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False Stage4-01

GEASS LOG TOP False Stage4-01
約8,213字 / 約14分

 キラキラと輝くシャンデリアの照明は西洋のものとは違い、竜や鳳凰といった架空の生き物が刻まれ、オリエンタリズムに溢れた装飾が施されていた。真鍮製の装飾の隙間からは優しい色合いの光が漏れ、赤い絨毯が敷かれた床へ美しい文様を暈したような影が落ちている。
 周囲は赤い色と黄金で包まれ、煌びやかな空間が広がっていた。この国には昔からそれらの色を好む者が多いらしい。その為、いたるところが紅と金に染まっていた。 
 中央には巨大な天蓋の付いた台座があり、その上にはずっしりとした重みのある玉座が置かれていた。おそらくは巨木を削って造られたのであろうそれは長年に渡って使い込まれてきたもののようで、味のある風合いが一層のことその価値を感じさせた。
 しかしながらその重厚感のある玉座に腰掛けているのは、まだ十五歳にも満たない幼い少女だった。肌の色はこの国では珍しいくらい白く、髪の色は透き通るような白銀。瞳は紅く、まるで宝石のように色鮮やかだった。何もかもがこの国には珍しいもので特別な少女だった。
「天子様。日本がこの中華連邦に支援を要請して参りました」
 天子と呼ばれた幼い少女の面前に並ぶ七人の大宦官のうちの一人、項勝(シャン・シェン)が彼女に報告する。すると別の大宦官がその言葉を補足するように口を開いた。彼らは一様に独特の話し方で、天子を操ろうと物事を独断で決めてきた。そのことに武官黎星刻が気が付いたのは何も最近の話ではない。
「しかし、天子様のお手を煩わせる必要などございません」
「我々大宦官が対応致しましょう」
 別の宦官が顔を寄せて囁く。
「でも……」
 いつでも上手く自分の意見を纏めることが出来なくて、そもそも意見があるのかということ自体、自分自身でもはっきりしないのだろう。
 彼女は消えてしまいそうなか細い声で、彼ら大宦官に自身の意見を告げようとする。しかし、一回りどころかそれ以上に歳を重ねている彼らに幼い天子の声を聴くつもりなど毛頭なかった。天子という存在は既に飾りのようなもので、実質的には大宦官がこの大国中華連邦を仕切っていた。
 天子が困惑した表情を変えることのないうちに大宦官は話を進めていく。
「天子様は我らが中華連邦の宝。余計なことで悩む必要はないのです」
「ですから、すべて我々にお任せください」
「悪いようにはいたしません」
「我々大宦官は皆、この国の発展を願っているのです」
 それらの言葉に天子は頷く。こうして今までも同じように大宦官は政治を取り仕切ってきた。
「天子様、ご心配には及びません」
「《日本》は我が中華連邦の元に自ら下ろうとしているのです」
「これは好機。勢力を拡大し続けているブリタニアに対抗する一つの手段になりましょう」
「利害は一致しているのです」
 天子の側近として見守る立場にある黎星刻はじっとその様子を見守っていた。
 大宦官のいうこともその通りではあった。利害は確かに一致している。だから口を挟むことはなかった。しかし、今後、大宦官が私利私欲の為に天子が幼いことを利用するつもりであるのならば、自分だけは天子を護らなければと心に誓っていた。
(そうあの時の誓いを護るのが、自分と天子様との――…)
 嘗ての約束――それはもう随分と前に交わした契りで、もう天子は憶えていないものかもしれない。けれども、自分はずっと忘れられなかった。この約束を果たすまでは絶対に死ぬことは出来ないと胸に刻んだのだ。
(必ずあなたに外の世界をお見せしてみせます……)
 しかし、大宦官たちは天子をこの朱禁城から出すことを許さなかった。彼女が外の世界に興味を持たない内向的な少女であり続ける方が大宦官たちにとって都合が良いのだ。
 国民たちはその事実を知らされることなく、大宦官の思惑に気が付くこともなかった。すべては密室の中で決定され、その過程が公開されることはない。
(天子様……あなたは憶えておいでですか?)

