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False Stage2-08

GEASS LOG TOP False Stage2-08
約9,105字 / 約16分

「へぇ、ルルーシュ殿下と幼なじみだったんですか?」
「ええ、とはいってもマリアンヌ様が亡くなってからは会う機会も無かったのですが」
 少しだけ哀しげな表情を浮かべた彼女にスザクはルルーシュの母であるマリアンヌという后妃の存在を改めて実感する。彼女は本当に多くの人から慕われていた人だったのだろう、と。誰もがマリアンヌのことを哀しみ、今でも彼女を懐かしむ。
 そんな慕われた后妃だったマリアンヌは八年ほど前に暗殺されたのだという。その所為でルルーシュは生きる為に必死になっていたのだろう。ギアスという力を用い、多くの人を殺したのだと彼は告白した。しかしもう一方の学院でのルルーシュは逆に生きることを諦めていた。それは彼女の後を追いたかったから? それともその後に従弟として配置されたロロを喪ったから?
 ミレイは何か知っているのだろうか。余計な詮索をすれば危険を被るのはスザクではなくルルーシュの方だ。だからこそ慎重にならなければならない。
 アリエス宮の正面玄関を出ると、門までは少し距離がある。スザクは横に立っていたSPに声を掛けた。
「そこの君、アッシュフォード嬢がお帰りになるから車を手配してくれないか」
 そうすると男は訝しげな表情を浮かべながらこちらに視線を向ける。そうして声を掛けたのがナイト・オブ・セブンであったことに気が付き、慌てて敬礼をした。
「イエス、マイ・ロード。ただいま手配致します、枢木卿」
 そう言って黒ずくめの男はインカムを通じて連絡を取る。
「時期に皇帝陛下がいらっしゃいますので少々出入りに時間が掛かっております。申し訳ございません」
 チェック体制が強化されているらしく。IDの提出などが義務づけられているのだという。しかしスザクは彼らの上司であるのだからそんなことは不要だ。ミレイも同じようにパスされ、用意された車が到着するのを待った。
 ルルーシュの意向により、車をこの近くには停めさせないようにしているらしい。来客の車は別の場所に停められているという。
「ご体調はどうでしょう?」
 体調が悪いといって帰ることになったミレイだが、立っていても大丈夫なのだろうか。心配になってスザクは訊ねる。
「もし、お辛いようでしたら待っている間、何処か休憩する場所を用意させましょうか」
 もしかしたら此処まで歩いてくるのも辛かっただろうか。少し心配になりながらスザクは訊ねる。
「あ、いえ……少し良くなってきたみたい。コルセットをきつく締めすぎたのかしら」
 その言葉に安心してスザクはほっと息を吐き出した。ルルーシュと彼女が二人きりになってから彼女は具合が悪くなったと言った。それ以前からもし体調が悪かったのだとしたら彼女はそれを自分には隠していたということになる。ルルーシュは彼女のことを良く知っているようだったから彼女の体調が芳しくないことを察してスザクを外させるといった行動に出たのかもしれない。きっとミレイは信頼出来る人にだけ弱みを見せることが出来る女なのだろう。
「それは良かったです。では会場には戻られますか?」
 体調が良くなって来たのならばルルーシュの元に戻った方が良いのではないだろうか。本当ならば絶対に戻らせたくはなかったが、ルルーシュも彼女とは久々の再会だった上に彼女はもうすぐエリア11に旅立つというのだから最後に別れの挨拶くらいはした方が良いのではないかと思う。
 しかし彼女は首を左右に振って否定する。
「いいえ、また気分が悪くなってしまっても困りますから。あの場所は人が多くて……」
「そうですね。あの宮にあんなに人がたくさんいると何だか変な気分です。普段はひっそりとしている場所ですから」
「マリアンヌ様がご存命でいらっしゃった頃はあれ程ではなくとも大勢の人が出入りされていたましたわ」
 派手なパーティーを好むような后妃ではなかったが、彼女を慕う人間はひっきりなしにあの離宮を訪れていたのだという。特に軍人はナイト・オブ・ラウンズから后妃となった彼女に強い畏敬の念を抱いていた。
「マリアンヌ様の肖像画、ご覧になりましたか? とても美しい方だったんですよ」
「ええ、ルルーシュにとても良く似ていらっしゃたようですね」
 柔らかいウェーブの掛かった艶のある黒髪に白い肌、そしてアメジストのような美しい瞳。それはルルーシュととても良く似ていた。后妃に召し上げられることも頷ける程の美貌にナイト・オブ・ラウンズになるくらいの実力も兼ね備えた存在だった。
「あら……呼び捨て? 彼と仲がよろしいのですね」
「あ……」
 うっかりいつもの呼び方で彼のことを呼んでしまった。公の場や他人の前では殿下と呼ぶように気を遣っていたのに昔の彼の話をしていた所為か気が緩んでしまっていた。
「良いのよ。私も実は彼のこと〝ルルちゃん〟って呼んでいるから」
「ルルちゃん……ですか!?」
 まさかの事実にスザクは瞠目した。あの、ルルーシュのことをルルちゃんと呼んでみせるなど。
「そう、あらーそんな羨ましいって目で見なくても良いのに」
 ニヤリ、と微笑む彼女はきっとただ者ではない。それよりもさっきまでの態度は演技だったのだろうかとすら思ってしまう。いや、実際そうだったのだろう。明るく朗らかな彼女は面白いことが大好きだ、とばかりにニコリと笑む。
「ねぇ、あなたルルちゃんのこと、好きなのね?」
