そこへ並べさせておけ」
 ルルーシュは軽く顎を上げるような動きで空いているスペースを示すと、ジノに男達を連れて行かせる。ジノはイエス、と軽く返事をして彼らに移動するように命じた。
 するとその中の一人の男は後に居るジノの方へと顔を向け、ぐっと睨みを利かせてみせる。男の歳は三十前後だろうか。明らかに若く見えるジノやルルーシュなどに命令され、それに従うなど、といった様子で反抗的な態度を取っていた。ジノはその男の背中をグッと押し付け、前へと進ませる。
「殿下のご命令だ。早くそちらまで歩け」
 本来ならばこんな端役のような役目を請け負うような身分ではないが、如何せん見方は四人しか居ないのだから仕方が無い。あくまでこの場所で最も力があり、そして人を従わせる存在なのはルルーシュで、その他の三人は彼に従う為にこの場所に来たのだから。
 度重なる戦闘によって荒れ果てたこの周辺は見るも無惨なものだった。きっとこのビルだってオフィスだったのだろう。同じようなデザインの机や椅子が隅の方で無造作に詰み重なっている。床に張られていたカーペットは焼け焦げ、コンクリートの床が剥き出しになっていた。
「ッ、このブリキ野郎がッ!」
 吐き捨てられたその言葉が何を意味しているのか理解出来ず、ジノは眉を寄せ、肩を竦めてみせた。
「はぁ? 何だ、それ?」
 それは一体どういう意味何だ? と頭に疑問符を浮かべるジノの背後へと人影が近付いた。その気配を敏感に感じ取った彼はすぐにそちらへとパッと身体を反転させる。
「ブリタニア人が鬼畜だっていう意味らしいよ」
「スザク…………」
 そう説明したのは別の兵士達を拘束して、連れてきたスザクだった。この中で一番日本人の言葉を理解出来るのは同じく日本出身であるスザクだった。
「ふーん。また変なあだ名を考えるものだな。ニッポン人は」
「まぁ僕はさっきから彼らに〝裏切り者〟って呼ばれているけれどね」
 スザクは苦笑を零してみせる。裏切ったのは自分ではなく旧日本国首相――自分の父親である枢木ゲンブの方だというのに何が裏切り者なのだろう。
「お前のこと、知ってるぜ! 枢木首相の息子だろッ! なんでこいつらやブリタニアに協力してんだよっ!」
 別の男が靴底を地面に打ち付けながら声を荒げる。日本人でありながら何故敵に協力するのだ、と。
 スザクが日本からブリタニアに人質として送られたことは別段密約だった訳ではないのだが、知らない者は知る由もない情報だった。そのような者からすればスザクは理由も分からずブリタニアに協力する裏切り者と映るのだろう。それは仕方のないこととはいえ、腹立たしい気持ちになるのは否めない。
 スザクは大きく息を吐き出すと、反抗的な態度を取る男へと足早に近寄る。すると、他の男達もスザクを馬鹿にしたような態度でせせら笑った。
「ハッ、このブリタニアの狗が! 日本人であることの誇りを持てないなんて腰抜けだなッ!」
「ああ、こんなブリキの言うことばかり聴きやがって!」
 スザクは男達に近寄り、そっと目を細めて彼らを見渡した。スザクの表情の変化に男達は圧倒されたのだろう。煩く騒ぎ立てていた口を噤んだ。
「……説明して欲しい? そんなに聴きたいのなら説明してやるよ! 僕の父――日本国首相枢木ゲンブは日本の為だといって僕を人質としてブリタニアに送り棄てた。それなのに僕に利用価値があると解った途端、僕を利用する為に日本へと連れ帰ろうとしたんだよ。武力という名の力を使ってね。父が僕を一人の人間として見たことなんか一度も無い。父にとって僕は自分が得をする為の駒に過ぎなかったんだよ! それでも僕が日本に肩入れする理由はあるかな?」
 そんなこと、と男は言葉を詰まらせる。スザクが更に口を開こうとしたその時だった。
「枢木、それくらいで良い。どのみち彼らに話しても意味は無いだろう」
 ルルーシュが静かに口を挟んだ。余りに冷静で淡々とした言葉にスザクはハッとして口を閉じた。
「殿下、それは…………」
 確かに話したところで無駄なことなのだろう。それでも、自分の思いを吐露せずにはいられなかった。日本に棄てられ、そしてブリタニアで皇帝の騎士となった。それが日本人に対する裏切りとなることなど頭では理解している。それでも生きる為に選ばざるを得なかった。それに本当はただ、好きになった人を護りたかっただけなのだ。