――遠い昔の約束を――…。

* * *

 此処は星刻に与えられた私室だった。いち武官だった頃では考えられないくらいの部屋を与えられたのは天子様が自分のことを認めてくださったからだ。自分自身のことよりも他人を優先させたのは自分の道義に従ったからであり、それを誰かに認めてほしくて行った行為ではなかった。
 けれども、天子様はその行動を高く評価してくださり、彼女に命を助けられてからというものの、彼女の為に全てを捧げてきた。
 彼女が今から行おうとしていることを望んでいるかはわからない。けれどもこのままでは彼女は大宦官たちに利用されてしまうだろう。こちらから動かなければ勝機はない。
 この行動がのちに多くの者達から非難されることになったとしても、天子様の為に出来る限りのことをしたかった。
(中華連邦国民よりもあなたのことを優先することを……どうかお許しください……)
「はじめまして。あなたが黎星刻ですね」
 星刻がモニターへと目を向けると、ブリタニアの皇子の姿がそこにはあった。
 濡れ羽色の黒髪に、深いアメジストのような紫色の瞳、陶器のように艶のある白い肌。それらが全て完璧に整ったその容貌に目を取られてしまう。完璧なるその美しさは噂通りかそれ以上のもので、星刻は息を呑んだ。
「その通り、私が黎星刻です」
 そして静かに彼の問いへと答える。すると、彼は僅かにその紫紺の目を細めた。
「ご存知かもしれませんが、私は神聖ブリタニア帝国第十一皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。以後お見知りおきを」
「お噂はかねがねこの中華連邦まで伝わっております」
 どんな噂かといえば、彼の美しさ賞賛するものから彼の軍事的手腕の恐ろしさを強調するものまで様々だった。この数ヶ月で突如表に立つようになり、第二皇子で宰相でもあるシュナイゼルのお気に入りという話だ。
 こうして彼の姿をモニター越しとはいえまじまじと見ると、その美しさを讃える者の気持ちも理解出来た。しかし、その美しさの中には氷のような冷たさを感じるような気がする。それは彼が余りに完璧な造詣をしているからだろうか。
「しかし、ブリタニアの皇子殿下が私に一体どのようなご用件でしょうか。我が中華連邦と貴国が現在敵対関係にあるのは周知の事実です」
 怯むことなく真っ直ぐに事実を確認する。どうして敵国の皇子が自分たちに連絡を取ってきたのか、と。
「ええ、確かにブリタニアと中華連邦は敵対関係にあります。それはわかっておりますが、これは私の個人的な通信です。皇子としてではなく、ただのルルーシュとしてあなたにお話があるのです」
「ブリタニアという国は関係ないと?」
 星刻は目を細める。ルルーシュは薄く浮かべた笑みを崩すことなく、星刻のことを真っ直ぐに見詰めたままだ。その堂々とした態度は彼の産まれながらの身分所以か。それとも単に自分自身に自信がある所為だろうか。その両方かもしれない。
「全く関係ないとは私の出自を考えると断言は出来ませんが、少なくとも私の父である皇帝や兄である宰相とは関係ありません。これは私の一存による通信です」
 勿論彼の言葉を簡単に鵜呑みにするつもりはない。話を聴いた上で判断するつもりだし、相手もそれを充分承知しているようだった。
「……わかりました。聴きましょう」
 とにかく話を聞いてみないことにはこれ以上判断しようがなかった。星刻は頷き、ルルーシュに話をするように促した。彼の話の内容によってはこの中華連邦とブリタニアとの関係は変わってくるかもしれない。しかし、全てを決定するのは最高権威である天子の役目だ。確かに今は大宦官が政治の中核を担っているが、それをいつまでも見過ごすことは出来ない。いずれ全ての権限を天子に移行させ、名実ともに君主としてこの国を治めるのが彼女に課せられた運命なのだから。そしてその為に自分が出来る限りのことをするのが自分に課せられた責務だった。
「中華連邦は現在、幼い天子ではなく、大宦官たちがその実権を握っていると聞きました。故に天子はお飾りの君主に過ぎないということも」
 この中華連邦の内情すら他国に知れ渡っているらしい。こちらもこちらでブリタニア国内の情勢に関して調べさせていることもあるので、それはお互い様なのだろうが、それでも内情を知られているとしたら少し厄介かもしれない。
「……確かに天子様はまだ十五に満たない少女です。大宦官たちが摂政として実権を握るのは致し方ないことかと」