 そしてされたのはこの確信的な質問だった。ルルーシュのことが好きか、否か。彼女の用いた単語はライクではなくラヴだった。
「……ええ、好きです」
 まるで全てを見透かされているようなその質問にスザクは嘘偽りなく答えた。この気持ちは否定出来ない本当のものだから。
「やっぱりね。あなたたちの表情を見れば解るわ。だってルルちゃんがあんな風な顔をすることって本当に少ないのよ。だからこそあなたのことは信頼出来る。彼のことを絶対に護ってほしいの。私と彼はもう婚約を解消したわ。だから私が彼のことを支えることは出来ないけれども、あなたは違う、あなただからこそ許されることなのよ」
 ミレイは歩き歩き辛そうな高いヒールをコツリと鳴らし、スザクへと一歩近寄る。スザクはそんなミレイを見上げ、自分の決意を告げた。
「ルルーシュのことは……僕が絶対に護ります」
 これは彼のことを意識した瞬間からずっと思っていたことだった。ルルーシュには幸せになってほしい。願わくは自分と共に。これ以上危険な目に遭わせたくはないし、自ら命を絶つようなことはしてほしくなかった。だから今更といえば今更だった。もうずっと前にそのことは決意していたのだから。それでもこうして改めて彼のことを良く知る人物の前でそう声に出せばその気持ちも更に一層強固となる。そんな気がした。
「でもね、久しぶりに彼と会って……一つだけどうしても府に落ちないことがあったの。ねぇ、あなたは知ってる? あんなにもナナリーのことを大切にしていたルルーシュはどこに行ってしまったの?」
 ミレイは眉を下げてスザクに問う。それは心から彼のことを心配している顔だった。
「……ナナリー……?」
 それは一体誰のことなのだろう。ルルーシュが大切にしていた人物――ナナリーという名前の女性。彼女の言い方からするとミレイという婚約者の前でもナナリーという女性のことを大切にしていたということになる。幾らブリタニアであっても複数の女性と婚約を結ぶということは無いだろう。それならば彼女は一体何者だというのだろう。
「まさか、ルルちゃんがナナリーの話をあなたにしていないっていうの? そんなことが有り得る訳がないわ!」
 スザクの反応にミレイはスザクへと詰め寄り、驚愕したとばかりに声を上げる。
「待ってください。ナナリーって一体誰なんです!?」
 そう、そんな風に言われても本当に自分はナナリーという名の人物のことは知らないのだ。ルルーシュは彼女の名前を挙げたこともましてや彼女に会ったことなど一度も無い。
「ナナリーは……ルルーシュの妹よ。それも同腹の。今日がルルーシュの誕生日だっていうのに彼女の姿は見えないし、ルルーシュも話題にしない。いえ、ルルーシュだけではないわ。周りにいる皆が誰もナナリーの存在を気に掛けないなんて」
 そんなことは幾ら何でも有り得ない。信じがたい、と彼女は洩らす。それ程までにルルーシュにとって大きな存在である妹、ナナリー。何故彼女はアリエス宮に居ないのだろう。そしてルルーシュをはじめとする人々は彼女のことを気に掛けようともしないのだろう。
「ルルーシュに同腹の妹が……?」
「ええ、そうよ。ナナリーはルルーシュが最も大切にしていた存在。そして彼女もルルーシュのことを本当に愛していたわ。それなのにそのルルーシュがナナリーの名を一切出さないなんて……」
 そのことには心当たりがあった。ルルーシュは皇帝に記憶を改竄されたのだ。ナナリーのことを忘れていても不思議ではない。しかし、他の兄弟や臣下たちでさえ彼女のことを一切口には出さない。その事実は何を示している?
「それに……それだけではないわ。何か変なの。私がフランスから戻ってきてこの場所を訪れて……妙な違和感しかないの。それに本当は私、具合が悪いんじゃなくてルルちゃんに早く帰ってほしいと言われて帰ることにしたのよ」
 つまりミレイはルルーシュに帰るようにと頼まれた。ミレイのことをルルーシュが嫌っているようには見えない。それ以外の理由で彼女を帰そうとしているとしたらそれは彼女のことを護る為だ。
「じゃあ、まさか……」
「きっとこれから何かが起こるわ……」
 それ以外に有り得ない。ミレイに嘘を吐かせてまでルルーシュはミレイとそして自分をアリエス宮から遠ざけた。
 何かが起こる。それは確信にも近かった。
「僕、ルルーシュのところへ行かなくちゃ……」
 スザクは心臓の鼓動が速まるのを感じていた。それはいつも彼に対して思うドキドキと高鳴る情欲の気持ちなどではない。不安からくる焦燥だった。
「ミレイさんはルルーシュの言う通りこの場所から出た方が良い。ルルーシュのことは僕が何とかします」
 ミレイのことはルルーシュの意向通りこの場所から離れさせなければならない。彼女は足手纏いになってしまうことを悟ったのか、すぐに頷くと、スザクをアリエス宮へと促した。
「ええ、急いで彼のところへ!」
「はいッ!」
 返事をしながらも気が付いたら既に足はルルーシュのところへ向かっていた。ルルーシュは何かを知っている? そして自分に隠している? 確かにルルーシュは多くのことを自分に隠してきたけれども、ようやく少しずつ話してくれるようになったと思っていたのに。
 とにかく何も起こらないでほしい。そう願いながらスザクはもと来た道を走り続けた。人混みの間を掻き分け、ひたすらにルルーシュの居る場所を目指す。
 先程皇帝が挨拶をしたらしく、辺りには多くの貴族たちがひしめき合っていた。眩いばかりのその光景は映画で見るような雰囲気で、シャンパンを片手に持った彼らは商談や噂話などを楽しんでいた。