「お前達はもう下がっていろ。後は私に任せておけば良い。そうすればすぐに私もお前達の後を追おう」
「え、ですが……」
 突然下された命令はルルーシュ一人をこの場に残し、先に移動するということだった。幾ら何でもそれは危険過ぎる。
「私も?」
 スザクとジノが兵士達を拘束している間にルルーシュの傍に居たアーニャは彼の傍に近寄ると、顔を上げて首を傾げた。
「そうだ、お前も枢木とヴァインベルグと共に先に行っていろ」
 アーニャまでをもこの空間から出て行くようにと告げるルルーシュに皆戸惑う。ルルーシュ一人でこんなにも多くの旧日本人兵士を相手になど出来る筈がない。応援など来ないのだ。集めた彼らを一体どうするつもりなのだろう。
「問題はない。私は皇帝陛下から受けた命を遂行するだけだ。お前達は先にこの建物を出ていろ」
 もう一度はっきりと告げられ、スザクもジノも互いを見合わせた。皇帝陛下の命令とは一体何なのだろう。ルルーシュは一体何をするつもりなのだろう。皆が思う疑問はきっと同様だっただろう。それでも彼に質問することは許されないことだった。
「良いか? お前達はこれより東15地区を捜索し、片瀬と枢木ゲンブを捕縛しろ」
 ブロックごとに区切られた一つ隣の区域は更に多くの熱源反応が確認されていた。この場所にはそもそもKMFに乗りやってきた。本当ならばこうして徒歩で移動する必要など無いのだが、KMFで真っ向から向かえば、すぐに片瀬やスザクの父である枢木ゲンブに見つかってしまう。それは逆に彼らの逃げるチャンスを作り出してしまうということになる。静かに、慎重に、相手に気が付かれないように背後から狙いを定める必要があると提言したのはルルーシュで、そうしてこの少人数での潜入活動が実現した。その為に基地以外には味方は存在しないのだ。
「…………しかし……」
「そんなに心配そうな表情を浮かべなくともすぐに追いつくだろう。奴らはきっちり拘束してあるのだろう?」
 ルルーシュは微笑して三人を見渡した。何だか不敵な印象を抱かせるその仕草にスザクは焦りにも似た何かを感じていた。
 確かに全員両腕を後できつく縛ってはいるものの相手は軍人だ。何かあればルルーシュ一人では太刀打ち出来ない強さだろう。それなのに何が問題ないのだろう。
「とにかく命令だ。さっさと行け」
 命令、だと言われてしまえば従わざるを得ないのはもう仕方のないことである。それにそれが皇帝の命令であるというのならば自分達ナイト・オブ・ラウンズに対しても絶対の言葉となり得る。
「……イエス、ユア・ハイネス」
 三人はルルーシュを残し、その場を去って行く。ビルの五階相当に当たるその場所は廃墟と化しており、ボロボロになったコンクリートの破片が辺りに散らかっている。旧日本軍人達は勿論武装していたが、さすがにナイト・オブ・ラウンズにもなればそんなものには怯まなかった。彼らが銃を向けてきたとしてもすぐに背後まで移動し、後から銃を奪い相手へと向ければ一人捕縛。そんな風にしてこの場所では五十人余りを三人で拘束した。
 しかしルルーシュは一人で彼らをどうするつもりなのだろう。捕虜にするならば一人の力では無理だろう。だからといって彼らを逃がすのもおかしい。
「それにしてもルルーシュ殿下、一人でどうするつもりなんだろう?」
「さぁな。私たちには推測しようがないさ。殿下も話すつもりはないみだいだったし」
 ジノはそっと息を吐き出しながらそう返す。本当に推察しようがない。此処には草壁とゲンブを捕縛しに来た。しかし、残りの日本人をどうするかなどといった特別な命令は下されていない――少なくともナイト・オブ・ラウンズには。だがルルーシュには何か別の特別な指示が出ているようで、彼はそれを実行するつもりのようだった。
 建物同様コンクリート造りの階段を素早く下り、グランドフロアに到着すると出口はすぐに解った。硝子の自動ドアだったのだろう。両開きのドアのフレーム部分だけが残され、床には硝子の破片が散らばっている。その場所から出た時だった。

――パン、パン、バン……ッ!