「ほう……では裏で彼らがEUの軍門に下ろうとしていることも致し方ないと?」
「……それは何処で……?」
 ルルーシュの口から出た言葉を一瞬理解出来なかった。この大国中華連邦がEUに下るなどありえる訳がないのだから。
 それでも彼の目的は自分を困惑させることではないようだった。確証があってその事実を告げているのだろう。
「我が情報筋は世界中至る所に。そのうち一つはユーロブリタニアからユーロピアに潜入している工作員(エージェント)も含まれます」
「しかしそれが本当のことだとしても何故あなたが私に?」
 普通ならばそのことをわざわざ敵国の武官に話すことなどしないだろう。彼は一体何を企んでいる? その思惑を掴むことが出来ず、星刻は眉を顰める。一体どんな狙いがあってそのことを話す? 嘘の情報を流して、中華連邦を更なる混乱に陥れるつもりなのだろうか。
 モニター越しにルルーシュの姿をじっと見詰めながら星刻は考える。今いる部屋は星刻の私室で、邪魔は入らない。だからこそ、此処に通信を繋いだのだが。
「私にはあなたの考えがわかる。何故ならば私もあなたと同じだからです」
 ルルーシュは静かに告げた。
 彼と自分とに共通点があるだろうか。自分は天子様に贔屓されているとはいえ、いち武官に過ぎない。対して彼は皇帝の直系――皇子なのだ。全く違う立場の二人に共通点があるとは思えなかった。
「同じ?」
 思わず訊き返してしまう。この話は慎重に進めなければならないことは充分理解していた。けれども、彼が話そうとしていることが気になってしまうのは、彼の話の進め方が卓越しているからなのかもしれない。
 全く違った立場でありながら、自分達が同じだと断言してみせた彼の言葉に首を傾げざるを得なかった。
「あなたは大宦官に対するクーデターを目論んでいますね?」
「っ……!」
 星刻は驚きに目を瞠った。
 何故そのことを知っている? 思わずそう口に出しそうになったが、何とか心を落ち着け、押し黙る。相手は敵国の皇子で、弱みを握られる訳にはいかないのだから。
「……私も同じようなことをブリタニア皇帝に対して計画しているから、あなたの考えがわかります」
 しかし、彼は思ってもみないような言葉を発した。皇子でありながら、父親である皇帝に叛旗を翻すつもりだという。だが、よくよく考えてみればブリタニアとは血で血を洗う――まさに競う血筋をしているのだ。それは過去の史実からも明らかであり、その血統は今も途絶えることなく続いているようだ。
「あなたがブリタニア皇帝に叛逆を?」
 星刻は僅かに眉を寄せた。しかし、ルルーシュは相変わらず、感情を表に見せないような涼しい顔をしていた。彼はもう決めているのだ。まだ計画を実行するか迷っている自分とは違う。勝者の目をしていた。
「ええ、実行はひと月後の十二月五日。私の誕生日を祝う誕生日会の会場で」
「そこで、皇帝を……殺す……?」
 日時も場所も躊躇することなくはっきりと明言したのは、自分が知ったところで計画には差し障りの無いことだと踏んでいるからなのだろうか。完全に彼のペースに巻き込まれてしまっているのを感じながら話は進んでいく。
「その通り」
 美しいその顔を崩すことなくはっきりと断言した彼に星刻は更に息を呑む。
「……皇位を奪うのですか?」
 彼は父親を殺してまで皇帝になりたいのだろうか。他の兄弟を出し抜いて皇帝を殺したら皇帝になれるとでも思っているのだろうか。彼の他にも第二皇子シュナイゼルなど優秀な皇子は他にもいるし、現時点の最有力候補はシュナイゼルだと中華連邦の人間も考えている。
「皇位などいりません。しかし、皇帝が死した後の中華連邦との関係は考えたい」
 しかし、ルルーシュの答えは違った。それならば何故彼は皇帝を殺そうというのだろう。意味がわからなかった。
 自らは皇帝にならぬとも、その後の関係には介入するつもりがあるようだ。しかし、この話は中華連邦にとって悪くはないものだろう。日本と手を取りブリタニアと真っ向勝負を挑むよりも建設的で犠牲が少ない。
「こちらとの敵対をやめると?」
「いいえ、戦争をするのです」
 ルルーシュの言葉に星刻は目を見開いた。どうしてそういう話の流れになったのかさっぱり理解出来なかった。思わず言葉に詰まってしまう。わざわざ宣戦布告をしに連絡を寄越したというのだろうか。
「戦争を……する? 一体どういうことですか……?」
「それは……」
 ルルーシュの言葉に星刻は息を呑んだ。