――ルルーシュは何処に居るんだ!?

 主賓である皇帝の姿やシュナイゼル、クロヴィスはすぐに見つけることが出来たのだが、肝心のルルーシュが何処にも居ない。
 背伸びをして遠くを見渡してもルルーシュの姿は一向に発見出来ない。
「枢木卿」
 どうしよう、とうろうろ考えていると、不意に背後から声を掛けられた。振り返ると、そこにはシュナイゼル・エル・ブリタニアの姿があった。彼はいつも通りの微笑を携え、そうしてスザクを見下ろした。淡い紫玉がスザクの姿を映し出す。
「シュナイゼル殿下……」
 慌てて彼の前へと跪く。自分達の周囲だけ人が下がり、人々の注目が集まっていく。
「久しぶりだね。でも堅苦しい挨拶は不要だよ。此処は祝いの席だ。愛する弟の、ね」
 シュナイゼルの印象はルルーシュが皇帝に記憶を改竄された直後のものと良く似ていた。いや、記憶を改竄されたルルーシュがシュナイゼルに似ていたのだろう。品があり、全てにおいて完璧。そうしてその言動には余裕がある。上に立つ者、と位置づけられることが運命だとしか思えないような存在だった。
「殿下……」
 ルルーシュのことを〝愛する弟〟と表す彼は確かにルルーシュのことを多く援助している。しかし、普通それだけのことで弟に自分の地位まで譲るだろうか。総司令官という役職はブリタニアにおいて宰相に次ぐ要職だ。
「それで、君は誰をお捜しかな?」
 ニコリ、と微笑まれスザクは一瞬躊躇ってから、彼の名前を挙げた。
「……ルルーシュ殿下の所在を……ご存じでしょうか?」
 シュナイゼルのことは信用出来なかった。確かに彼がナイト・オブ・ラウンズとなる手助けをしてくれたようだったが、それでも何を考えているのか全く解らない存在に警戒せざるを得ない。以前はそこまで思うこともなかったのだが、この人がルルーシュの異母兄だということを知り、徐々に警戒心が増していったのは事実だろう。
「……ふむ、ルルーシュを。彼は今取り込み中だと思うけれど……」
 うーん、と唸って彼はそうスザクに告げた。つまり何処にルルーシュが居るのか知っているが教える気は無いいうことか。
「……ではもう一つだけ。殿下は〝ナナリー様〟という方をご存じですか?」
 一か八かの賭けだった。シュナイゼルがナナリーについて知っているのならばルルーシュに合わせて彼が知らないふりをしているということになる。それはつまり彼が皇帝と協力しているということになり、つまりはルルーシュの敵であるということだ。知らないと答えた場合は彼もルルーシュと同様皇帝に記憶を改竄されている可能性が高い。
 しかし、シュナイゼルの場合は知らないふりをスザクの前であっても続ける可能性は充分に考え得る。一概には断定出来ないというところが難しい。
「……ナナリー? 一体誰のことだい、枢木卿」
(やはりそう来たか……)
 彼の返答はつまり知らないふりを続けているか、本当に知らないかのどちらかということだ。ナナリーがルルーシュの実妹だというのならばシュナイゼルにとっての異母妹ということになる。そうであるのにも関わらず彼がナナリーの存在を知らない訳が無いのだ。
「いえ、少々そのお名前を耳にしたもので自分も良く存じ上げないのです」
 誤魔化していることがばれてしまうだろうか。スザクは額に汗が流れるのを感じていた。シュナイゼルの洞察眼は鋭い。そうでなければ宰相など務まらないだろう。
「ふむ、ナナリーという名の女性のことは聞いたことが無いね」
 シュナイゼルは考えるような仕草を取ってからそう告げる。
「クロヴィス、君は知っているかい? ナナリーという女性を」
 シュナイゼルがスザクの斜め後へと視線を向け、スザクもそちらへと目を移す。するとクロヴィス・ラ・ブリタニアが自分達の方へと近付いて来たところだった。
「ナナリー、だけでは解りませんね。せめてファミリーネームを教えて貰わないと」
 恐らく彼女の名はナナリー・ヴィ・ブリタニアというのだろう。しかしその名前をこの場所で口に出すのは余りに危険過ぎた。いや、ナナリーという名前ですら充分に危険は伴っている。忘れてはならない、この場所には皇帝が居るのだから。
「それは……」
「枢木卿は〝ナナリー〟という名前しか存じないそうだよ」
 シュナイゼルがそう説明すると、クロヴィスは〝そうですか〟とだけ返す。シュナイゼルだけではなくクロヴィスまでルルーシュの妹である筈の存在を知らない? 皇族全員で彼女の存在を隠しているのか或いは……。
「済まないが私も知らないな。ナナリーという女性のことは」
 もし、その仮説が正しいとするならばミレイが彼女のことを知っていたのはフランスに留学していたからということになる。彼女は皇族と親しかったにも関わらず記憶を改竄されなかった――それはブリタニアを離れていたから。
「いえ、それ程重大なことではないので」
 本当は違う。とてもとても大切なことだった。もしナナリーというルルーシュの妹が存在するならば一体彼女は何処へ消えた?