 立て続けに大きな銃声のような音が聞こえた。いや、きっと今のは銃声だとみて間違いない。それは同時に一発というどころではなく何十発もの弾丸が飛び交う音だった。自分達の居る地上よりももっと上から聞こえてきたその音はどう考えても先程ルルーシュを残してきた階から聞こえてきたものだろう。
「ッルルーシュ!?」
 スザクは気が付けば地面を蹴って今来た道を再び戻っていた。ルルーシュに何かあったら、そう思った途端考えるよりも先に身体が先に動いていた。ジノもアーニャも後からスザクを追うようにして急ぐ。
「おいスザク!」
 硝子やコンクリートの破片を飛び越えながら急ぐスザクの後をジノとアーニャは追いかける。元々運動能力自体もかなり高いスザクに付いて行くのは骨が折れる。しかし、目的地は解りきっているのだから心配する必要はないだろう。
 スザクは走りながらただただ焦る気持ちでいっぱいだった。
 一体今のは何の音だろう。そんなことは考えるまでもない。彼らからは銃を奪ったのだから武器は携行していない筈だ。それなのにどうして!?
 ルルーシュに何かあったらどうしよう。不安で、不安で仕方がなかった。一刻も早くルルーシュの元へ行かなければ!
「ルルーシュッ!」
 五階のフロアへと到着すると、まず先程と異なったのは強い血の匂いだった。それから銃を放ったことによる硝煙と火薬の匂いが後から漂う。
「一体何があったんだ!?」
 ジノも一足遅れて五階へと到着した瞬間にパッと辺りを見渡した。アーニャは微かに眉を顰めて黙り込む。
「急ごう」
 スザクは汗を垂らしながらルルーシュの元へと向かう。
 学院で友人として接してくれたルルーシュ、キスを交わしあったこと、彼が犯されて憤りを感じたこと、彼が皇族として復帰した時スザクのことを忘れてしまったこと……。
 様々な出来事が脳裏に甦る。もし、こんな場所でルルーシュが死んでしまったとしたら自分は一体どうすれば良いのだろう。初めは自分の為にブリタニア軍に入隊したが、ナイト・オブ・ラウンズとなったのはルルーシュのことを護りたいと思ったからだ――それは譬え彼が自分のことを忘れてしまったとしても。
 それなのに自分の生きる理由であったルルーシュが死んでしまったら。そんなこと想像したくもない。まだルルーシュにはっきりとした自分の気持ちを伝えることすら出来ていないのに。
 ルルーシュのことが好きだった。少なくともあの学院で口付けてしまうくらい。本当ならばこの腕に抱きしめたままでいたかった存在。しかし彼は何らかの原因でスザクのことや学院でのことを忘れてしまったようだった。一体どうしてそうなってしまったのかは全く検討が付かなかったけれども、きっといつか思い出してくれる日が来る。そう願っていたのに。
「え…………っ?」
 先程軍人達を集め、拘束していたスペースへとようやく到着すれば、目の前に飛び込んで来た光景は赤色一色だった。そうしてその次に視界に入ったのは黒い服装を纏ったルルーシュの姿。そしてその足元には多くの日本人達の死体が転がっていた。彼らの手には一様に銃が握られており、その光景は異様だった。
 ガタリ、とジノがコンクリート片を足にぶつけてしまい音を立てた。そうすれば自分達が戻ってきたことに気が付いたのだろう。ルルーシュはゆっくりとこちらへと振り向いた。
「…………何故、戻って来た?」
 僅かに震えた声でルルーシュは告げた。血溜まりの中、その声は遠くまで反響していく。辺りは再び静寂へと包まれていた。その中でこの空間だけが異質だった。
「突然銃声が聞こえたので殿下に何かあったのかと」
 本当に何かあったらと思った。もし、そんなことになればナイト・オブ・ラウンズにも重大な責任が生じる。しかし、スザクやジノ、そしてアーニャが彼に言いたいのはそんなことではない。本当に心からルルーシュの身を案じているのだ。
「いいや、私は傷一つ負っていないぞ」
 ルルーシュはそっと微笑する。散乱する死体の中でそうやって微笑む姿は至極妖艶で美しかった。