* *  *

 外を吹く風は近頃ますます冷たさを増していた。様々なものからこの国の中枢を護る為、高い塀がこの朱禁城の周囲を囲っていたが、それでも凍えるような寒さの風は吹き込んでくる。
 朱く色付いた柱が天井を支えるだけの壁のないこの塔は朱禁城を見渡すことが出来る天子の一番のお気に入りの場所だった。時折、此処を訪れてはその向こう側にある世界を二人で想像したものだった。
 朱禁城の敷地は広大なものだったが、此処からは遠くに外の世界を見ることができた。ぼんやりとした霞の向こう側に市街地がうっすらと浮かび上がる。それは幻想的で、実際の外の世界とは比べ物にならないくらいの美しさだった。
 天子はまだ幼い少女だったが、その地位の所為でこの城から一歩も出たことがなかった。彼女の云う外の世界とは中華連邦以外の国という訳ではなく、ただ単にこの城以外の場所のことなのだ。門をくぐって外に出るだけでその願いは達成されるのに、それが許されないのが現状だった。
 彼女の両親は数年前に亡くなっており、その時からこの幼い少女がこの国を束ねる君主となっていた。隣国日本とは違い、この中華連邦は多数の民族の集まる国家だ。だからこそその多民族を束ねる国家元首が必要で、その者の元で国は今まで発展してきた。
「天子様……あなたは憶えていらっしゃいますか? 遠い日の約束を」
 朱禁城の庭に天子を連れ出した星刻は星の輝く夜空を見上げながら静かに訊ねた。
 彼女は憶えていてくれているだろうか。それとも忘れてしまっているだろうか。もうあの契を交わした日から年月が経ってしまっているし、他愛のない口約束だった。忘れてしまっていても無理は無いだろう。けれども、確かめずにはいられなかった。
「……星刻……?」
 天子は顔を上げ、そして振り返った星刻のことを見詰めた。紅く色付いた瞳には驚きが浮かんでおり、目をパチパチと瞬かせた。
「……私は……あなたに外の世界を見たいと……! 憶えていてくれたのね、星刻!」
 彼女は憶えていてくれた。あの約束を。
「その願いを叶えてもよろしいですか? あなたにお見せしたい……外の世界を」
 天子は大きく頷いた。その表情は笑顔に満ちており、星刻もつられて微笑んだ。幸せな時間だった。だからこそ、彼女には重い決断を迫ってしまうことになるけれど、それでも……。
「ありがとう……星刻」
「……お話を聴いてくださいますか? とても重要なことなのです」
 星刻は身を屈ませて天子と視線を合わせた。
「外の世界に行くことと関係があるのね……」
「……ええ」
 星刻は静かに語りだした。