(意味が判らない……もし皇帝陛下が皆の記憶をギアスという力で改竄したならばどうしてそんなことをする必要がある? 何故ナナリーという存在を隠す?)
「それでは失礼致します。シュナイゼル殿下、クロヴィス殿下」
 スザクはパッと頭を下げると、その場を後にした。
(もしかしたら私室で休んでいるのかも)
 出来ればそうであって欲しい、そう思いながらスザクは人々の間を潜り抜け、ルルーシュのプライベートルームへと繋がる一番近い階段を上がる。パーティー会場の喧騒が徐々に和らぎ、次第に静寂へと変わる。スザクの足音だけが廊下へと響く。今は衛兵も会場へと出払ってしまい、人は居ない。
 足早に移動しながらスザクは考える。一体ナナリーとは何者なのだろう。ルルーシュの妹であるということ、ルルーシュが彼女のことをとても大切にしていたということ以外一切情報は存在しない。
(……とにかく確認しないと……!)
 スザクはようやくルルーシュの私室へと辿り着く。そしてノックをすることもなく扉を開く。
「え…………?」
「やぁ、もう一人の主役のお出ましだ」
 スザクの目に飛び込んだのはルルーシュの姿ではなく、金髪の髪を床まで垂らした少年だった。歳は十歳前後、しかしその年頃にしては妙に落ち着き払っていた。
「……君は……誰だ……?」
 そう訊ねながらその少年の背後にルルーシュの姿を見つけ、ほっと一安心する。――ルルーシュは無事だった。
「初めまして、枢木スザク。僕はV.V.」
 ニコリ、と笑う彼の表情は子供の無邪気な微笑みとは随分と異なっていた。そしてV.V.という名前も明らかに不審なものでスザクは眉を寄せる。
「ルルーシュ……彼は……」
 少年と話してもきっと埒があかないだろう。ルルーシュに説明を求めた方がきっと単純に簡単な話だろうと思った。しかしルルーシュは口を開きかけ、そして噤んだ。
「僕はね、迎えに来たんだよ。ルルーシュのことをさ」
「ッ、V.V.、俺が嚮団から出て行ったのは皇位継承戦争に勝ち残る為で……」
 黙っていたルルーシュがそこでようやく口を開き、V.V.へと反論する。ルルーシュの口から遂に出た〝嚮団〟という言葉、そして〝皇位継承戦争〟とはつまり皇帝位の争奪戦ということだ。
「それならば嚮団の助けは必要だよ? 嚮団を味方に付けた皇族こそが皇帝となることが出来るんだ。何もずっと嚮団に身を置く必要はない。そんなことしたらシャルルに怒られちゃうからね。君はブリタニア軍総司令官の地位を保ったまま嚮団に出入りすれば良い」
 笑みをそのままにV.V.と呼ばれる少年は続ける。そこに口を挟んだのはスザクだった。
「じゃあ君がルルーシュに人殺しを命令してきた……?」
「まぁそういうことになるね。でも仕方が無いよ。ルルーシュの力を増幅させる為にはたくさんの人を殺すことが必要なんだ」
「ッ、ルルーシュをこれ以上人殺しの道具にするのは止めてくれ!」
 スザクはルルーシュの傍へと駆け寄った。そうしてV.V.から庇うようにルルーシュの前へと回り込む。
「……スザク…………」
 ルルーシュは前に立つスザクの腕をギュッと掴む。そうして僅かな声で囁いた。
「V.V.は……危険だ……」
 そんなルルーシュを一瞥すると、スザクはV.V.へと強い視線を送る。
「そんなことを言ったら君だって同じじゃない? ギアスを使うかKMFを使うかっていう違いなだけで」
 そうしてひと息置いてからV.V.はもう一度ニコリと笑みを浮かべてみせた。それは遙か彼方空の上から人を見下すような、恐怖すら感じさせるくらい冷たい、そんな笑みだった。
「ち……違うッ! ルルーシュはしたくもない殺人を訳も解らないギアス嚮団なんていう宗教に囚われた君や皇帝に強要されたんだ!」
 そうしなければルルーシュは生きてこられなかった。そんなルルーシュを利用して彼らはルルーシュの能力を良いように扱ってきたのだ。
「宗教……ねぇ。別に僕達そんな怪しい団体とかじゃないんだけれど……」
 V.V.は呆れたようにそう洩らす。では宗教でなければ何だというのか。
「うーん。部外者だったら教えないけれども君は素質があるからね。ちょっとだけ教えてあげる。ギアス嚮団は科学的根拠に基づく研究集団だよ」
「それは一体…………」
 どういうことか。科学? そして研究? それが普通では説明出来ないような力や能力を生み出しているとでもいうのだろうか。
「これ以上は秘密だよ。それにさ、気が付かれていないと思ったの? ルルーシュ、君、自分がシャルルによって記憶を書き換えられたことを知ってるでしょ?」
 V.V.はスザクの制止をも気にすることなくルルーシュへと近付いて行く。
「…………惚けたって無駄。僕には判るんだから」
「…………そんな…………」
 ルルーシュは絶句する。まさか自分達以外にそのことに気が付いている人がいるなど思ってもみなかった。