「私のしたことは一つ。この者達に諭してやっただけだ。〝お前達のやっていることはニッポンの為にはならない〟とな。彼らはその言葉を聞いて……この通り自殺した。ただそれだけのことだ」
 ルルーシュはそう云う。彼らは自殺した。一斉に、全員が自分達の行いが日本の為にならないと悟ったのだと。果たしてそんなことがあるのだろうか。
「……自殺…………ですか?」
「そうだ。もう済んだことは仕方が無い。さっさと次へ向かうぞ」
「…………イエス、ユア・ハイネス」
 そして目と、そして耳をも疑うこの状況はこれ一度きりでは無かった。この後ルルーシュと向かった先々は日本人達の死体で溢れた。はじめこそ捕縛するように命じていた彼も反抗する者は殺すようにと切り替える。軍人なのだから人の死に関わるのは付きものだというのに、こんなにもそれを怖いと思ったのは初めてだった。

「……そうだね。確かにあの時の光景は異様だった。殿下の周りに板旧日本兵全員が殿下の言葉で気持ちを改めそして〝自殺〟したなんて普通ならば有り得ないことだよね」
 柔らかく冷たい秋の風を浴びながらスザクはもう一度確認するように頷いた。
「だが、殿下がそんな嘘を言うとも思えない……」
 ジノはうーんと唸り声を上げながら意見を述べた。本当に難しい問題なのだ。自分達のこの推測が正しければそれは現実には有り得ないような不思議な力というものが関わってきてしまうことになるのだから。
「じゃあ、やっぱりルルーシュが何かの力を持っていて、それが原因であの状態になったと考えるのが一番簡単……だよね」
「ああ。そういうことになりそうだな」
 ジノも頷き、同意する。有り得ないような非現実的な状況に陥った時、人はそれを非現実的な力の仕業だ、と思いたくなる。そんな心理かもしれない。あの状況ではもしかしたら本当に実際ルルーシュが諭しただけで彼らは自殺したのかもしれないのだから。

「つまりルルーシュ殿下もお前も何か特別な力を持っているということか。……確かお前は旧ニッポン国の首相の息子だったよな……?」
「え、うん」
「となれば二人に共通するのは年齢、性別、それから国家元首の息子だということか?」
 そういえばどんな人物がそういった能力を持ち得るのか共通点を考えたことはなかった。自分とルルーシュに共通すること……それは多い訳でもないし、少ないということもない。その何かがきっと関係している可能性はあると思う。
「でも、日本の首相はブリタニア皇帝と違って世襲制じゃないよ。それにどちらかといえば日本の国家元首は枢木ではなく皇家の方だろうね」
 皇、その名前を挙げて思い出すのは従妹の皇神楽耶だった。ブリタニアに来てからは勿論一度も会っていない。彼女はまだ幼い所為もあってかブリタニアに彼女の情報は入ってこなかった。もしかしたら彼女も中華へと渡ろうとしているのだろうか。
 お転婆で、少し我が儘で、それでもスザクは彼女のことを嫌いではなかった。確かによく意地悪をされることもあったけれど、兄弟の居ない自分にとって妹のような存在だった。まだ日本で首相の息子として暮らしていたあの頃、確か自分は彼女の婚約者として内定していた筈だ。しかしスザクのブリタニア行きが決まったことにより、それは破談となってしまった。一体今、彼女はどうしているだろうか。
 そして思考を巡らす内にスザクはハッとした。
「解ったよ。もう一つの共通点が!」
「何だ!?」
「ブリタニア皇族は〝嚮団〟や〝嚮首〟を信じている。それはキリスト教でもイスラム教でも仏教でもなく少数民族や古代からヨーロッパに浸透しているような宗教ではないんだよね?」
 ああ、宗教という訳ではないのかもしれないけれども、嚮首という存在をロロが神と同じように語っていたのは確かだ。
「あともう一つ。話していなかったけれども僕の父さんは日本国の首相である以前に枢木神社と呼ばれる神社の神主なんだ」
「……神主ということは…………」
「そう、神という存在を信じている。しかも日本古来のものとはまた系統が違うんだ。一体どんな神を祀っていたのかは良く知らないんだけれど……」
「それが〝嚮団〟が信仰しているものと繋がっている可能性もある、ということか」