* * *

 星刻は薄暗い自身の私室へと足を踏み入れると、モニターの前にあるソファーへと腰掛け、リモコンを操作した。もともとは一兵士に過ぎなかった自身がこうして朱禁城に私室を持てるようになったのは数年前、天子様によって命を助けられたことが切っ掛けだった。
 それからというものの、天子様は自分の生きるための道標で、彼女の為に尽くすことが、自分の生きる理由だった。
 そんな恩人でもある彼女が大宦官によってEUに売り渡されようとしているという事実が星刻には許せなかった。もともと宦官とは中華連邦の皇帝に仕える側近で、天子がもっとも信頼を寄せる有識者達であるべき筈なのに、今では逆に彼らが天子をコントロールしようとしている。それが許せる筈などない。天子にとっても、国民達にとっても裏切りといって良い行動だろう。
「良いお返事が期待で出来そうですね」
 モニターと映し出されたのは約束された時間きっかりに通信を繋げたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの姿だった。ルルーシュとモニター越しに再び対面すると、彼はうっすらと笑みを浮かべていた。そう、自分が何故通信を繋げたのか既に彼は理由を把握していたのだ。
「ルルーシュ殿下、あなたのご提案を天子様にお伝えしました。中華連邦とブリタニアの未来の為に是非、協力を要請したいとのお返事です」
 星刻は静かに口を開く。ルルーシュの方は前回顔を合わせた時と変わらず、薄く口元に笑みを浮かべていた。
「承知いたしました。ご意向に添えるように全力を尽くしましょう」
 僅かに頷きながら彼はそう誓う。しかしながら、具体的なことについてはまだ何も聞いていないのだから、油断は出来なかった。
 これは自分の独断だ。自分の独断で天子様に彼の話をして、そしてブリタニア人と手を組んだ。これは後に裏切りと国民たちに云われるかもしれない。しかし、それでも大宦官達の暴走は止めたかった。国民よりも天子様を優先していると云われることになるかもしれないが、それでも――…。
「しかし、一体どんな手段を用いるつもりですか? 大宦官は既に中華連邦の中枢として、国を動かしている。国民からの信頼もあります」
「信頼など、簡単に壊すことは出来ます。元々裏切ろうとしている人間達です。その事実が明らかになるだけで、信頼など簡単に崩れましょう」
「……確かに」
「それが鍵といえましょう。喩えば、です。仮面を被り顔を隠したテロリストが大義を掲げて中華連邦が大宦官によってEUに売り払われようとしているところを阻止しに来る。それを大宦官の命令であなたが迎え撃つ。しかし、天子様はテロリストに人質に取られてしまい、あなたは取り戻そうとする。だが恐らく大宦官は天子様を切り捨てるでしょう。その状況を国民に知らせれば……」
「更にその中で自白をするような状況に陥れ、その状況を国民に知らしめるのです。密かに中継を各地へ流せば大きな力になるでしょう」
「天子様が真の主導者であると知らせると同時に大宦官を追放出来る……」
「その通り。そしてテロリストは最早テロリストとはいえなくなる」
「そして彼らが中華連邦と共に日本をブリタニアから解放する」
「確かに利害は一致していますね」
 彼はそこで一度言葉を切った。それからこちらのことを確認するように目線をしっかりと向け、腕を組む。紫色の瞳を僅かに細め、そうして再び言葉を紡ぐ。
「大宦官にインドからの武器提供があったと聴いております。ブリタニアのKMF(ナイトメアフレーム)を模ったもので、かなりの完成度だとか」
 それは初耳だった。インド郡区は確かにこの中華連邦の支配下にはあるが、かなり制限は弱く、彼らの動きを把握し切れてはいないのが現状だ。優秀な科学者を多数抱えているインドは中華連邦だけではなく、日本にも多くの武器を秘密裏に輸出し、独自の成長を遂げている。
「奴らがそれを何に使うか……」
 大宦官たちがKMFと呼ばれる巨大な武器を手に入れ、何をするつもりだというのだろう。彼らがEUに下るつもりであるとルルーシュは云ったが、その為にKMFが必要だというのだろうか。
「大宦官は恐らく保険を掛けているのでしょう。EUとの取引が上手くいかなかった場合に備えて」
 そうしてルルーシュとある程度の打ち合わせをし、計画を練った。それが吉と出るか、凶と出るか。それだけはまだはっきりとしない。
(全ては天子様の為に……)
 星刻は護るべき大切な存在を脳裏に浮かべながら、静かに目を閉じた。

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