――教えてあげようか? シャルルが君から奪い、封じ込めた記憶の正体を

「…………知りたくない? 何があったか」
 V.V.は優しくルルーシュの顔を覗き込む。スザクは反対側のルルーシュの腕をギュッと抱きしめた。
「……ルルーシュ……駄目だよ。自分の力で取り戻さなきゃ……V.V.の手を取っちゃ駄目だ……ッ」
「だがスザク、どうやったら自分の力で〝真実〟を取り戻せる? 俺には解らないよ。そんな方法があるかどうかすらも……」
 ルルーシュは哀しげに目を細めてスザクへと顔を向ける。そうして薄らと口端を上げて、笑ってみせる。
「俺は大丈夫だ。だから…………」

――V.V.、記憶を戻してくれ……

「良いよ。その代わり君が皇帝になるんだ。シャルルの後継者にね。譬え何があっても忘れないで」
 V.V.は告げるとルルーシュへと手を伸ばす。ルルーシュは一瞬躊躇ってからV.V.へと手を差し出した。
――ルルーシュ……ッ!

「……ごめん、スザク」
 ルルーシュは哀しげな微笑を浮かべて謝ると、そっと瞼を伏せた。

ねえ、君が信じたものも僕が信じていたものも
本当は紛い物だったというのなら、
僕達は一体何を信じれば良いの……?

僕の願いは君と一緒に居たい、ただそれだけだったのに。

To be continued…

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