 ジノの表情がパッと明るくなった。
「そういうこと」
「何か見えてきそうだな」
「うん」
 断片だけではばらばらなものが全ては一つに繋がっているかもしれない。その事実と推測は果たして何を意味しているのか。もう少しで何かが解りそうな気がする。
「だが、お前は殿下を抱いた。それがばれたらかなりの大問題だぞ?」
「そう……だよね」
 忠誠を誓った存在である皇帝。その息子である皇子を同性でありながら〝抱いた〟。それが表沙汰になれば皇帝、ルルーシュ共々失墜しかねない。しかしそうなるよりも前に皇帝がスザクを〝排除〟するのが先だろうが。それでなくともルルーシュは皇帝のお気に入りなのだ。
「でも、それでもルルーシュのことが、好きなんだ」
 もう自分を誤魔化すことなど出来なかった。
 スザクがはっきりとそう断言するとジノは神妙な面持ちを浮かべたままスザクの顔をじっと覗き込む。そして再度確認してみせる。
「…………それは今の? それとも以前の?」
 ジノに訊ねられ、スザクは一瞬息を潜めた。それはつい最近まで自分が自分自身に投げかけていた疑問そのものだったからだ。
 ルルーシュは変わってしまったのだと自分に言い聞かせて自分のことを簡単に忘れてしまった彼のことを諦めようと思ってきた。しかし、やはりどんなルルーシュでもルルーシュはルルーシュであることには変わりない。そのことに気が付いてしまった。
「どちらもルルーシュなんだよ。違うように見えて同じなんだ。細かな仕草や、僕を見る時の瞳はやっぱり以前も今も変わらないんだ」
 それは本当だった。共に暮らすようになってから見せ始めたその表情の断片は彼が他人の前で見せるものとは全く異なったものだった。学院に居た頃の彼を思い出すようなそんな素の彼に再び惹かれてしまった。
「殿下もお前のことを愛している?」
「それは解らない。けれども嫌われてはいないと思う。もし彼に嫌われたなら僕は生きる意味を見失ってしまうかもしれない」
 もし嫌われていたらあんなことにはならないだろうし、それ以前にアリエス宮に住むようになどと提案したりはしなかっただろう。
 とにかくルルーシュのことが好きだった。もし彼がまたスザクのことを忘れてしまったとしても何度でもきっと彼のことを好きになる。それはきっと確かなことだ。
「そうか、そこまで言うなら……私は黙っているが、気を付けろよ。殿下が何を考えているのか正直私には良く分からない」
 今のルルーシュが多くのことを隠していることは勿論解っているが、彼が何を考えているかということははっきりとはまだ解らない。それは確かに以前からそうだったかもしれないが、今の彼は更に公の場でその真意を偽っている。
 だからこそスザクは彼の気持ちを知りたかった。彼は一体何を目指しているのか、そして何をしようとしているのか。目的は未だに解らないままだ。力を手に入れたがる理由だって。
「それは僕も解らないよ。でも有り難う、黙っていてくれて」
 ニコリと見上げると、ジノもニィと笑みを返す。初めて出来た友人はルルーシュだったが、こうしてジノやアーニャとも友人となることが出来た。でもそれはやはりルルーシュという存在が居てこそだったのだろうと思う。そうでなければどう接して良いのかも解らずにきっと途方に暮れていただろう。
「お前は私の大切な同僚だろ!」
「うん!」
 もう迷うことはきっと無い。本当に話を聞いて貰えて良かったと思う。調べなければならないこともたくさんあるけれども。
「さぁ、そろそろ戻らないと」
 促され、そうして随分と時間が経ってしまったことに気が付いた。言われた通りそろそろ宮殿へと戻らないと拙いだろう。ルルーシュが戻ってくるよりも先に戻らなければ彼の護衛として失格だ。
「ああ、もうこんな時間……まさか殿下を待たせちゃったりとかそんなこと無い……よね?」
「それこそ一大事だな」
 まさか皇子を待たせる訳にはいかない。二人は足早に謁見の間へと向かった。

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